鳥羽の離島、4島をかけ巡る船旅! 1日で完全制覇できるのか!?

2020.10.8

グルメからエンタメまで 佐野 興平

伊勢志摩エリアの観光スポットといえば、伊勢神宮や鳥羽水族館などが有名ですが、伊勢湾に浮かぶ数々の離島も魅力の一つ。鳥羽市にある4つの有人離島は、定期船をうまく利用すれば1日で巡れると聞いて、弾丸ツアーを企画しました。実際に訪れて実感した、個性的な離島それぞれの見どころを紹介します。三重県の新たな魅力を発見する、ディスカバー離島ツアーへ出発!

<Index>
近い! 早い! しかし旅情は超盛り上がる! それが鳥羽の離島
スタートは歴史ロマンあふれる「答志島」から
小説「潮騒」の舞台にもなった恋人たちの聖地「神島」へ
日本最古の洋式灯台と海女さん文化が根付く「菅島」へ
フィナーレはあの超有名な文豪ゆかりの「坂手島」へ
離島で楽しむご当地グルメ「とばーがー」も

近い! 早い! しかし旅情は超盛り上がる! それが鳥羽の離島

三重県鳥羽市には4つの有人島があります。最大の大きさを誇る答志島(とうしじま)、名作の舞台にもなった神島(かみしま)、日本最古の灯台がある菅島(すがしま)、文豪ゆかりの坂手島(さかてじま)と、それぞれに個性あふれる島々を、鳥羽市営定期船を使って1日で巡ってみようというのが今回の企画。

出発の前に、まずは各島の特徴を知らねばということで、鳥羽市役所 企画財政課企画経営室の木下翔平(きのした しょうへい)さんに島の情報を教えていただきました。

木下さんが手に持っているのは、鳥羽市のご当地バーガー「とばーがー」(実食レポートはのちほど)のマスコットキャラクター「トパティ」。ジュゴンとハンバーガーがモチーフになっているそうです。

「4つの島にはそれぞれ個性的な祭りがあるんですよ」と木下さん。「祭りには島が培ってきた歴史と文化が色濃く反映されています。島には、その祭りの名残を感じることができる場所もありますよ」。
観光スポットやグルメ巡りもいいですが、「祭り」をテーマに島を巡るというのも興味がそそられます。
「1日で4島巡るのは、かなりハードだと思いますよ」とのお言葉をいただきましたが、それだけにチャレンジする価値があるはず。早速行ってみましょう!

スタートは歴史ロマンあふれる「答志島」から

今日の予定は答志島、神島、菅島と巡り、一旦夕方に鳥羽に帰着。そこから坂手島を往復します。日暮れまでにラストの坂手島へ行こうと思うと、三番目の菅島での滞在時間が約1時間しかないことに…。ぜひ行ってみたい「菅島灯台(すがしまとうだい)」までは、港から徒歩約30分かかるとのことなので、時間的にかなりギリギリなのが気がかりです。

チケットと時刻表。答志島、神島、菅島を巡る周遊券は大人1,480円(税込み)で4日間有効です。

午前8時前、鳥羽市・佐田浜(さだはま)の鳥羽マリンターミナルへやってきました。まずは答志島の「答志(とうし)漁港」へ向かいます。

乗船する船は、第二十七鳥羽丸。空は今にも降り出しそうな曇天(どんてん)…と思ったら雨が落ちてきました。

午前8時23分、答志島に到着。次の神島へは、ここから徒歩20分ほどの「和具(わぐ)漁港」から午前11時5分発の船に乗ります。約2時間30分で、答志島をじっくり探検してみましょう。

歩いていたら、民家の壁に、丸の中に数字の「八」を書いた不思議なマークを見つけました。

出発前に木下さんに教えていただいた「マルハチ」マークです!
わりといたるところに書かれていて、たくさん見つけることができました。答志島では、毎年1月、「八幡神社(はちまんじんじゃ)」で大漁を祈願する「八幡祭(はちまんまつり)」が行われます。祭りでは、消し炭とふのりで作られた神聖な「お的(まと)」を島の男性たちが奪い合い、奪った「お的」を持ち帰って、家の壁や船などに丸の中に「八」の字を書くそうです。それが、このマーク。大漁祈願や魔除けなどの願いがこめられています。

