本格派パティスリーが続々オープン!個性が光るスペシャリテの秘密とは!?第2回

2020.12.12

スイーツコーディネーター 松本由紀子

10年ほど前は、本格的なパティスリー(フランス菓子屋)が少ないと嘆きの声が聞かれたという三重県。ですが、ここ数年、関東や関西で修業を重ねたパティシエが地元の三重県で自分の店をオープンさせるUターン開業などもあり、三重県のパティスリー業界が盛り上がりをみせています。修業先で得た知識や技術と、三重県の魅力をいかにマリアージュさせるか!? 三重県のパティスリー業界を牽引(けんいん)する4名のパティシエに、それぞれの個性あふれるお菓子のヒミツや今後の展望を伺いました。4回にわたってご紹介しています。今回は第2回目。(※記事中の価格は税別)

第1回
大阪の名店「なかたに亭」などで研鑽(けんさん)を積んだ実力派「パティスリー アンスピラシオン」
第3回
女性ショコラティエのパイオニア!ショコラ専門店「フェーヴドカカオ」
第4回
カリスマパティシエ辻口博啓(つじぐち ひろのぶ)さんが展開!アクアイグニス内「コンフィチュール アッシュ」

「神戸北野ホテル」やフランスで修業を重ねた新進気鋭(しんしんきえい)「パティスリー アノ」

「パティスリー アノ」は2015年4月、桑名市赤尾台でオープンしました。当初は13坪の店舗でスタート。3年後、もっと広いスペースをと、2018年6月に現在の友村に移りました。友村の店舗は34坪もあり、イートインやテラス席の他に駐車場スペースも広く設けられています。

オーナーシェフの布澤誠(ぬのざわ まこと)さんは、1984年、愛知県に生まれました。高校卒業後、地元愛知県や岐阜県、静岡県などのパティスリーで修業。2011年「神戸北野ホテル」に入社。「プライムリゾート賢島(かしこじま)」(現在の「都リゾート 志摩 ベイサイドテラス」)にてシェフパティシエに就任。
2014年に渡仏し、「パリセヴェイユ」(東京・自由が丘)の金子美明(かねこ よしあき)シェフがフランス・ヴェルサイユでオープンした「Au Chant du Coq(オー シャン デュ コック)」、製菓学校「Bellouet Conseil(ベルエ・ コンセイユ)」(パリ)、パティスリーブーランジェリー「Des Gâteaux et du Pain(デ ガトー エ デュ パン)」(パリ)などで修業を重ねて帰国。2015年に開業。

桑名市で開業した理由は?
布澤さん「地元愛知県で開業したいと、2カ月間にわたり物件を色々と見て回ったのですが、なかなか理想の物件に出会えず、昔訪れことがある桑名市の雰囲気がよかったことを思い出し、足を延ばして探してみることに。そこで理想の物件にめぐりあえたので、開業しました」

店名やロゴの由来は?
布澤さん「店名はフランス語で『輪』という意味。人と人との輪、繋がりをイメージし、ロゴもミルククラウンで輪を表現しています。自分のお菓子をきっかけにして、自然と輪が広がり、お客様が口コミで広めていってくれるようなお店に育てたいという想いも込めています」

お店のテーマカラーは、ブルーグレー。外壁やショップカード、ギフトBOXなどに使われています。

スペシャリテは焼きたての香りが自慢のフィナンシェ
「焼きたては、香りが格段に違うので自信があります!」と布澤さんが胸をはる「焼き立てフィナンシェ」(200円)。フランスで学んだテクニックが生かされた一品です。「ブールノワゼット(焦がしバター)の作り方がまったく違いました。これまでは焦げる手前で止めていましたが、焦げすぎでは!?と思うほどガッツリ焦がし、濾(こ)しもしないんです」
だからこそ、バターのふくよかな香味がしっかりと残り、噛んだ瞬間にじゅわ~っと溢れでる口福感(こうふくかん)がたまらないフィナンシェに仕上がるのだそう。

焼き菓子には発酵バターを使用し、アーモンドは皮付きの粗挽(あらび)きを。フィナンシェはしっとり感をだすために深さのある金型で焼きたいと、自分の理想の型を探し求め、現在はこちらの型を使用しています。フィナンシェは個包装での販売もありますが、ぜひイートインで、焼きたてのおいしさを堪能(たんのう)してください!

