三重の県庁所在地「津市」の発祥?グルメがスゴイ!

2017.6.30

「つづきは三重で」市民記者

【取材】nari_bow

三重県の県庁所在地で、県のほぼ中心に位置するまち「津市」。
東は伊勢湾に面し、西は奈良県との県境までと、とても広い面積を持つ市です。
「日本一短い市名」としても有名です。

さて、ここ津市から誕生したといわれているグルメがあることを皆さんご存知でしょうか?

今回は、津市が誇る名物グルメをご紹介します。

ーーー夫への愛情が生み出した、栄養満点のおむすび「天むす」

津市の中心にある大門。日本三観音のひとつ「津観音」があるまち。
大門商店街から1本路地を入った場所にひっそりと店を構えるのが、1957(昭和32)年創業の「千寿」。

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店先の暖簾にも書かれている通り、このお店は「天むす」元祖のお店。
元々は天ぷら屋として始まったお店で、その2年後には「天むす」をお客さんに出していたといいます。
天むすは名古屋メシと言いたい人も多いはず。早速、三代目店主の福田 尚美さんにお話を伺いました。

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▲三代目店主の福田尚美さん(右)と二代目店主の中村磯路さん(左)

ーーーなぜ、天ぷらのおむすびを作ったんでしょうか?

福田さん:先代(女性)は天ぷら屋を営む中、日頃忙しいご主人のために作り出したと聞いています。忙しい中、手軽になおかつ栄養のあるものを食べさせたいと、車えびの天ぷらを切っておむすびの具にしたのが始まりです。
ご主人もこれを大変気に入ったようで、常連さんの意見も聞きながら改良を重ねて誕生したようです。

夫を気遣う愛情が生み出した「天むす」。いただきます。

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ふっくらと俵型に握られた「天むす」は、とてもつややかで可愛らしい。

先代が夫のためにと握ったように、愛情を込めて注文が入ってから一つ一つ手で握られます。

名古屋の天むすは、味付けされた具が入っているイメージがありますが、千寿の天むすは塩味だけとシンプルです。
さっぱりとしていて、子どもからお年寄りまで、愛され親しまれる味です。

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ー天むすは名古屋発祥のものだと思っている人が多いと思いますが、どう思いますか?

福田さん:1981(昭和56)年に名古屋に暖簾わけをしたのは知っているので、なんとも思いませんでした。「食」って、地域やそこに暮らす人々によって好みが違います。名古屋の天むすは、その地で独自の進化を重ねて人々に親しまれている。本物も偽物もなく、発祥であるだけです。私たちは、とにかくお客さんに美味しいって言ってもらえる料理を作ることが一番だと常に思っています。

先代は、「天むす」を料理の一つのカテゴリにしたいとの想いが強かったそうです。えび、米、海苔などの素材にもこだわり、思うような材料が入手できなかった時は、休業することもあったとか。今でもそのこだわりは変わらず、常に素材を吟味し美味しい「天むす」を提供したいと福田さんは話されます。

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▲こだわりのお米は、三重県のブランド米「結びの神」を使用。

この日お邪魔した際にも、もうすぐ家に帰ってくる孫のためにと、「天むす」を持ち帰るおじいさんの姿がありました。大切な人を想う心が生み出した「千寿の天むす」を是非ご賞味ください。

 

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天むす発祥の店 千寿

住所:三重県津市大門9-7

TEL:059-228-6798

定休日:日曜日・第3月曜日

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ーーー和菓子文化に新たな風を吹かせた「いちご大福」。

大門商店街の入り口にお店を構える老舗和菓子店「とらや本家」。1932(昭和7)年創業のこのお店には、四季折々の上生菓子やようかん、そして老若男女問わず大人気の”あの和菓子”を目当てに多くの人が訪れています。

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”あの和菓子”とは?
津市民であればすぐにピンとくると思います。そうです、とらや本家といえば「いちご大福」です。地元の人をはじめ、多くの人から「いちご大福発祥の店」ともいわれています。

今や日本各地どこにでもある「いちご大福」が、どのようにして生まれたのか?三代目の市川佳代さんにお話を伺いました。

▲とらや本家 三代目の市川佳代さん。
▲とらや本家 三代目の市川佳代さん。

「これから日本にも洋菓子の文化が入ってくる。しかしとらや本家はこの先もずっと和菓子一本にこだわっていく」という創業者(市川さんの祖父)の言葉を胸に、お客さんが「美味しい」と喜んでもらえる和菓子作りを心がけていると言う市川さん。

ー「いちご大福」発祥というのは本当ですか?どうして大福にいちごを?

市川さん:発祥かどうかにはこだわってないんです。別に発祥って謳うつもりもないですし(笑)。
誕生したのは先代(市川さんの父)の時ですね。きっかけは、午後3時の休憩時間に頂き物のいちごとお店で余った求肥のお菓子をみんなで食べていて、一緒に食べてみたらこれが意外と美味しかったんです。これ商品にしたら面白いんじゃない?って。それから色々試して、いちご大福としてデビューしたのは1986(昭和61)年の2月。意外にまだ新しい和菓子なんですよ

 

当時、和菓子の中に生の具を入れるということは、常識では考えられなかったそうです。いろんなあんこを試したり、常連さんやご近所さんに試食してもらい意見を集めるなど、試行錯誤を重ねたそうです。はじめは「こんなの要らんわー」など否定的な意見もあったそうですが、試食してもらうと「美味しい」との声が増えていったそうです。