写真中央で男性らが運んでいるのが「お的」。サイズは畳一枚半ほどもあります。
写真提供:鳥羽市

さらに、島の北部にある「美多羅志神社(みたらしじんじゃ)」へ。創立年代は不明だそうですが、江戸時代に建築物の梁などに貼り付けた棟札(むなふだ)や、貴重な獅子一対(ししいっつい)の像、古文書(こもんじょ)などが保存されている由緒ある神社です。こちらの境内には、龍に見えるシイの木があるとのことですが……。

発見! ほら、龍の顔に見えますよね。自然が偶然に作り出した不思議な姿にちょっぴり感動を覚えます。

その後、戦国武将の九鬼嘉隆(くき よしたか)の首塚と胴塚へ行ってみます。首塚まで550mの案内板があったので、すぐだと思ったのですが、けっこうな坂道を登ることに。

30分ほど歩いて、首塚に到着。「見晴らし場」という案内板に導かれて行ってみるも、植物が生い茂って何も見晴らせませんでした。残念。めげずに山道をアップダウンして胴塚へも行ってきました。
首塚、胴塚は、思ったより「山登り感」が強かったのですが、これ以降の島でも登りがたくさんあることを、この時点では知るよしもなく……。

「和具(わぐ)漁港」に到着する頃、徐々に天気が回復。出発の時間まで、近くにあった「和具サンシャインビーチ」などを散策します。曇り空でわかりにくいですが、透明度の高いきれいな海。黄褐色の砂浜も特徴的です。

このほか答志島には、「岩屋山(いわややま)古墳」「蟹穴(がにあな)古墳」など史跡も点在しているそうです。また、「島西側の桃取は夕陽が美しいことと、『桃こまち』という、甘みが強くプリっとした食感のカキが取れることで有名なんですよ」と木下さんが教えてくださいました。カキの旬は11月頃だそう。焼きガキが食べられるお店もあるので、その時期に訪れるのもいいかもしれません。

小説「潮騒」の舞台にもなった恋人たちの聖地「神島」へ

午前11時5分、和具漁港を出て、神島へ。ところどころ青空が見えるものの、海はけっこううねりがあり、船もまぁまぁ揺れました。前方に見える神島には、まだ雲がかかっていますね。

神島に到着。港にはこんなモニュメントが。「神島」は三島由紀夫(みしま ゆきお)の名作「潮騒(しおさい)」の舞台であり、映画化の際にはロケも行われています。

ロケが行われた場所を示した地図もありました。歩いて約2時間のコースになっていて、近畿自然歩道にも指定されています。神島の滞在予定時間は約4時間30分、のんびり行ってみましょう!

正午過ぎにスタート。まずは「潮騒」にも登場した、かつて洗濯場として使われていた水路へ。映画では、海女さんたちの井戸端会議の場として描かれていたそうです。

こちらが「八代神社(やつしろじんじゃ)」の鳥居。本殿は214段の階段を登った高台にあります。古墳時代から室町時代にかけての宝物100点以上が保管されているという歴史ある神社です。ここからさらに「神島灯台(かみしまとうだい)」をめざします。

「神島灯台」へは、こんな坂道が続きます。天気が回復したこともあって、もう汗びっしょり。普通のシャツにジーンズ、革靴という姿で来てしまったので汗だくになってしまいましたが、みなさん神島にお越しの際は、動きやすい服装とスニーカーなどがオススメです!

やっと「神島灯台」が見えてきました。明治43年、日本で最初に白熱電灯を使用して点灯されたそう。平成10年に「日本の灯台五十選」にも選ばれています。かなり登ってきただけあって、見晴らしもよく、なかなかのビュースポットです。
実は神島全体が「恋人の聖地」となっていて、この灯台には認定プレートも設置されています。映画「潮騒」では、ラストシーンで主役の2人のハッピーエンドの舞台になっているそうで、そこから恋愛成就のスポットとして選ばれたのでしょうか。

途中で立ち寄った「ニワの浜」のカルスト地形。むき出しの石灰岩が、青い海に映えます。自然の雄大さを感じられる絶景スポットでした。ほかにも、映画のロケ地である戦時中の施設「監的哨跡(かんてきしょうあと)」、「古里の浜(ごりのはま)」などを巡りました。

