食べれば納得! 三重県の養殖グルメ、カキ、伊勢まだい、マハタは絶品

2020.11.20

グルメからエンタメまで 佐野 興平

(写真提供:株式会社オイスターファームラフト)

三重県で養殖されているもので有名なのは真珠ですよね。でも、魚介類の養殖もさかんに行われていることを知っていますか? およそ1,000km続く海岸線を生かして、特に三重県南部では、多彩な魚介類が養殖されています。その中でも、今、食べてほしい注目の魚と貝をピックアップ。それぞれの養殖事情に加えて、美味しく食べられるお店もご紹介します! ※記事中の価格は税込み

<Index>
【カキ】新しい養殖方法で1年中おいしい生ガキが食べられる
【伊勢まだい】三重県産のお茶や海藻、みかんを食べて育ったタイ! その味は?
【マハタ】脂のノリが抜群の幻の高級魚は三重県で!

【カキ】新しい養殖方法で1年中おいしい生ガキが食べられる

三重県を代表する冬の味覚といえばカキ。夏に旬を迎える岩ガキなどもありますが、やはりカキといえば冬ですよね。そんなカキを、一年中、生でおいしく食べられるという新しい養殖方法に取り組んでいる会社があるんです。

それが株式会社オイスターファームラフト。2016年、一年を通して生で味わえるマガキの養殖をスタート。「伊勢志摩プレミアムオイスター」のブランド名で、昨年は国内外に12万個を出荷しています。詳しいお話を、同社の濱地大規(はまじ たいき)さんにお伺いしました。

同社では、「三倍体(さんばいたい)かき」を生産しています。「三倍体かき」は成熟しにくいため、身がやせにくく、一般的には旬でないとされている夏の時期も、おいしいカキに育ちます。驚くのはその育て方。カキの養殖といえば、海につるしたロープのようなものの周りにカキがびっしりとついている、というイメージでしたが、こちらの方式はまったく異なり、養殖のためにカキを収容する専用ボックスを使います。

(写真提供:株式会社オイスターファームラフト)

中にはカキが1つずつバラバラに入れられています。こうすることで、たくさんの餌を効率よく食べることができて、濃厚な味に育つそう。また、干潮時には水面が下がり、ボックスが太陽光に当たることでカキの殻の表面が殺菌されます。満潮時には、海水につかったボックスが波で揺らされ、厳しい環境下でカキが殻(から)を強く閉めようとして、殻が深いカップ状に成長。身も貝柱も大きくなることができます。オーストラリアで行われている「潮干満帯養殖(ちょうかんまんたいようしょく)」という方法を取り入れたそうです。

(写真提供:株式会社オイスターファームラフト)

養殖を始めた当初は、日本で先例が無かったこともあり、試行錯誤(しこうさくご)の連続だったそう。そのかいあって、2020年からは養殖の一部を地元漁業者に委託するなど、地域活性化も含めた取り組みがスタートしています。

(写真提供:株式会社オイスターファームラフト)

「2020年度は25万個の出荷を目標にしています」と濱地さん。現在は関東を中心に出荷されていますが、今後は関西地方などにも販路を広げていく予定とのこと。

(写真提供:株式会社オイスターファームラフト)

こちらが「伊勢志摩プレミアムオイスター」。よく見るカキと違って、少し小ぶりで殻の形が深いのがわかりますよね。濱地さん曰く「身をしっかり入れるために、殻の形にもこだわっています」とのこと。見た目が美しく、シャキシャキした貝柱と強い甘味の「伊勢志摩プレミアムオイスター」。さっそく食べてみましょう!

おかげ横丁で「伊勢志摩プレミアムオイスター」に舌鼓

「伊勢志摩プレミアムオイスター」が食べられるお店がこちら。志摩市の的矢(まとや)で料理宿を営み、60年以上の歴史を持つ「いかだ荘山上」が、2020年に、伊勢神宮の内宮前にある、おかげ横丁にオープンさせた「横丁(よこちょう)いかだ荘」です。

店内はカウンター席のほか、座敷席の個室も完備。「伊勢志摩プレミアムオイスター」はもちろん、冬は「的矢かき」、夏は岩ガキと、天然ものや養殖など、いつでもさまざまなカキが食べられます。カキの食べくらべセットや手こね寿司、握り寿司、丼なども用意されていますよ。

