世界的なホテルとも連携! 個性輝く東紀州エリアの「道の駅」

2021.1.22

フードライター 高田強

ドライバーの休憩スポットとして人気の道の駅。休憩スペースやレストラン、お土産店などがあるのが定番ですが、近年、それに加えてエンターテインメント感のある施設が増加中。三重県にも多彩な道の駅があり、特に東紀州エリアには個性的な施設が点在しています。御浜町(みはまちょう)の「道の駅 パーク七里御浜(しちりみはま)」は、2020年10月、隣接して「マリオット・インターナショナル」運営のホテルがオープンし、施設としての魅力がパワーアップ。新たな観光拠点として注目される東紀州エリアの道の駅をピックアップして紹介します。
※記事中の価格は税込み

INDEX
・みかんの町の道の駅がパワーアップ!
・マリオット・インターナショナルが道の駅と連携したホテルをオープン!
・みかんやみかんを使ったお菓子が多彩にそろう道の駅
・【体験する】館内の工場で作ったジュースを販売
・【買う】売れ筋はみかんを生かした商品
・【食べる】七里御浜が目の前に広がるレストランでご当地グルメランチ!
・地元情報が手に入る案内所も誕生
・まだある東紀州エリアの個性的な道の駅

みかんの町の道の駅がパワーアップ!

三重県の東紀州エリアは、世界遺産に登録された巡礼の道「熊野古道(くまのこどう)」のほか、「鬼ヶ城(おにがじょう)」「花の窟神社(はなのいわやじんじゃ)」など自然が作り出す美しい観光スポットが点在している地域です。
中でも、熊野灘(くまのなだ)をのぞむ御浜町は気候が温暖で、さまざまな種類のかんきつ類を栽培し、「年中みかんがとれる町」として知られています。また、御浜町にある「道の駅 パーク七里御浜」の施設名にもなっている「七里御浜」は、熊野市から御浜町を経て紀宝町(きほうちょう)まで3市町に渡って続く海岸です。

約22kmの日本で一番長い砂礫(されき)海岸として、「日本の渚百選」や「21世紀に残したい自然百選」にも選ばれている景勝地(けいしょうち)です。「パーク七里御浜」はこの海岸のすぐ向かいにあります。

マリオット・インターナショナルが道の駅と連携したホテルをオープン!

2020年10月12日にオープンした「フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜」。「積水ハウス株式会社」とアメリカの「マリオット・インターナショナル」が展開する新たな取り組みで、全国の道の駅に隣接したホテルを拠点に、新しい旅のかたちを提案する「Trip Base(トリップベース) 道の駅プロジェクト」の一つとして開業しました。同時期に、岐阜県や京都府など全国8ヶ所に同じコンセプトのホテルがオープンしています。支配人の清水瑞人(しみず みずひと)さんに、お話を伺いました。

◇「Trip Base 道の駅プロジェクト」とは?
清水さん「国内の各自治体と連携し、『道の駅』を拠点にした新しい旅を提案する地方創生事業です。そのファーストステージとして、ロードサイド型ホテルを5府県15ヶ所でオープンし、その後、順次全国に展開していく予定です」

◇「道の駅」とはどう連携していくのですか?
清水さん「ホテルは宿泊施設として特化。食事やお土産などは『道の駅』をはじめとした地域のお店をご利用いただくことで、地域に根差した観光資源を、地域コミュニティと協力しながら、旅行者に提供していけたらと考えています」

◇宿泊特化型ということで、お部屋も施設もすごく効率的な造りですね
清水さん「シンプルな造りにして、ゆったりくつろいでいただけるおもてなしを心がけています。ただ、連泊のお客様も多いので、コインランドリーを利用しやすくしたり、近隣のお店で購入した食品などを食べていただけるようロビースペースを広くしたりと、必要なものはしっかり用意しています」

同プロジェクトのホテルは、ロビーや部屋の内装は全国共通ですが、装飾品などは、その土地らしいものを飾っているとのこと。「フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜」のロビーには、紀州藩(きしゅうはん)が編纂(へんさん)した地誌「紀伊続風土記(きいぞくふどき)」などの本がディスプレイされていました。

熊野市の「丸山千枚田(まるやませんまいだ)」など近隣エリアの観光スポットの写真が飾られたギャラリーも

各部屋の広さは平均約25㎡。分厚いマットレスのベッド、無料の高速Wi-Fi、厳選したアメニティなどが特徴です。また、バス・トイレは別ですが、部屋のスペースを効率的に使うため、浴槽はなくシャワーのみ。洗面所がアイランドスタイルなのも斬新ですね。

