三重県の実は…松阪牛やカキだけじゃない!知る人ぞ知るグルメを通販で食す

2019.5.24

田舎やのんびり日帰り取材が多いスローライター 松本光範

 

三重県の特産といえば、松阪牛や伊勢エビ、的矢かきなどが有名ですが、「つづきは三重で」では、これまで「みえジビエ」や「希少な魚介」など、あまり注目される機会がなかった多彩な三重グルメを紹介してきました。ただし、実際に味わおうと思うと、当然ながら現地に食べに行かなくてはなりません。そこで、今回は現地へ行かずとも、お取り寄せで味わえる注目グルメを紹介します。まずは、独自の取り組みで各メディアに取り上げられ、東海エリアでは知名度抜群という「尾鷲まるごとヤーヤ便」から。その魅力を探るべく、尾鷲へ足を運びました。

 

尾鷲を知ってもらい、地域活性化も目指す、一挙両得な「尾鷲まるごとヤーヤ便」

「尾鷲まるごとヤーヤ便」は、尾鷲の魚介類をはじめ、海産物加工品、特産品などを1箱に詰め込んだ、尾鷲の魅力を丸ごと味わえる通信販売。年4回届く頒布会形式のグルメ通販で、尾鷲市役所や観光物産協会、生産者などが地域一体となって取り組んでいます。なかなか耳にすることのない珍しい通販のため、TV番組をはじめ多数のメディアでも紹介されています。まずは、生産者への連絡や顧客管理などを取りまとめている尾鷲観光物産協会の中村俊介(なかむら しゅんすけ)さんに話を聞きました。

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◇「尾鷲まるごとヤーヤ便」がスタートしたきっかけを教えてください。
中村さん「もともと、地域活性化のために生産者を集めて新しい尾鷲の商品を生み出そうというプロジェクト『尾鷲ものづくり塾』がありました。実際に新商品がいくつか出来上がったんですが、当時は地元以外の販路がありませんでした。そこで、ユズで町おこしを成功させた高知県馬路村(うまじむら)からアドバイザーを招聘。各生産者の商品を集めて、年4回の頒布会形式で販売するという方法を提案してもらい、2009年度に『尾鷲まるごとヤーヤ便』がスタートしたんです」

◇今年度はちょうど10周年なんですね。これまでの反響はいかがですか?
中村さん「最初は100セットほど売れればいいかなぁと考えていたらしいですが、2年目に約300件の注文が入ったんです。そこから『参加させてほしい』という地元の声も増えて、現在では約50の生産者の方々が参加されています。一方で、お客さまからは当初『食べ方がわからない』や『量が少ない』などの声が。そこで、食べ方の提案やオプションで注文できる商品を追加し、2012年には、ほぼ現在のスタイルが確立。同年には愛知県のTVに取り上げていただき、注文数が一気に2,000件を超えました。ほかの自治体からも興味をもってもらえ、県内の伊勢市のほか、土佐清水市、下関市、舞鶴市などから視察に来られたこともありますよ」

◇とてもヒットしたんですね。
中村さん「現在は、ピーク時に比べて少し注文件数は落ちましたが、事業としては成功したと思っています。『尾鷲まるごとヤーヤ便』を購入したお客さまの中には、気に入った商品を生産者から直接取り寄せる人などもいらっしゃいますし。市場開発事業としてスタートし、生産者にとっては販路拡大、お客さまにとっては尾鷲の魅力を知ってもらうという、どちらにもウィンウィンな取り組みになったと考えています」

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▲”尾鷲まるごとヤーヤ便”には、商品のほか、「尾鷲がんばりよる新聞」を同梱。食材の食べ方や生産者の声を届け、より尾鷲に魅力を持ってもらう工夫も。これが楽しみという購入者も多い。

