おいしいと評判の“みえジビエ” 三重県が支援するジビエ革命のヒミツを探る!

2018.1.17

フードライター 高田強

野生のイノシシ・シカを独自の工夫でおいしくいただく

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野生鳥獣の食肉を味わう“ジビエ料理”。しかし、野生鳥獣が増え過ぎ、イノシシやシカによる人や農作物への被害は、ニュース、ワイドショーでも定番になってしまいました。野生のイノシシやシカは、多くの自治体では悩みの種の様子。そんな中、三重県が打ち出した、「みえジビエ」という取り組みが話題になっています。
「みえジビエ」では、味や流通で、さまざまな工夫をしているとか。そして、おいしいというウワサが…。年間200軒以上の飲食店を取材するフードライター・高田ですが、ジビエを食べるのは、年に1、2回。かなり気になるので、取材することにしました。 ※記事中の料金は税込み。

 

まずは予備知識を仕入れるために、「みえジビエ」を推進するNPO法人みえジビエ推進協議会の中野和彦(なかの かずひこ)さんに話を聞きました。
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―――“みえジビエ”が、全国のジビエ界の最先端だと聞いたのですが。
中野さん「衛生管理、品質管理と、その肉を流通させるということでは、最先端だと思います」

―――どのような取り組みでしょうか。
中野さん「みえジビエでは、イノシシとシカを扱っていますが、こういうお肉は硬い、臭いというイメージを持たれている方が多いんです。でも、ちゃんと処理すればおいしい。そのためには、捕獲したイノシシやシカを新鮮な状態で加工場に運び、しっかりと処理しないといけません」

―――それを三重県は確立したのですね。
中野さん「8年前から取り組みを始めて、5年前くらいから販売や卸しを拡大したという感じでしょうか。現在、三重県を中心とした69店で『みえジビエフェア』を開催しています(2018年1月末まで)。飲食店で『みえジビエ』を食べられるほか、スーパーマーケットのマックスバリュ15店舗では、ハンバーグなどの加工品を購入できます」

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▲マックスバリュでは、「みえジビエ」を加工した「鹿肉ハンバーグ」(580円)などを販売

―――しかも、おいしいんですよね。
中野さん「私個人としては、伊勢えびや松阪牛のような三重県の名物にひけをとらない魅力があり、これから人気になる可能性を秘めていると自負しています!」

中野さんがそこまで言うならぜひ食べてみたい…。
そこで、「みえジビエフェア」に参加しているお店から3店をピックアップし、食べに出かけました。

 

バイキングと一緒にみえジビエ鍋を味わえる
伊勢市・勾玉亭(まがたまてい)
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まず訪問したのは、伊勢神宮外宮のすぐ近くにある複合施設「豊恩館(ほうおんかん)」2階のレストラン「勾玉亭」。伊勢名物「神代餅(かみよもち)」を製造販売する「勢乃國屋(せのくにや)」が運営するレストランです。

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こちらで楽しめるのが、地産地消をコンセプトに、三重県産の食材にこだわった料理のバイキング。ディナータイムはバイキング(2,376円)だけでなく、メイン料理とバイキングがセットになったプランも用意されています。注目を集めているのが、2種の鍋とバイキングを一度に楽しめる「勾玉鍋プラン」(3,780円)。この鍋で、みえジビエが味わえるのです。

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▲注文は2人分から。8種ある鍋メニューに、写真左下の「ジビエ牡丹鍋(イノシシ)」と写真右下の「ジビエ紅葉鍋(シカ)」があります。

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さて、味わってみましょう。鍋に使われているのは、イノシシ、シカとも、基本的にロース肉。鍋の右側は“ジビエ牡丹鍋”で、赤みそベースです。イノシシ肉は想像通り豚肉に近いのですが、肉質と味わい共にワンランク上のコクのようなものを感じさせ、力強いうまさが。しっかりとした赤みそのだしが、その力強さに合っています。