板前の下村三芳(しもむら みつよし)さんに聞いたところ、「伊勢志摩プレミアムオイスター」は小ぶりの殻にたっぷりと身が詰まっているのが特徴とのこと。「蒸してもおいしいけど、やっぱり生食がオススメですね」と話してくれました。

「伊勢志摩プレミアムオイスター」1個385円。そのままで食べて、自然の甘み、濃厚なカキの旨みを味わうもよし。ポン酢やショウガと一緒に食べるもよし。身の歯応え、ギュッとつまったうまみに、一口食べて思わず顔がほころんでしまいました。

近くに提供しているお店が無くても大丈夫。株式会社オイスターファームラフトでは、ネット通販も行っているので、自宅でこのおいしさを堪能(たんのう)することができます。1年中、生で楽しめる「伊勢志摩プレミアムオイスター」。今後ますます生産量が増え、全国で目にすることも増えそうです。

【伊勢まだい】三重県産のお茶や海藻、みかんを食べて育ったタイ! その味は?

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

三重県ならではのエサで養殖を行っている魚として注目されている「伊勢まだい」。普通のタイとどう違うの? という人も多いはず。そこで三重県海水養魚協議会 会長の橋本純(はしもと じゅん)さんからお話をお聞きしました。

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

海水養魚協議会の会長を5年務められているという橋本さん。ご自身も養殖事業に携わっています。2011年、東日本大震災の影響を受けて、三重県の漁業にも大きな被害が出ました。特にマダイの養殖がダメージを受けたことから、復興のために、三重県漁業協同組合連合会と地域の生産者グループ、三重県、三重大学でプロジェクトを設立。養殖マダイのイメージを覆(くつがえ)す、品質の高いブランド魚「伊勢まだい」の養殖を翌2012年から始めました。

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

「伊勢まだい」の特徴はなんといってもそのエサ。魚の脂の質はエサによって変わります。「『伊勢まだい』には、伊勢茶と海藻、そして三重でとれたかんきつ類を与えているので、クセのある匂いやくどさが無く、さっぱりとした味になります」と橋本さん。

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

養殖がスタートした当初はまだ生産量が少なく、要望があっても出荷することができなかったそう。現在は14業者が年間50万匹の出荷を目標に生産しています。

橋本さんは「味に高い評価をいただき、伊勢志摩サミットの料理の食材として、また伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)のお供え物としても採用されました。それを機に、『伊勢まだい』のブランド名が全国に広く知られるようになったことが嬉しかったですね」と話してくれました。

炙(あぶ)りと生、両方が楽しめる贅沢丼(ぜいたくどん)を提供

伊勢市にある「黒潮ダイニング 花」は、アワビや伊勢えびなどを使った海鮮料理がメインの創作和食店。こちらで「伊勢まだい」がいただけます。

店内は掘りごたつ式のテーブル席が用意されていて、落ち着いて食事ができる雰囲気。平日でも家族連れなどで行列ができる人気ぶりで、全メニュー数量限定、売り切れ次第、営業終了だそうです。

「『伊勢まだい』は出荷が始まった2013年ごろから使っています」と店主の松村好晃(まつむら よしてる)さん。臭みがなく、新鮮さが長く保てるのが特徴なのだそう。オススメの食べ方はやはり刺し身とのことですが、塩焼きにしてもおいしいし、秋にはマツタケと一緒に土瓶(どびん)蒸しでも提供していると教えていただきました。

「胡麻(ごま)香る伊勢まだい丼」1,350円。味噌汁や漬物、小鉢がセットに。1年中提供されているので、いつでも食べられるのがうれしいところですね(売り切れの場合あり)。丼にたっぷりのった「伊勢まだい」の身は、胡麻ベースの特製ダレで和えられていて食べごたえも抜群。さらに……。

鯛の身は、皮付きで炙られたものと、生のままと2種類が使われています。それぞれ食感、味ともに違うので、どちらが好みか、ぜひ一度食べ比べてみてください。また、醤油でいただいても、違った味わいが楽しめますよ。

【マハタ】脂のノリが抜群の幻の高級魚は三重県で!