室内を広く使うため、スライド式の間仕切り(写真中央のグレーの扉)で自由に仕切れるのも特徴的。昼間は開け放して開放的に、就寝時は閉めることで廊下の音などをシャットダウンしてくれます。

フロントの奥には、ゆったりと過ごせそうなロビースペース。道の駅で購入したご当地グルメなどは、ここで味わうこともできます。

共有スペースにはコーヒーなど無料のドリンクも用意してあり、キッチンも自由に利用することが可能

フロントの横では、スナック菓子やインスタントラーメンなどを販売。館内でのすべての支払いは、現金ではなく、クレジットカードまたは電子マネーになっていて、フロントで支払いをします。

◇こちらのホテル独自の魅力はなんですか?
清水さん「なんといっても眺望ですね。客室の窓から七里御浜の海岸が見渡せて、水平線から昇ってくる朝日は最高だとお客様からも好評です。御浜町は自然が豊かで、海の幸も山の幸も堪能していただける町なので、地域の魅力を存分に満喫するディープな旅を楽しんでほしいですね」

(写真提供:フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜)

みかんやみかんを使ったお菓子が多彩にそろう道の駅

隣接したホテルに泊まるという新たな楽しみ方が増えた「道の駅 パーク七里御浜」。その魅力を「体験する」「買う」「食べる」に分けて徹底的に分析していきます。

たくさんの観光客が訪れる景勝地「七里御浜」。国道をはさんで向かい側にある同施設には、レストランやスーパー、衣料品店などが入店し、お土産から生活必需品まで幅広く揃います。

【体験する】館内の工場で作ったジュースを販売

この道の駅で一番の注目は、みかんジュース。なんと、館内にみかんジュース工場を併設。道の駅が地元で採れたみかんを買い受け、ジュースとして生産しています。工場が3階にあり、一般の来館者も窓越しに見学が可能。タイミングが合えばジュースができあがる場面が見られます。ちなみに、ジュース作りの作業は午前中が多いそうです。

次々と生産される100%ストレート果汁のみかんジュース

できあがったジュースは館内で販売。常時複数のみかんジュースを販売していて、取材時はカラマンダリン、ぽんかん、温州(うんしゅう)みかん、不知火(しらぬい)、紅甘夏(べにあまなつ)、セミノールの6種類でした。

【買う】売れ筋はみかんを生かした商品

こちらで約20年働くスタッフの崎久保光代(さきくぼ みつよ)さんに、こちらの道の駅について伺いました。

◇こちらの道の駅の歴史は長いんですよね
崎久保さん「1988年オープンですから、30年以上前ですね。みかんを全面に打ち出した今のスタイルになったのは、14年ほど前です」

◇“年中みかんのとれる町”の意味は?
崎久保さん「いろんな品種のみかんを栽培しているのはもちろんなのですが、ハウスものや“早生(わせ)みかん”、“超早生(ちょうわせ)みかん”など、季節を問わずいつでもみかんがとれることからも、そう言われています」

◇それをジュースにして販売しているんですね
崎久保さん「周辺の農家さんからみかんを仕入れて、自社ブランドのジュースを作って販売しています。また、農家さんから託されたみかんをジュースにして受託販売もしています。受託販売分は、『はっさく』や『麗紅(れいこう)』など、ウチにはない品種のみかんもありますので、館内では、さまざまな種類のみかんジュースが購入できます」

◇地元農家が生産された野菜や果物も販売されていますね
崎久保さん「施設内の『浜街道(はまかいどう)』では、地元でとれた新鮮な農産物や、熊野灘で水揚げされた海産物、調味料、加工食品などを販売しています」

みかんに次ぐ特産品の南高梅(なんこううめ)も良く売れるのだそう

崎久保さんにお聞きした人気商品をチェックしていきましょう。

ふわふわのブッセにみかんクリームをサンドした「七里御浜のころころ」(5個入り・850円、10個入り・1,600円)
みかんクリームが特徴の「南紀みかんサンドクッキー」8個入り(1,188円)5個入り(756円)

クッキーの塩バタ―味と、爽やかなみかんクリームとの味わいのコントラストが魅力。冷やして食べてもおいしいです。

「紀州南高はちみつ梅」(300g・1,041円)

館内では、いろいろな生産者の梅干しを販売。しそ梅や小梅などもありますが、はちみつ梅は、老若男女問わず人気だそうです。

「みかんジュース ポンカン」(720ml・880円、200ml・330円)

定番の温州みかんと比べて味の濃厚さが魅力のポンカン。香りの良さとしっかりとした甘みを楽しめます。

「みかんジュース 目覚めのセミノール」(720ml・880円、200ml・330円)

ほどよい酸味が特徴のセミノール。この道の駅でのオススメの飲み方はなんとビール割り。ビール7割、セミノールジュース3割がオススメで、フルーティなビールが味わえます。

【食べる】七里御浜が目の前に広がるレストランでご当地グルメランチ!