◇今後の展望などはありますか?
中村さん「2019年の夏から11年目に入りますが、先ほど言ったように注文件数は2015年を境に減ってきているんです。『尾鷲まるごとヤーヤ便』はリピーターが多いのですが、子どもが独立されたり、核家族の増加など、家族構成が変わっていくなかで、『1箱の量が多く食べきれない』という意見をいただくんですね。なので、今後、個別に商品を選べるオリジナルの通販などができるようになればと思っています。せっかく尾鷲のことを知ってもらったお客さまには、ずっと尾鷲のファンであってほしいし、まだ尾鷲を知らない人には、地域を知ってもらう絶好の商品ですから」

 

よりアグレッシブに魅力ある商品を生み出していきたい

10年目を迎えた2018年には、生産者主体でより積極的に取り組んでいくことを目標に、生産者で構成される『チームヤーヤ便』が結成されました。その狙いや取り組みを伺うために、実行委員長の小川康成(おがわ やすなり)さんに話をお聞きしました。

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▲小川さんは三和水産「めでたい屋」の代表取締役社長として、”尾鷲まるごとヤーヤ便”の立ち上げから参加。また観光物産協会の物産部会長も務めています。

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▲三和水産では、焼いた鯛のアラをじっくり水出しした「鯛だしつゆ」や、尾鷲産真鯛を使った「特選鯛めしの素」などでヤーヤ便に参加しています。

◇”チームヤーヤ便”を結成された理由を教えてください。
小川さん「10年目に入って、やっぱり少しマンネリ化してきた部分があると感じたからです。商品をもっと魅力あるものにしたり、新商品を開発するなど、より顧客満足度を上げるために、生産者から積極的にアクションを起こしたいという思いがありました」

◇具体的に始められたことはありますか?
小川さん「まず、2018年にカタログのリニューアルに着手しました。商品をお皿などに盛り付け、食卓に並んでいる写真を掲載。お客さまの目線を変えることで、より商品に親しみをもってもらおうという考えです。また、今年の春便からはアンケートをスタートしました。これまでは意見を書いてもらう形式のアンケートを同梱していましたが、文章を書くタイプはなかなか手間がかかります。そのため、新しく好きな商品に○をつけてもらうなど、簡単に回答できる形式に変更しました。

※2019年度のカタログはコチラをチェック
https://owasekankou.com/ya-yabin/download/h30yayabin.pdf

◇アンケートはどう活用する予定ですか?
小川さん「商品のリニューアルを積極的にやっていきたいと思っています。商品開発のヒントを得て、11年目、12年目のヤーヤ便がさらに良くなるように商品のブラッシュアップに取り組みたいです。最終的には、一つ一つの商品に魅力がないと、喜んでもらえませんから」

◇今後の展望を教えてください。
小川さん「『尾鷲まるごとヤーヤ便』のシステムについては新しいものを構築したいと考えています。現在は年4回届くセット(4便1セット)で27,500円するんですが、それだとなかなか気軽に頼んでみようとはなりません。お試し便やチャレンジ便など、1回からでも頼めるような仕組みも作りたいですね」

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▲中村さんと小川さん。「協力して、今後も『尾鷲まるごとヤーヤ便』を盛り上げていきます!」

お二人の話にもあったように、『尾鷲まるごとヤーヤ便』にはたくさんの生産者の協力が不可欠。そこで、その中から代表して、2つの生産者さんの現場を直接訪ねてみました。

■大瀬勇商店

まず訪れたのは「大瀬勇商店」。明治35年に創業した、海産物加工品を手がける老舗です。5代目の大瀬邦裕(おおせ くにひろ)さんに話を伺いました。

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◇こちらでは、何を作っていらっしゃるんですか?
大瀬さん「今、作っているのはカツオの生節です。昔と変わらない製法で、添加物不使用。一つ一つ手作りです。カツオ節にする前なので、手で簡単にほぐれて、しょうゆやショウガ、マヨネーズとあえて食べても絶品ですよ。今はカツオを燻(いぶ)すかまどを持っている店がなく、尾鷲でも2件しか作っていないんです」