こちらが「監的哨跡」。映画「潮騒」ではクライマックスシーンに描かれています。

「古里の浜」に到着。静かな海ですが、意外と潮の流れが速く力強い波が打ち寄せます。
約2時間の島巡りを終えて、午後2時すぎに港へ。まだ次の船まで2時間近くあるので、近くのお店でかき氷をいただいたりして、ちょっと休憩することができました。

写真提供:鳥羽市

神島の代表的な祭りといえば「八代神社」で行われる「ゲーター祭」。元旦の夜明け前に、グミの木を束ねて作った白い輪を竹で差し上げて落とすという珍しいお祭り。過疎に伴い「宮持ち(みやもち)」と呼ばれる祭主の成り手がおらず、準備を手伝う若者も減ったため、2018年以降祭りは行われていないそうです。この白い輪は、祭礼後に先ほどの「八代神社」に奉納されます。

日本最古の洋式灯台と海女さん文化が根付く「菅島」

午後3時50分、神島に別れを告げ、3つめの島である菅島へ向かいます。菅島到着は午後4時15分の予定。午後5時20分「菅島」発の船に乗るのが目標なので、滞在時間は1時間強の予定です。

菅島で、絶対に行っておきたいスポットが、日本一古いレンガ造りの洋式灯台「菅島灯台(すがしまとうだい)」。そして「しろんご祭」が行われる「しろんご浜」です。地図では、港から「しろんご浜」まで、1.7km30分。そこから「菅島灯台」まで0.7km10分との記載がありました。ということは菅島灯台まで往復すると80分…。果たして帰りの船には間に合うのでしょうか…と不安になりつつ、下船してから、とりあえず先に菅島灯台をめざして歩き出します。

午後4時40分頃、「菅島灯台」に到着しました! レンガ造りの灯台としては日本最古のものだそう。建設は工事用のレンガを作るところから始められたそうです。すぐ脇には登録有形文化財のプレートも設置されていました。

青い海と空に映える真っ白な灯台。中には入れませんが、周りをぐるりと一周できるようになっています。ひぐらしの声を聞きながら風に吹かれて癒やされるひととき。でも、のんびりしている場合ではありません。滞在時間5分で引き返します。

「しろんご浜」に到着しました。本当に静かで、人もいなくて、波の音が聞こえるのみ。現在、午後5時少し前。さぁ、あと20分で1.7km歩かなければ。

写真提供:鳥羽市

菅島の祭りとして有名なのが、この「しろんご浜」で行われる「しろんご祭」という海女さんのお祭り。通常は禁漁の「しろんご浜」で、雌雄一対(しゆういっつい)のあわびを最初に獲った海女さんが、海女頭(あまがしら)として1年間崇(あが)められるというもの。2020年は残念ながら行われませんでしたが、鳥羽市の無形民俗文化財にも指定されています。

途中、小走りしたりもしながら、なんとかギリギリ間に合いました。午後5時20分に菅島を出ます。もうすっかり夕暮れの雰囲気。

フィナーレはあの超有名な文豪ゆかりの「坂手島」へ

午前8時の出港からおよそ9時間30分後。西日に照らされる佐田浜の鳥羽マリンターミナルに戻ってきました。最後の坂手島へは午後6時5分発の船で向かいます。ちなみに乗船代は片道220円(税込み)です。

本土の中之郷桟橋(なかのごうさんばし)を経由して、午後6時28分、いよいよ坂手島に到着です。鳥羽港からの距離は約600mという近さ。ここはあの江戸川乱歩の妻、隆(りゅう)さんこと村山隆子(むらやま りゅうこ)さん生誕の地です。

こちらが隆さんの生家である村万商店(むらまんしょうてん)の跡。2008年頃までは、お酒やコメなどを売る「よろず屋」のようなご商売をされていたそうです。鮮やかなピンク色の壁から、にぎわっていた当時の雰囲気が感じられます。