館内の3階、ジュース工場のそばにある「ごちそうダイニング by 辻さん家」。海鮮を中心としたご当地料理などが楽しめるレストランです。現在は、土・日曜、祝日のランチタイムのみの営業となっています。

七里御浜の目の前という好ロケーションを生かし、海側を全面ガラス張りに
テラスもあり、潮風を感じながら、長く続く海岸線や水平線を見ることができます。(写真提供:道の駅 パーク七里御浜)
ランチのオススメは「めはり・さんま寿司定食」(1,100円)

「さんま寿司」と「めはり寿司」、ミニうどん(そば)、小鉢がセットになっていて、郷土料理の「さんま寿司」と「めはり寿司」を1度に味わえることから観光客に喜ばれているそうです。

メインの「さんま寿司」は三重県の志摩半島から和歌山県まで続く熊野灘沿岸一帯でポピュラーなさんまの押し寿司。開いて軽く塩をふり甘酢に漬けたさんまと、酢飯のバランスが最高です。紀州エリアで広く愛されている、高菜で包んだおにぎりの「めはり寿司」も満足度大。

ほかに、「鮪(まぐろ)丼」(1,320円)や「しらす丼」(1,100円)、「海老フライ定食」(1,320円)、「ヒレカツ定食」(1,430円)などをラインナップ。館内の工場で搾った「みかんジュース」(440円)も味わえます。

※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、営業時間が変更になる場合があります。HPやFacebookで確認してからお出かけを。

地元情報が手に入る案内所も誕生

2020年6月7日にオープンした「七里御浜ツーリストインフォメーションセンター」

道の駅の駐車場横に現れたスタイリッシュな建物内には、御浜町や周辺エリアのパンフレットや資料がズラリ。日中はスタッフが常駐しているので、熊野古道の情報や現地に行かなければ知り得なかった観光情報などもここで入手できます。

テーブルとイスが用意されているので、ちょっとした休憩や観光の構想を練ることができるのもありがたいですね。また、平日1日1,000円、土日祝1日3,000円でクロスバイクタイプの電動アシスト自転車をレンタルすることも可能(ノーマルタイプの電動アシスト自転車:平日1日500円、土日祝1日1,500円もあります) 。また、同センターの隣でも、みかんなどの地元農家の農産物を販売しています。

「道の駅 パーク七里御浜」を利用する観光客の多くは、近くにある「熊野古道」が目的。さらに周辺に点在する観光スポットも巡っているとのこと。そうした観光スポットに加えて、新たな魅力が、この御浜町にプラスされた感じがしました。
また、道の駅から南へ10㎞ほど行けば、和歌山県との県境。江戸時代はこのあたりも紀州藩だったとか。現在の熊野市には紀州藩の代官所があったことから、魚をさばくのも、切腹を連想させる「腹開き」や頭を落とすことは避けられています。そんな地元の風習から「ごちそうダイニング by 辻さん家」の「さんま寿司」のさんまは「背開き」。三重県と和歌山県の文化が融合したこのエリアで、ホテルに連泊してじっくり過ごせば、ディープかつ新鮮な発見ができるのではないでしょうか。

まだある東紀州エリアの個性的な道の駅

「休憩する」だけじゃない! 大人も子どもも楽しめる東紀州エリアの道の駅をピックアップしてお届けします。

道の駅でウミガメと触れ合える!

