三重県発祥のイチゴ「かおりの」が全国を席巻中! ニュータイプの「よつぼし」も要チェック!

2017.3.10

「つづきは三重で」市民記者

【取材】kanzaki chiharu

三重県で開発されたイチゴ「かおりの」が日本各地で広く栽培されていることをご存じでしょうか?

海産物のイメージが強い三重県ですが、お米、野菜、果実、お茶など実は農産物の宝庫でもあるんです。

そんな農産物の発展を支える縁の下の力持ちが、松阪市にある「三重県農業研究所」。

三重県農業研究所

三重県農業研究所は、県内における農業技術の中枢機関として、農業の低コスト化技術、バイオテクノロジー等先端技術、消費者ニーズに即した農産物の高品質化や安全な食料生産技術、環境への負荷の少ない農業生産技術など、時代の要請に応じた試験研究を行う施設です。
また、開発された新技術等の積極的な実用普及に努めるとともに、技術指導者や海外研修生等との交流も行っています。

 

三重の農作物はここで研究者さんたちによって日々グレードアップされているんですね。

同研究所、野菜園芸研究課の皆さんにお話を伺いました。

研究員の丹羽千紘さん。「ここへ来てイチゴが好きになりました」と笑う配属2年目。
▲研究員の丹羽千紘さん。「ここへ来てイチゴが好きになりました」と笑う配属2年目。
主幹研究員の戸谷孝さん。丹羽さんとともに「かおりの」の後継品種の開発に奔走中。
▲主幹研究員の戸谷孝さん。丹羽さんとともに「かおりの」の後継品種の開発に奔走中。
総括研究員兼課長・農学博士の森利樹さん。イチゴを見つめる目が優しすぎる。この道30年のイチゴの専門家であり「かおりの」の産みの親。
▲総括研究員兼課長・農学博士の森利樹さん。イチゴを見つめる目が優しすぎる。この道30年のイチゴの専門家であり「かおりの」の産みの親。

ーーー三重県とイチゴ栽培

三重県でのイチゴの栽培は、稲作からの転換対策として1985年頃から始まりました。
イチゴを育てるうえでの最大の敵は「病気」
なかでも「たんそ病」は急速に蔓延し、丹精込めて育てた株が収穫前に次々と枯死してしまうやっかいなもので、この「たんそ病」に強い品種の開発が必要でした。

ビニールハウスそこで、三重県農業研究所が1990年から「たんそ病」に強い品種の開発に取り組みます。
そして18年の歳月をかけて生まれたのが「かおりの」。

現在、三重県では約300軒のイチゴ農家がありますが、そのうち約120軒が「かおりの」の栽培をするほど定着しています(※数字は農協への出荷分。直売や観光農園出荷分は含まず)。

ーーー「かおりの」の特徴は?

★名前の通り上品な「かおり」

★酸味が少なく爽やかな甘さ

★ジューシー

かおりの

研究所のビニールハウスで栽培されている「かおりの」を特別に味見させていただきました。

まず、い~い香り。
そして口に含むとジュワっと果汁と旨味がひろがって、甘い!!!
酸味が少ないので実の先端からヘタの根本までずっと爽やかな甘さが続いて、なんだか幸せ♪

せっかく作っても売れなければ意味がないということで、食味のターゲットを「子ども」に絞って酸味の少ない爽やかな味わいを追及したそう。
栽培のしやすさはもちろん、販売戦略についても生産者と連携しながら市場を広げる努力をしているそうです。

ーーー広く普及したポイントは?

美味しく見た目もキレイな「かおりの」ですが、広く普及したポイントは?

★「たんそ病」をはじめ病気に強い

★11月中旬から5月上旬まで収穫できる

★収量が多くて実が大きい

★申請すれば全国どこでも栽培OK

【かおりの系統図】

img335

美味しくて、病気に強くて、収穫期間が長いうえに、収穫量も多くて実も大きい。
これは生産者さんにとってうれしい特徴ばかり。
こんなすごいイチゴなら栽培制限をして「三重の特産品」にすればいいのでは!?
と、私のような者は思ってしまうのですが・・・。

農業研究所の方々

森さん:たんそ病は全国の多くの生産者さんの悩みのタネ。これをどうにかしたいと思って長年研究してきました。だから三重県に限らず、広く「かおりの」を栽培してもらったほうがイチゴ全体の価値向上につながると思うんです。それに三重県だけでは市場が小さいですから、全国で栽培してもらったほうが「かおりの」の知名度も上がると考えました。

かおりの

そう、つまり「かおりの」は三重県に申請して審査を通れば全国どこでも栽培が可能なのです!!
これにより2010年に品種登録されてから急速に普及が進み、三重県のほか、山口県、千葉県、静岡県などなど、広範囲にわたって栽培地が拡大しているのです。
全国あちこちで見かける「かおりの」が実は三重県発祥だなんて誇らしいことですね。

「娘を嫁に出す気分ですよ。嫁いでいった先でちゃんと育っているか心配ですし、実際視察にも行きます」と森さん。生みの親ならではのイチゴ愛は深いですね。

ーーーニュータイプ「よつぼし」にも注目を!