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▲いちごの酸味と白あんのまろやかな甘み。今では当たり前の「いちご大福」だが、当時は常識外れの組み合わせだった。

とは言っても、これまでにない和菓子。果たしてこの和菓子がお客さんに受け入れてもらえるのか?逆に今までのお得意さんも離れてしまうのではないか?と、先代も相当悩まれたとか。
しかし、周りの従業員をはじめ、たくさんの人が「美味しい」と盛り上がっていたことに背中を押され、販売に踏み切ったそうです。

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▲販売前日に配られたチラシ。働いていたアルバイトさんがプリントゴッゴで作ったそう。「食べてみなくちゃわからない」のキャッチコピーがこの和菓子がどれだけ目新しいものだったのかを物語ります。

「宣伝も自分たちで」と手作りでチラシを作成し、店先や近くのバス停などで配られたそうです。

ー実際売り出してみてどうだったんですか?

市川さん:それが、とても好評だったんですよ。これまでの常連さんはもちろん、いちご大福を求めて女子高生やサラリーマンもたくさん来てくれるようになったんですよ。これまで若い子や男性が一人で和菓子屋に入ることって珍しかったですもん。遠方からも買いに来ていただいたり。新しい和菓子を皆さんが口コミで広げてくださったんですよ。このいちご大福はお客さまに育てていただいた賜物だと思っています。

 

今ではいちご大福だけでなく、パイン・みかん・チョコバナナ・キウイ・ぶどう・栗小豆など、季節に応じた大福が並びます。どの時期に来店されても、2種類以上の大福が用意されています。これは、まさに市川さんの「お客さまを喜ばせたい」という想いの表れですね。

最後に「素材やデザインで日本の四季を表現出来る和菓子。その魅力がたくさんの人に伝わるよう、美味しいお菓子をこれからも作っていきたい」と市川さんは笑顔で話してくれました。

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とらや本家

住所:三重県津市大門5-8

TEL:059-228-4802

定休日:月曜日

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ーーーたくさんの人に洋食を!洋食生まれの「味噌カツ」。

県庁から南へ車でおよそ10分のところにある「カインドコックの家 カトレア」。1965(昭和40)年創業のまちの洋食屋さんです。

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このお店で食べてもらいたいメニュー。それは、「味噌カツ」。
「味噌カツ」も名古屋メシだと思っている方も多いはず。しかし、「味噌カツ」はこのお店が発祥だといわれていまるのです。

早速、生みの親であるオーナーの谷一明さんにお話を伺いました。

カインドコックの家 カトレア。オーナーの谷 一明さん
▲カインドコックの家 カトレア。オーナーの谷 一明さん

オーナーの谷さんは、戦後の食料が満足にない時代にご両親が炊き出しを周りの人々に振る舞っていた姿を見て、「食で人を喜ばせたい」との思いで料理の道に入りました。まだ洋食文化が根付いていなかった日本で、どうすれば多くの人が喜ぶ洋食ができるのかを研究し、生まれた料理がこの「味噌カツ」です。

ーなぜ味噌とカツレツを組み合わせたのですか?
谷さん:幼い頃から「トン、トン、トン」とネギを刻むまな板の音と温かい味噌汁の香りで目覚め、育てられた記憶が私の中にあったんでしょうね。本能的なものかもしれないです。

古くから日本人にとってなくてはならない調味料である味噌。その昔、戦国武将たちも必ず味噌を常備し戦に向かっていたともいわれています。それだけ日本人には欠かせない味噌を洋食に取り入れれば、きっと日本人が喜ぶメニューになるのではないかと思い考案しました。

 

谷さんが「味噌カツ」を考案したのは、1960(昭和35)年で20歳の頃。当時、修行先の先輩や仲間にも相談をしましたが、共感してくれる人はいませんでした。しかし、「絶対に美味しい」「日本人が好きな洋食のひとつなる」と各確信し、1965(昭和40)年、25歳の時、このお店をオープンし「味噌カツ」を誕生させました。

一体、どんな味噌カツなのか?

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鉄板の上にのる揚げたてのカツレツ。その上から、味噌ベースのソースをかけた瞬間、ジュワーーーと舞い上がる蒸気とともに味噌の香ばしい匂いが広がる。名古屋で食べる味噌カツとは違い、サラッとしたソースでさっぱりとしていて、肉の味をしっかりと感じることができます。

ー今や、味噌カツ=名古屋メシと言われますが、どう思いますか?

谷さん:別に「取られたー!」なんて思っていないし、それで名古屋の食文化が発展するのはいいことだと思います。うちは洋食から進化した「味噌カツ」。名古屋のはとんかつが進化した「味噌カツ」。また別物かもしれないですね。それに食文化は地域地域によって違う。だから、その地域ごとに形を変えて進化していくことは自然なことだと思います。

谷さんは常にお客さんに喜んでもらえる料理やサービスを考えています。
店内のお花一つにしても、谷さん自ら家で育て、お店に飾っています。

▲コーヒーについてくるクリーム。これもお客さんに喜んでもらう演出。
▲コーヒーについてくるクリーム。これもお客さんに喜んでもらう演出。

お客さんに喜んでもらいたいとの思いから生まれた「カトレアの味噌カツ」。是非ご賞味ください。

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カインドコックの家 カトレア

住所:三重県津市上弁財町17-108-1

TEL:059-226-5629

定休日:金曜日

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「食べる人に喜んでもらいたい。」という作り手の想いが生み出した、津市の名物3品をご紹介しました。
三重に来られた際には、津市にも立ち寄っていただき、これらの名物グルメを是非ご賞味ください!


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