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

一般の鮮魚店ではめったにお目にかかれないことから“幻の高級魚”とも呼ばれるマハタ。天然物の漁獲量は少なく、流通しているものはほとんどが養殖魚です。全国の生産量の約8割は三重県で養殖されていて、さらにその約7~8割は尾鷲市で養殖されています。
マハタについても、橋本さんに取材しました。マハタの養殖は1985年ころから行われていたそうですが、「試行錯誤の時間が長かった」とのこと。ようやく形になり、出荷できる段階になってきたのはここ数年のことなんだそう。

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

まだ養殖方法が完全に確立されたというわけではないので、現在でも、三重県以外では愛媛県などわずかな場所でしかマハタの養殖は行われていません。さらに「今年は水温が高かったこともあり、かなり厳しい環境でした」と橋本さん。

(写真提供:三重県漁業協同組合連合会)

上品な味でプリプリした白身が特徴のマハタ。食べ方としては鍋が定番だそう。「アラを使って水炊きがオススメです。身と皮の間の脂がおいしいですよ」と橋本さんが教えてくれました。

尾鷲の養殖マハタ取り扱い1号店

三重県の約7~8割のマハタを生産している尾鷲市。尾鷲市生まれ、尾鷲市育ちのマハタを「おわせマハタ」として、ブランド化を推進しています。同市にある「魚処 豆狸(うおどころ まめだ)」は、創業50年という老舗の割烹料理店。地元の魚介類を中心に、季節感を大切にしたメニューを豊富に提供しています。

店内はカウンター席のほか、個室の座敷席も用意されていて、新鮮な魚介類をゆっくりと楽しむことができます。

こちらは、おわせマハタ取扱登録の1号店の登録証。現在では扱っているお店も数多くありますが、ここ「豆狸」さんが、一番はじめに提供したんですね。

二代目ご主人の中野健司(なかの けんじ)さんにお聞きしたところ、白身魚であるマハタは熟成させた方が、うまみや甘味がより出てくるそう。ペーパーに身を包み交換するという作業を2~3日繰り返し、不要な水分を出すことで熟成させていくんだとか。「豆狸」さんでは、そうして熟成させたマハタを、刺身やしゃぶしゃぶ、鍋などでいただくことができます。

マハタの刺し身1人前1,500円(税別、写真は2人前)。お好みで、オリジナルの土佐醤油(とさしょうゆ)かポン酢でいただきます。鱗(うろこ)が細かいため、皮と鱗の間に包丁を入れる、すき引きという技術を使い、調理されています。脂ののった身はもちろんおいしいですが、いっしょに盛られた皮も独特の食感でクセになりそう。

マハタは、刺し身のほか、しゃぶしゃぶのセットなどでも提供。どのメニューも2~3日前に予約するのがベターです。「冬のシーズンには在庫もありますが、予約してもらえた方が確実です」と中野さん。尾鷲市ではスーパーなどでもマハタの鍋セットが販売されることもあるそう。地元も含め、徐々に認知度が高まっているようです。

海に恵まれた地形を生かして、長く養殖業を発展させてきた三重県。これまでとは違う方法で新たなカキの養殖にチャレンジしていること、三重県産の伊勢茶などをブレンドしたエサを使って新しい名物となる「伊勢まだい」が作られていること、そして全国的なシェアを誇るマハタなど、三重県の養殖について知ることができました。今回はカキ、「伊勢まだい」、そしてマハタについて、実際に味わえるお店も紹介しましが、三重県内で養殖されている魚介類はまだまだたくさんあります。ぜひ三重県に来て、実際に味わってみてください!

(掲載情報は、すべて2020年10月時点のものです)

<今回の取材先はこちら>
株式会社オイスターファームラフト

住所:志摩市磯部町的矢778
電話:0599-57-2485
URL:https://oysterfarm-raft.co.jp/

横丁いかだ荘
住所:伊勢市宇治中之切町47
電話:0596-23-8829
URL:https://www.okageyokocho.co.jp/tenpo/ikadasou/

三重県海水養魚協議会
住所:津市広明町323-1
電話:059-228-1205
URL:http://osakana-mie.com/

黒潮ダイニング 花
住所:伊勢市御薗町長屋3097
電話:0596-20-9087
URL:http://www.ise-hana.com/

魚処 豆狸
住所:尾鷲市栄町5-37
電話:0597-22-1166
URL:http://www.uodokoro-mameda.com/

<取材協力>
三重県漁業協同組合連合会
住所:津市広明町323-1
電話:059-228-1200(代表)
URL:http://www.miegyoren.or.jp/