森さん:実は「かおりの」を親に持つ「よつぼし」がこのほど品種登録されました。こちらは「種子繁殖型」といってタネから育てるニュータイプです。

「よつぼし」の種。
▲「よつぼし」の種。

「かおりの」をはじめ、通常、イチゴは栄養繁殖(クローン増殖)という方法で1株ずつ増やしますが、「よつぼし」は種から育てるので増殖率が抜群で、病害虫リスクが少ないそうです。

よつぼし

よつぼし、かおりの

左が「かおりの」、右が「よつぼし」。

「よつぼし」は赤みが強く、形のきれいな果実が特徴。
高糖度で風味のある濃厚な食味。

右の赤い果が「よつぼし」。左の白っぽい実は「かおりの」。
▲右の赤い果が「よつぼし」。左の白っぽい実は「かおりの」。

そして実食!
まず色も形も見た目が美しい。
そしてしっかりとした食感で、イチゴらしい適度な酸味と甘みのバランスが良いのが印象的。

「かおりの」とはまた違ってそれぞれに個性があって面白い。

ちなみに、こうして新品種としてデビューできるのは10万株に一つくらいの割合だそう。
農業研究所の方々の、日々のたゆまぬ努力があって、私たちが美味しいイチゴを口にできるんですね。

私たちが食べられるのは日々のたゆまぬ努力のおかげ。


ーーー三重県屈指の観光農園でイチゴ狩り!

イチゴの知識をたっぷり蓄えたら、次はやっぱり食べたい! 楽しみたい!

ということで、三重県屈指の規模を誇る観光農園「多度グリーンファーム」さんにお邪魔しました。

こちらでは三重県産の「かおりの」をはじめ、よつぼし、章姫、紅ほっぺ、とちおとめ、女峰、さがほのかなど11品種5万5千株のいちごを栽培しており、現在26棟のハウスでイチゴ狩りが楽しめます。

多度グリーンファーム

入口にはイチゴの妖精「ごーたん」のプロフィール看板が!

園内にはイチゴ以外にも、いも・みかん・落花生・キウイ・トマトなど、季節に合わせた農業体験ができますが、1月~5月はなんといってもイチゴ狩りが人気。
週末など多いときで1日700~800人もの来場者があるそうです。

1月5日(イチゴ)が誕生日のごーたん。多度グリーンファームの営業部長として頑張っているようです。

さっそくハウスの中へ。

多度グリーンファームハウス内

イチゴの栽培棚の高さが2段になっているのが分かりますでしょうか。

これは子どもや高齢者、車いすの方にもイチゴ狩りを楽しんでもらえるように、低い棚と高い棚の2段にしているそう。
また、一つのハウスに対して1品種を育てるのが一般的ですが、多度グリーンファームでは複数の品種を栽培することで、お客さんがいろんなイチゴを食べ比べられるよう配慮しています。

かおりの かおりの よつぼし よつぼし

ちゃんと三重県開発品種の「かおりの」「よつぼし」もありました!

まさにイチゴシーズンの今、もぎたてのイチゴをゲットするも良し、園内のカフェでイチゴスイーツを堪能するも良しの観光農園ですね。

かわいらしい看板。 園内

園内にはバーベキュー場もあるので、収穫体験だけでなくいろんな楽しみ方ができそう!

開園15周年を迎える2018年には15品種のイチゴ栽培を目標として、日々進化中の多度グリーンファーム。県内外から多くの人が訪れるレジャースポットです。

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多度グリーンファーム

住所 三重県桑名市多度町御衣野4132

TEL 0594-48-7447

受付時間 9:00~17:00

◆1月~5月無休 ◆6月~12月第2・第4水曜日定休

HP https://tado15.com/

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あまりに身近過ぎて、三重県と結び付いてなかった「イチゴ」。

実は三重県で美味しいイチゴの研究開発をしていて、そんなイチゴを楽しめる場所もあって・・・。

また一つ三重県の誇れるものを知った今回の取材でした。


関連情報

つづきは松阪市で

つづきは桑名市で

三重県のおすすめイチゴ狩り人気スポット2017(観光三重ホームページ)

イチゴ品種「よつぼし」の海外における事業展開パートナー企業を決定しました。(三重県ホームページ)

■自然豊かな三重県の漁業と農業の現場に潜入取材!働く方の想いや、働きたい方をサポートする取り組みとは
https://www.mie30.pref.mie.lg.jp/work/10201
自然豊かな三重県の漁業と農業