鍋の左側は“ジビエ紅葉鍋”で、シカ肉はフワフワの食感です。“火を通し過ぎると硬くなる”というイメージでしたが、全くそんなことはありません。そのヒミツは、しょうゆベースのダシに、たっぷりと入った大根おろし。大根の酵素によって、シカ肉が硬くならず、やわらかさが保たれているのです。ギュッとうま味の詰まったシカ肉のおいしさは、牛肉や鶏肉などにはなく、うれしい裏切りでした。

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このメニューを考案したのが料理長の堤純治(つつみ じゅんじ)さん。日によっては、バイキングメニューに、「シカローストのジンジャーソース」が登場するそう。
ランチ時(11:00~14:30)には、サラダや天ぷら、おでん、お刺し身などのほか、和・洋・中、約40種の料理が並びます。しかも1,620円のお手頃価格。

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バイキングには、てこね寿司や伊勢うどんといった、ご当地名物もありましたよ。

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伊勢市を代表する一軒家イタリアンレストラン
La Mia Vitaラ・ミア・ヴィータ

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次は、伊勢神宮外宮から車で10分弱、伊勢市桜木町の住宅街にたたずむ、一軒家のイタリアンレストランへ。三重県だけでなく、イタリアでも修業したオーナーシェフ・丸山とし朗(まるやま としろう)さんが腕を振るいます。舌の肥えた地元の人たちのハートをつかみ、取材させていただいた日も昼は満席、夜も予約でいっぱいでした。

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丸山シェフに「『みえジビエ』をお願いします」と注文したところ用意してくれたのは…。
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シカのロース肉。調理前の姿を見せてくれました。

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そして、できあがったのが「シカ肉のタリアータ」です。「塊で焼いた肉を薄く切って皿に盛りつけただけです(笑)」と、丸山シェフは言いますが、塩・コショウをした肉の外側をフライパンで焼き、その後オーブンへ。余熱で仕上げた肉は、しっとりやわらか。甘味と酸味があるマルサラ酒をベースにしたソースとも好相性です。なんとも上品なおいしいさ。

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もうひと皿、テーブルに出されたのが「シシ肉ラグー」。ソースは、ニンジン、玉ネギなどの野菜と、グリルしたイノシシの肉を8時間以上煮詰めたもので、平打ちの生パスタ、タリアテッレにマッチ。長時間煮詰めても、イノシシ肉のパワフルな味わいが感じられました。

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「安定した品質のお肉が入るから、私も安心してジビエを出せます」と丸山シェフ。紹介した2つのメニューは、ディナーの5,400円のコースで選ぶと味わえます。ランチでも「シシ肉ラグー」は1,890円と3,240円のコースで注文できるそうです。

 

あのカレーチェーンでも「みえジビエ」が!
カレーハウスCoCo壱番屋

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最後は、みなさんよくご存じのカレーチェーン、“ココイチ”こと「カレーハウスCoCo壱番屋」です。今回は津市にある津上浜店を訪れました。「カレーハウスCoCo壱番屋」では、三重県とのコラボ企画で、6年前から「みえジビエ」の限定メニューを提供しているのです。ココイチは過去に何度か取材していますが、店舗企画の限定カレーは、本社審査が厳しいことで有名です。

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「店舗限定のカレーは何度も試作をして、本社からダメ出しもあり、さらに社長の審査も必要なので大変です。三重県全域での限定となると、さらに厳しいと聞いています」と、津上浜店の店長・中西充博(なかにし みつひろ)さん。

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こちらが2018年1月31日(水)までの限定発売中の「シカコロ三種カレー」(823円)です。レギュラーのポークカレーに、シカ肉入りのコロッケ“シカコロ”がトッピングされています。

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この“シカコロ”の開発には、三重県中部にある度会町(わたらいちょう)が協力。コロッケにはシカ肉のほか、度会町特産のブルーベリーとお茶も使われています。1個のコロッケで、プレーン、ブルーベリー、お茶と、部分ごとに3種類の味を味わえるのがポイントです。ちなみに、ブルーベリー部分は甘くなく、シカ肉風味は少し弱めなので、ジビエ入門にはピッタリかもしれません。

