
【取材】yusuke.murayama
―――古民家カフェ「葉流乃音(はるのん)」。大阪から移住した夫婦をとりこにした美杉の暮らしとは。
「めちゃくちゃ寝れた。初めて来た夜に。寝袋なのに」
こう語るのは、大阪府堺市で教員として勤めていた、カフェ店主の南野忠晴さんと憲子さんのご夫妻。
憲子さん:どんだけ寝るねん! っていうくらい寝れた。旦那がここの物件に一目惚れして決めました。
忠晴さん:不動産屋にね、「こんな田舎、誰も来ないよ。サルくらいしか来ないよ」って言われたんですけどね(笑)。
美杉町奥津の伊勢本街道沿いに2016年3月にオープンした、カフェ葉流乃音(はるのん)。
JR名松線の伊勢奥津駅からほど近く、地域のくつろぎの場として早くも溶け込んでいる様子。
店内は、落ち着いた色の照明やオシャレな椅子などのインテリアが並んだ素敵な空間。
―都市部から美杉に移住して、正直困ったことは?
憲子さん:八知(美杉内)へ行けばスーパーがあるし、それなりに街も近い。宅配も充実しているから不便もないです。移動販売もあるし。
―美杉に来て驚いたことはなかったですか。
忠晴さん:高齢の方がとても元気で驚きました。ここでは、私たちは若者扱いですから。近所のおばあちゃんに「あんたら見てたら若返るわぁ〜」って(笑)。歳をとる、良いお手本の方がたくさんいらっしゃいます。それと、ストレスを感じることが少なくなりました。朝起きて鳥の鳴き声を聞いたり、星がきれいだったり。
憲子さん:こちらにきて、久しぶりに天の川を見ました。
南野夫婦がカフェをオープンさせるまで、美杉の伊勢本街道に飲食店はなかった。
伊勢本街道は、宿場町の面影が残ったとても趣のある街道だ。
また、美杉に移住してきた方々も、このカフェによく遊びにくるという。
移住者同士のコミュニティの場があるのも、美杉の魅力だ。
−−−「カネはないがストレスもない!」地場産業 “林業” の可能性。えっ、杉のお茶って何?
「山に入って、シイタケ採ってきたから持っていきな。原木シイタケやで」
そう迎えてくださったのが、美杉で三浦林商を営む、三浦さん。三浦さんは美杉の生まれだ。
三浦さんは映画WOOD JOB!で林業指導だけでなく、ロケハンやシナリオができるまでのアドバイスなどにも携わった、林業のプロ。
WOOD JOB!でも取り上げられた通り、美杉の地場産業といえば林業。近年、日本の林業は外国からの安い木材の流入などによって押されているようだが、林業のプロはどう感じているのか。
三浦:林業の注目度は高いです。個人的には、この先10年で最も成長する産業だと感じています。林業をやりたくて仕方ない人が多い。実際に問い合わせも多いですよ。今、林業は良い意味で爆発寸前の産業だと思っています。
正直、意外だった。
三浦:木を切ることだけが林業じゃない。屋久島が良い例で、縄文杉を見にたくさんの観光客が訪れます。三重県にも良い森林はたくさんあるんです。美杉では森林セラピーに取り組んでいるけど、そういった観光資源と掛け合わせて、外国人観光客を呼び込むことだってできます。
三浦:他にも林業の可能性はあります。例えば、今、私が取り組んでいるのは「杉茶」です。
杉茶とは、100本に2〜3本できる黒い杉を乾燥させ、プレート状にカットしてお湯で戻していただくお茶。
おそるおそる飲んでみる。
―あっ、ルイボスティーの杉の香りバージョンみたいな感じ。効果効能は?
三浦:今、成分を京都大学で調べています。
―えっ・・・、まだ商品開発の途中なんですね・・・。
三浦さんの考えるとおり、林業を、観光や食品の観点から捉えれば、きっと可能性は開けると感じた。
−−−美杉にやってきた、現役大学院生の移住者。
三重大学大学院で微生物の研究をしている、織田(おりた)さん。
織田さんは和歌山の大学を卒業後、岐阜の大学院へ。その後愛知県で就職したが、以前研究してた微生物の研究を再び行うため、三重大学大学院に入った。
以前から田舎が好きだった織田さんだが、美杉に来た時には、さすがの織田さんも、ものすごい田舎に来たと感じたという。
現在、織田さんは研究の傍ら、まちおこしの仕掛人として活躍している。
きっかけは、若者不足の現実を目の当たりにしたことだった。
美杉のために何かできないかと考えていたときに、美杉がWOOD JOB!のロケ地に決まった。
その後、WOOD JOB!神去村青年団の団員として活動を続け、地域の魅力を発信したり、町の昔の写真を集めて発表会を開催したりしている。
織田:やはり何かしようとする時に、地元の人の力は不可欠。日頃からコミュニケーションをとっていると、「なんかやったんで」と協力してくれる。うれしいです。
―田舎に暮らす人の特長って何ですか。
織田:サラリーマンじゃないところ。たとえ本職がサラリーマンだったとしても、皆さん何か技を持っています。そういった技を少しずつお借りして、いろいろなイベントができることに感謝しています。
今年で大学院を卒業して、本格的に町おこしをしたいと語ってくれた織田さん。
最後に田舎に来てビックリしたことを聞きました。
織田:70歳を超えたおじいさんが、塀からジャンプしていたこと。あと、虫を叩くために80歳近いおばあちゃんが走っていたのも驚きでした。
今回の美杉の取材を終えて、いろんな移住のカタチを知った。
あれができなければダメなんてことはなく、個人の性格や、やりたいことに合わせて好きなところに移住する。
美杉はそんな温かい体温を感じる場所だった。
名松線が復活し、観光地として注目を集める美杉。
のどかだけど、ダイナミックな暮らしのある美杉。興味を持たれた方には、ぜひ一度訪れてほしい。
↓この記事もご覧ください。
映画WOOD JOB!の舞台でGOOD JOB!? ロケ地「美杉」のディープな魅力と移住のそれぞれのカタチ。〔Ⅰ〕
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