もう一つのスペシャリテは「パリブレスト」(430円)。
日本ではリングシューと呼ばれることもあります。フランス菓子では、リング型のシューが定番。フランスのパリ市とブレスト市を結ぶ自転車レースを記念して、自転車の車輪を模して作ったのが始まりだとか。
シュー生地の中は、クレーム・パティシエール、自家製プラリネクリーム、アーモンドのヌガーと自家製プラリネペーストの4層構造になっていて、エクレアのような細長くスタイリッシュなビジュアルに。食べやすさを重視し、このスタイルになったそうです。
主役とも言えるプラリネ(ローストしたアーモンドに、砂糖を焦がしたキャラメルを加えてペースト状にしたもの)は自家製。
「自家製にすることで、挽きたてのアーモンドの芳醇な香りと食感を残せます。生地は、シュークリームよりもパリっとしっかり焼き切ることで香ばしさをだし、アーモンドダイスをまぶし、力強い食感に仕上げました」
ナッツ好きにはぜひ食べてもらいたい、濃厚でナッティなアロマがたまらない一品です。

人気商品は四日市市の卵を使っている「こだわり卵のきららプリン」
老若男女問わず人気の「こだわり卵のきららプリン」(240円)。お隣四日市市の「きららのさと有限会社」の卵が使用されている地産地消商品でもあります。鈴鹿山脈のふもとにある桜農場(さくらのうじょう)でとれた新鮮な卵で、一般的な卵よりもコレステロールや脂肪分が少ないことが特徴です。
「昔からレシピは変えていませんが、『きららのさと』の卵に変えただけで味が全く変わったんです。食感は、とろとろとしっかりの中間。濃厚でコク深い味わいが人気の自慢のプリンです」

キュートなクマのクッキーやサブレなどの焼き菓子はお取り寄せ可能
焼き菓子はお取り寄せが可能です。BOXは大中小の3種類。個包装の上に商品名シールが貼ってあるのが珍しく、見た目もとってもキュート。レモンのマドレーヌやフルーツケーキなどのケーク類(パウンドケーキ型で焼くバターケーキ)から、「ぜいたくバニラサブレ」や「メイプルくまたん」などのクッキー類までバリエーション豊かで、「焼き菓子詰め合わせ」(1950円~)として、店のテーマカラーを使ったオシャレなBOXに詰め合わせることができます。ぜひこちらの焼き菓子で布澤さんの味を楽しんでみてください!

平日のうち一日はパンの日
「いまはヴィエノワズリー(お菓子屋に並ぶ菓子系のパン)をお休みしているんですが、ぜひ復活させたいんです! クロワッサンやクイニーアマン、パンオショコラ、サンドイッチなど、平日のうち一日“パンの日”を設けようかとも考えているんです。そうすればもっと種類も増やせるし、こだわって作ることもできるので。せっかくフランスで金子シェフから直接教えていただいたヴィエノワズリーの味を、もっと多くの方に知っていただきたいです!」と布澤さん。
また、品質にはとことんこだわり、他店とは差別化しているので、「ナンバー1よりも、オンリー1になりたい!」と熱い想いも語ってくれました。
ショーケースを見た瞬間に、きれいという言葉と同時に、おいしそうという想いが込み上げてきたので、きっと布澤さんの想いは、お客様に届いているはず。神戸やフランスで学んだ技術と味を、これからも三重県で存分に発揮してほしいですね。

(掲載情報はすべて2020年10月時点のものです)

<今回紹介した施設はコチラ>
パティスリー アノ (Patisserie anneau)
住所:桑名市友村394
(三岐鉄道北勢線 星川駅から徒歩25分)
電話:0594-73-0380
営業時間:11:00~18:00(売り切れ次第終了)
定休日:月曜日・火曜日・第3水曜日(他不定休日あり)
2021年4月から定休日が日曜日・月曜日・第3火曜日となります。(他不定休あり)
URL:https://www.instagram.com/patisserie_anneau/
URL:https://www.facebook.com/P%C3%A2tisserie-anneau-392711537562526/

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