村万商店から坂を上り、高台にある旧坂手小学校(きゅうさかてしょうがっこう)へも足を運びました。ここは隆さんが教師をしていた学校。3階建ての立派な校舎ですが、子どもたちが減って、今は廃校になっているそうです。
作家になる前、いっとき鳥羽造船所で働いていたという乱歩。造船所の同僚たちと「鳥羽おとぎ会」を結成し、鳥羽市周辺の小学校をまわって、音楽会、読書会、講演会などをしていたそうです。その頃、坂手小学校で教師をしていた隆さんに出会ったとか。なかなか、ロマンチックなエピソードですね。

写真提供:鳥羽市

「坂手島」の祭りといえば「棒練り(ぼうねり)」。五色の飾りをつけた2mほどの棒を持ち、くるくる回しながら町を練り歩きます。棒は山車の車輪に見立てたものとされ、路地が狭くて山車が通れない「坂手島」特有の祭りです。鳥羽市の無形民俗文化財にも指定されています。
300年以上続いてきた歴史ある祭りですが、高齢化が進み担い手が不足したことから存続が厳しくなり、2015年を最後に行われていないそうです。

午後7時56分、すっかり夜になった坂手島を出ます。菅島で船に乗り遅れていたら、坂手島につくのが午後7時を回っていたはず。村万商店や小学校の写真が撮れなかったと思うと、改めて間に合ってよかった、と胸をなでおろします。

いよいよこの船旅もフィナーレ。ライトアップされた鳥羽マリンターミナルが迎えてくれます。市街地の明かりが少なく、真っ暗な海にうつるライトが美しいです。ちょっと感動的!

午後8時6分、鳥羽マリンターミナルに到着。12時間かけて、4島を巡った弾丸ツアーの終了です。
ちなみに、今回は午前8時に鳥羽マリンターミナルを出発して、ラストに坂手島を巡るコースにしましたが、早朝に坂手島に行くというパターンでも1日でまわることは可能です。

今回の行程を一覧でまとめてみました。
8:00 鳥羽(佐田浜)発 → 8:23 答志島着(和具港まで徒歩20分)
11:05 和具発 → 11:25 神島着
15:50 神島発 → 16:15 菅島着
17:20 菅島発 → 17:35 鳥羽(佐田浜)着
18:05 鳥羽(佐田浜)発 → 18:28 坂手島着
19:56 坂手島発 → 20:06 鳥羽(佐田浜)着

駆け足で巡りましたが、各島の個性あふれる魅力を感じることができました。また、各島はアップダウンが多いですが、整備された道がほとんど。ちょっとした山登り気分も楽しめます。
どの島にも宿泊施設がありますし、周遊券も4日間有効。どこかの島に泊まって、のんびりと島巡りをしても十分楽しめそうです。鳥羽市から気軽に行ける距離なのに、のんびりした島時間の中に非日常を感じられるのが離島のいいところ。三重県の新たな魅力を発見しました。

離島で楽しむご当地グルメ「とばーがー」も

最後に、島巡りの際、ぜひ覚えていてほしいのが、「とばーがー」。地元食材にこだわった鳥羽市のご当地グルメとして、町おこしにも一役買っていて、答志島、神島、菅島にも、タコ、ジャコ、アジなど使った個性的な「とばーがー」があります。予約の有無や販売時期などが変更することがあるので、事前に鳥羽市役所の観光課に確認を。
※現在、新型コロナウイルスの影響などで販売を休止している場合があります。

「神島」のたこかつバーガー。新鮮な地ダコをふんだんに盛り込んだタコかつに、マヨネーズソースがたっぷり。タコの甘味がしっかり感じられます。

(掲載情報は、すべて2020年9月時点のものです)

<今回の取材先はこちら>
鳥羽市役所 企画財政課企画経営室
住所:鳥羽市鳥羽3-1-1
電話:0599-25-1101
URL:https://www.city.toba.mie.jp/
鳥羽市営定期船
住所:鳥羽市鳥羽1-2383-51
電話:0599-25-4776(定期船課管理係)
URL:https://www.city.toba.mie.jp/teikisen-kanri/unkou.html
とばーがー
住所:鳥羽市鳥羽3-1-1
電話:0599-25-1157(鳥羽市観光課)
URL:https://www.city.toba.mie.jp/kanko/tobarger/