(写真提供:道の駅 紀宝町ウミガメ公園)

三重県南部のウミガメ保護・啓発活動の拠点でもあるのが「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」。施設内にある入館無料の「ウミガメハウス」では、大きなプールで泳ぐウミガメに出会えるほか、資料館でウミガメのことを勉強することもできます。土・日曜、祝日には、ウミガメに触ることができるカメタッチングを開催。また、アンテナショップでは、ウミガメ公園限定のかわいいウミガメグッズなどを販売しています。もちろん、道の駅らしく、みかんなどの農産物や海産物も販売。

館内の「アンテナショップ」には、ウミガメグッズがズラリ(写真提供:道の駅 紀宝町ウミガメ公園)
(写真提供:道の駅 紀宝町ウミガメ公園)
土・日曜、祝日には、ウミガメに触ることができるイベント「カメタッチング」を開催

施設名:道の駅 紀宝町ウミガメ公園
住所:南牟婁郡(みなみむろぐん)紀宝町井田568-7
営業時間:物産館  8:30~18:00(3~10月は19:00まで)
ウミガメハウス 9:00~18:00
駐車場:バス5台、普通車44台
電話:0735-33-0300
https://umigamekouen.com/

美味&珍味なマンボウを味わえる!

ご当地の名産「尾鷲(おわせ)ひのき」の形をイメージした、緑色の大きな三角屋根が連なった個性的な外観の「道の駅 紀伊長島(きいながしま)マンボウ」。館内には、海産物やその加工品が充実しています。注目は、「マンボウの唐揚げ」や「マンボウのナゲット」、「マンボウのみりん干し」など、珍しいマンボウの加工品(仕入れ状況により販売していないこともあります)。土・日曜、祝日には、施設の外にある屋台で、独特の食感が楽しい「マンボウの串焼き」が味わえます。

館内には海鮮を中心とした特産品がいっぱい
屋台では、目の前で「マンボウの串焼き」を焼いてくれます

施設名:道の駅 紀伊長島マンボウ
住所:北牟婁郡紀北町東長島2410-73
営業時間:物販 平日 8:15~18:00、土・日曜、祝日 8:00~18:00
     食堂  9:00~15:00
     マンボウ屋台 9:00~16:00(土・日曜、祝日のみ)
駐車場:バス5台、普通車80台
電話:0597-47-5444
http://42manbou.com/

紀北産の農産物や農産物を利用したカフェメニューが味わえる!

(写真提供:道の駅 海山)

2020年5月にオープンしたばかりの「MYM(えむわいえむ)カフェ」やレストランのほか、特産品直売所や休憩・情報コーナーを備える「道の駅 海山(みやま)」。運営するのは農場を経営する株式会社デアルケ。地元で採れた新鮮な野菜を使ったカフェメニューや、加工品の販売が充実しています。カフェの名物メニューは高級で珍しい「フルーツホオズキ」を使用したドリンク「フィサリスミルク」や、トマトとリンゴを混ぜ合わせた「トマップルジュース」。レストランでは、「さんまたつた丼」や「まぐろ丼」なども人気。紀北町の魅力を存分に体感できます。

たくさんの植物がディスプレイされたカフェにはテラス席も(写真提供:道の駅 海山)
(写真提供:道の駅 海山)

「ローストビーフ」や「さんまタツタ」などの「オリジナルミニドッグ」(2本・470円)が人気。写真は「ランチプレート(チキン)」880円で、ミニドッグは「えびアボカド」と「タコス」。+200円でコーヒーまたは写真のハニートマトのスムージーをつけることも。

施設名:道の駅 海山
住所:北牟婁郡紀北町相賀1439-3
営業時間:9:00~17:00
駐車場:バス8台、普通車24台
お問い合わせ:0597-32-3553
https://michinoeki-miyama.com/

休憩する以外にも楽しみ方が広がっている道の駅。今回は、特に個性的な道の駅が多い東紀州エリアをピックアップしました。観光スポットだけでなく、道の駅も目的地にしてみると、新たな発見がありそうですね。

掲載情報はすべて2020年11月時点のものです。

今回紹介した施設はコチラ
道の駅 パーク七里御浜
住所:南牟婁郡御浜町大字阿田和4926-5
営業時間:インフォメーション 9:00~17:30(日曜日は17:00まで)
浜街道 9:00~17:30
ごちそうダイニング by 辻さん家 ※Facebookで確認を
駐車場:バス6台、普通車250台
電話:05979-2-3600
https://www.michinoeki-mihama.com/
https://www.facebook.com/michinoeki.parkshichirimihama/
※営業時間が変更になる場合があります。Facebookで確認の上、訪問してください。

フェアフィールド・バイ・マリオット・三重御浜
住所:南牟婁郡御浜町阿田和6115-13
電話:05979-2-3301
https://www.marriott.co.jp/hotels/travel/ngofm-fairfield-mie-mihama/
七里御浜ツーリストインフォメーションセンター(TIC)
住所:南牟婁郡御浜町阿田和6115-5
営業時間:開所時間は9:00~18:00(無休)
電話:05979-3-0333