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▲ゆでたカツオは一つ一つ丁寧に骨抜きを。手早く骨を取り除く様子はまさに熟練の技。

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▲昔から使っているかまどで燻す工程。何段にも重ねることで温度差を付けて時間をかけじっくりと燻していきます。

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▲燻し終わったら、最後にもう一度細かな骨を取り除いて成形。色味も香りもすばらしい生節が出来上がります。

◇「尾鷲まるごとヤーヤ便」の印象はいかがですか?
大瀬さん「尾鷲の商品を集めて発送することは尾鷲のPRにもなると思ったので、最初から参加していました。購入されたお客さまから直接電話をもらって追加注文を受けることもあるので、販路拡大にもつながっていると思います。面白い企画なので、これからも続いてほしいですね」。

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▲代々、生節を作る大瀬さん。左は邦裕さんの叔父にあたる4代目の勇人(ゆうと)さん、中央は邦裕さんの祖父、3代目の勇喜(ゆうき)さん。

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▲人気商品の「アワビ煮」。ヤーヤ便オプションで30個限定で販売したところ、89件の申し込みがあったといいます。伊勢神宮にも奉納されているのだそう。

上野商店

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こちらは干物などを手がける上野商店。3代目の上野利朗(うえの としろう)さんに話を伺いました。

◇何を作っていらっしゃるんですか?
上野さん「尾鷲の魚を使った干物です。尾鷲は三重県で唯一、底引き漁の魚が入る漁港なので、本当にたくさんの魚があるんです。『尾鷲まるごとヤーヤ便』には、2018年度は夏はメヒカリの干物、春はマンボウの腸をみりん干しにしたものを提供しました。干物は味付けして干すというシンプルな食べ物なので、ごまかしがききません。なので、大きさや脂の具合など、魚一つ一つの状態を見て、もっともおいしくなる作り方を追求しています」

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▲まずは干物にするための下準備。写真は尾鷲ならではの脂がたっぷりのったオキギス。

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▲干物はジューシーさが残るよう、うす塩で味付け。状態を見て、分単位で漬け込む時間などを微調整するそうです。

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▲マンボウの腸のみりん干し。コリコリとしたホルモンのような食感と、かむほどに広がるうま味がたまりません。

◇「尾鷲まるごとヤーヤ便」の印象はいかがですか?
上野さん「尾鷲=干物がおいしい、というブランドイメージがあるので、それを損なうことのないように、お客さまにはおいしいものを届けたいという思いがあります。また、いろいろな魚が揃う尾鷲なので、お客さまを飽きさせないよう、これからも定番の商品のブラッシュアップを欠かすことなく、みなさんが驚くような珍しい干物も作っていきたいですね」

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▲店舗と工場が併設された上野商店

そんな尾鷲を代表する生産者さんたちの想いがこもった「尾鷲まるごとヤーヤ便」。ぜひ一度チャレンジしてみてください!

さらに、三重県には通販で買える三重ならではの商品がまだまだたくさん。そのなかから、ユニークな商品をご紹介します。

 

三重産の食材で作る離乳食で子育てを頑張るママを応援「mogcook」

「mogcook(モグック)」は、三重県産の旬の魚を使った離乳食をはじめ、赤ちゃんから大人までが安心して味わえる食材を届ける通販サービス。なかでも 三重県産の鯛とお米のみで作った、添加物不使用「BabyFish 鯛のおかゆ」は、「みえセレクション(※)」にも選定されている注目の商品です。

※「みえセレクション」…公募で集めた特徴ある商品から県独自の基準や有識者の審査によってセレクト。三重を代表するオリジナリティのある商品ラインアップになっている。

http://www.pref.mie.lg.jp/CHISANM/HP/mieselection/79702046018_00001.htm

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▲離乳食中期の子供から食べられる「BabyFish 鯛のおかゆ」540円

実は「mogcook」とは、ウェブや広告などを手がける紀北町の会社「dgreen(ディーグリーン)」の事業の一つ。どのような思いから「mogcook」は生まれたのでしょうか。