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“シカコロ”は1個180円。ほかのカレーへのトッピングとしても注文できるそうです。

 

この「みえジビエ」について、さらにNPO法人みえジビエ推進協議会の中野さんに聞いてみました。

―――“みえジビエ”は、3店ともおいしかったです!
中野さん「そうなんです、おいしいのが“みえジビエ”の魅力なんです。ところで、ジビエとなる野生のイノシシやシカは、どうやって捕まえているか知っていますか?」

―――猟銃で撃ったものを、解体するのではないのですか?
中野さん「実はジビエの臭みは、血が大きく関係しています。でも“みえジビエ”は、主に鉄砲で撃ったものでなく、生け捕りにしたものが対象。死んでから時間がたっていないものを、衛生的な環境で素早く処理するのが、みえジビエのおいしさのポイントなんです」

―――La Mia Vitaの丸山シェフが“安定した品質の肉が入る”と言っていたのは、そのことなんですね。
中野さん「イノシシなどは、季節によって脂の付き方が違うので、味わいの変化はあるかもしれません。ただ、食品としての安全性は、かなり精度の高い状態。そういう部分では、三重県が他県に比べて前を走っていると思っています」

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▲ “みえジビエ”のおいしさや安全性の発信を目的にした「みえジビエ フェア」も、今回で3回目に。

―――いいシステムができあがりましたね。
中野さん「私たちがめざすのは、牛肉や豚肉、鶏肉のように、ジビエの加工品やお肉をみなさんが満足して、買ってくれること。助成金などがなくても、ビジネスとして成立するようにしたいんです。その一環として、『みえジビエ フェア』ではスタンプラリーも行っています」

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想像を上回るおいしさの連続。そして“みえジビエ”の志の高さに感激しました。食べれば応援できる、一石二鳥どころか“一石何鳥”にも。みなさんも三重を訪れたら、「みえジビエ」を食べてみてください。

 

「みえジビエスタンプラリー」
「みえジビエ フェア」参加店でみえジビエ料理や、みえジビエ加工品などの商品を500円購入ごとにスタンプ台紙に1つ押印。スタンプ2つ(1,000円分)を集めて応募すると、抽選で5人に調理が簡単な「みえジビエ加工品」(3,000円相当)をプレゼント。※スタンプ台紙兼応募用紙はフェア参加店で配布。※今回紹介した「La Mia Vita」の「みえジビエ」メニューは通年販売。「勾玉亭」のみえジビエ鍋は冬季限定販売、カレーハウスCoCo壱番屋は2018年1月31日(水)までの限定販売。
期間: 2018年1月31日(水)まで
会場:三重県を中心とする69店(12月1日時点)
詳しくはみえジビエHP https://www.miegibier.jp/
問い合わせ:0595-21-2229(NPO法人みえジビエ推進協議会)
今回紹介した店舗はこちら
★勾玉亭 (まがたまてい)
住所:伊勢市岩渕1-1-31、豊恩館2階
電話:0596-22-7788
営業時間:11:00~14:30(90分制)、18:00~21:00(時間制限なし)
休日:水曜、第2・第4火曜のディナータイム
席:70席
http://www.senokuniya.co.jp/houonkan/magatamatei.html
※みえジビエ鍋は、3日前までに要予約。
★La Mia Vita(ラ・ミア・ヴィータ)
住所:伊勢市桜木町3-3
電話:0596-20-5002
営業時間:11:30~14:30(L.O.13:30)、17:30~22:00(L.O.20:00)。※ケーキなどの販売は10:00~22:00
休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)
席:20席
駐車場:8台
http://www9.plala.or.jp/lamiavita/
★カレーハウスCoCo壱番屋津上浜店
住所:津市中河原西興2043
電話:059-224-7712
営業時間:11:00~24:00
休日:なし
席:39席
駐車場:25台
http://tenpo.ichibanya.co.jp/search/shop/pc/detail.php?SCODE=1166
※同店ほか、三重県内のカレーハウスCoCo壱番屋(28店舗)で取り扱いあり。

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