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▲mogcookを運営する、左から樋口さん、立花さん、五味さん

立花さん「紀北町出身で、現在は東京で子育てをする方から提案をいただいたのがきっかけです。『東京は魚の種類が少なく、安心・安全面にも気を使う。地元の魚で離乳食を作ることはできないのだろうか』という内容でした。ディーグリーンは『尾鷲ヤーヤ便』のホームページ作成を手がけるなど、地元の生産者とのつながりもあったので、それならとチャレンジしたのが始まりです。赤ちゃんにとって本当によいといえる、信頼できる生産者が真心を込めて作る、そして、ママを応援できるものを提供していきたいと思っています」

◇まったく異なる業種へチャレンジすることは、大変だったのではないでしょうか。
立花さん「サンプルを作ってほしいと仕事で関わりのあるいろいろな水産関係者に当たりましたが、ロット数や実利的な問題で断られることも多かったですね。それでも諦めずに、“赤ちゃんのために安心できる離乳食サービスを”という想いを真摯に伝えることで、環境や設備面も理想的ないくつかの業者さんに協力していただくことができました」

地域に密着しながら、子育てに奮闘するママを応援する、そんな活動や想いが実を結び、「mogcook」は2019年、「第9回地域再生大賞(※)・奨励賞」に選出されました。

※「地域再生大賞」とは、地域づくりに取り組む団体を応援するため、地方新聞社と共同通信が2010年度に設けた賞。産業振興や文化・伝統の保護、子育てや介護など、地域のことを考え、活動に取り組む団体に授与される。

◇受賞してのお気持ちや、今後の抱負を教えてください。
立花さん「このサービスをスタートして4年半、いろいろなご意見を元に地道に取り組んできたので、評価してもらってうれしいです。これからは商品を充実させるのはもちろんですが、地域で売り方に困っている業者などに向けて、mogcookで培ったWebやSNSを使った集客の方法なども提供していきたいと考えています」

これからも地元のため、そして、安心・安全に味わえる食のため、地域とともに活躍する「mogcook」から目が離せません!

 

「牡蠣の和ヒージョ」「パールコロッケ」まだある!そのほか注目の三重通販グルメ

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▲マルサ商店「牡蠣の和ヒージョ」756円

漁師直営の「マルサ商店」が「漁師が愛した漁師料理」をコンセプトに手がけた、カキの干物のオイル漬け。みりん干しにしたカキをごま油ベースの液に漬け込んだ和テイストで、日本酒やビールとの相性が抜群です。また、オリーブオイルに漬け込んだカキのアヒージョもあり、こちらはワインとよく合う逸品。食べ比べをするのもおススメですよ。

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▲山崎屋「パールコロッケ」(5個入り)1,512円

本アコヤ真珠貝の貝柱が入った志摩の名物。真珠は健康や美肌にうれしいミネラルが豊富なことで知られていて、貝柱にも同様のミネラルがたっぷり。コリコリとした食感も楽しく、ベースのタネには三重県産の上質な牛乳や伊勢志摩産のタマネギなどが使用されています。志摩の原材料などを活用して生産された「志摩らしさ」を感じる食品として、「志摩ブランド」にも認定されています。

いかがでしたか? いずれも三重ならではの食材を生かし、地域をアピールするアイテムばかり。一度味わって、三重の魅力の懐の深さを満喫してみてください。きっとそのグルメの味・魅力をさらに追求したくなるはず! そうなれば、次はぜひ実際に商品が作られている土地へ足を運んでみてくださいね。

(掲載情報は、すべて平成31年3月時点のものです)

<今回紹介した商品の購入はコチラから>
★尾鷲まるごとヤーヤ便
https://owasekankou.com/ya-yabin/
★上野商店
http://www.maru2ueno.com/
★mogcook
https://mogcook.com/
★マルサ商店
https://www.marusa-syouten.com/omiyage
★山崎屋
http://www.yamazaki-iseshima-pearl.com/food/