伊賀市発、大人もハマる手裏剣競技!その魅力に迫る

2021.8.6

旅行大好き ぐーたらライター 宮崎優子

忍者といえば、思い浮かぶのが手裏剣。忍者ショーや、折り紙で作ったおもちゃなど、どちらかといえば子ども向けの遊びというイメージを持っている人も多いのでは。しかし今、そんな手裏剣にハマる大人が増えているって知っていましたか?そのきっかけでもある手裏剣の競技会は、なんと伊賀市が発祥。開催に至った経緯や魅力を、大会の関係者にインタビュー。ライターが実際に手裏剣体験をして、その面白さも伝えます。

Index
・当たった瞬間が爽快!手裏剣打ちに挑戦
・誰もが楽しめる競技として進化した手裏剣
・現役忍者も参加!大会はハイレベル化
・三重県で手裏剣打ち体験ができる施設はほかにも

当たった瞬間が爽快!手裏剣打ちに挑戦

競技として、参加人口が増えつつあるという手裏剣。まずは、どんなものか実際に体験しようと、本格的な手裏剣体験ができる伊賀市の「伊賀流忍者博物館(いがりゅうにんじゃはくぶつかん)」を訪れました。施設は「伊賀上野城(いがうえのじょう)」がある上野公園内にあります。

ちなみに、手裏剣は正式には「投げる」ではなく「打つ」というそうです。
初めて手にした手裏剣は、想像以上にずっしりと重く、正しい持ち方をしないとケガをすることもあるそう。
スタッフの方に手裏剣の正しい握り方と、打ち方をレクチャーして頂きました。上段の白黒の丸い的が大人用で、下段の赤白の四角い的は子ども用です。

左右好きな方の足を的に向けて立ち、手裏剣を頭の上に構えて下方へ打ち降ろす「本打ち」で打ちます。マンガなどで見たことのある、手裏剣を片手で持ち、横からスライドさせて打つ方法は「横打ち」と呼ぶそうです。

えい!!
おぉ~!!当たった!!!
的からは少しそれてしまいましたが、思った以上に良い感じに当たりました!!

手裏剣自体に重みがあるので、そんなに力を入れなくてもキレイに飛んでいきます。これなら腕力に自信がない人でも十分楽しめそう。何より狙ったところにズバっと刺さった時の爽快感がいい! 的の中心に当たるまで、何度も投げてしまいました。

簡単なポイントさえ教われば、意外とすぐできて、しかも当たるとうれしい。ずっと打ち続けたいくらい気持ちよくて、やめ時がわからなくなるほど。多くの大人がハマるというのも納得です。

手裏剣の競技大会とはどんなものなのでしょうか。そこで、大会運営に携わった伊賀上野観光協会 企画課長の安田聡志(やすだ さとし)さんにお話をうかがいました。

誰もが楽しめる競技として進化した手裏剣

忍者発祥の地として知られる伊賀市では、2008年度から2018年度までの10年間、伊賀上野観光協会主催で「伊賀流手裏剣打選手権大会(いがりゅうしゅりけんうちせんしゅけんたいかい)」が開催されました。大会当日は、伊賀市内をたくさんの人が訪れ、街全体が盛り上がったそうです。

(写真提供:伊賀上野観光協会)
お話を伺った安田さん。「伊賀流忍者博物館」の副館長でもあります。

◇大会を開催することになった経緯を教えてください
安田さん「2009年、伊賀上野観光協会が創立50周年を迎えるのをきっかけに、もっと手裏剣の魅力を広められる取り組みはないかと考えました。そこで企画されたのが手裏剣の競技大会。初の大会を、前年の2008年に開催することができたんです。大会には、もう一つ狙いがありました。三重県に伊賀流、滋賀県に甲賀流があるように、忍者には、全国に40を超える”流派”が存在しています。それぞれが独自に活動していて、他地域との交流の機会は、あまりありませんでした。そこでこの大会を、各地の忍者(流派)が繋がりを深め、みんなが共通の目標としてめざせるものにしていきたいと考えたんです」

大会の優勝者には純金製の手裏剣が授与されました。(写真提供:伊賀上野観光協会)
第6回(2014年)大会には、競技前の投てき式に伊賀市の岡本栄(おかもと さかえ)市長も忍者に扮して登場しました (写真提供:伊賀上野観光協会)

◇競技としてルール化されたポイントは?
安田さん「手裏剣の歴史を紐解くと、ただ戦うためのものではなく、『手裏剣術』という一つの武道として、技術が確立していたとされています。大会でも『手裏剣術』にならい、的に当たった点数だけでなく、投てき前に決められた所作を行い、その美しさや、込められた精神性なども評価の対象としました」

審査員が所作の美しさも厳しくチェック(写真提供:伊賀上野観光協会)

◇具体的にはどんなことを行うのですか?
安田さん「①手裏剣を審査員から6枚受け取り、投てき位置まで歩く。
②審査員に一礼した後、的に一礼する。
③的に向かって、忍者が精神集中の際に行う作法である九字護身法(くじごしんほう)を行う。
④手裏剣を5枚打ち込む(1枚は護身用に持っておくのが決まりで全部打ってしまうと減点)。
⑤的に一礼した後、審査員に一礼。
以上5つの動きを、競技者が独自の観点で解釈して披露します。ただし、すべてを3分以内に行わなければいけません。早すぎても時間がオーバーしても、減点対象になります」

◇「九字護身法」を具体的に教えてください
安田さん「忍術映画などで、印(いん)を結ぶ忍者を見たことはありませんか?両手を組む、または右手の人差し指と中指を刀に見立てて空中を切りながら、『臨・兵・闘・者・皆…』(りん・ひょう・とう・しゃ・かい…)と唱える動作で、『九字を切る』と言います」

◇大人が手裏剣にハマるのはなぜでしょうか?
安田さん「手裏剣って単純なようで、きわめようと思うと難しいんです。九字護身法も、さまざまな型があり、どれを行ってもOKですし、①から⑤までの動作は、風格や作法、個性なども採点の対象になります。正解があるわけではないところが、難しさの一つですね。また、手裏剣打ち自体も、観戦者や審査員が見ているというプレッシャーもありますし、会場が広いので、視覚効果で的がすごく小さく見えるという人もいます。過去の大会で優勝した人が、翌年の大会では全然点数が取れなかったなんてこともあるんですよ。思い通りにいかないからこそ真剣になるというか、ハマってしまう人が多いのかもしれませんね。そもそも、手裏剣打ちは、単純に気持ちがいいんです。サクッと的に刺さる瞬間は結構スカッとするので、ストレス解消にもなりますよ」

競技用の手裏剣。日本忍者協議会のHPから購入することもできます。

現役忍者も参加!大会はハイレベル化

2018年度まで伊賀上野観光協会が主催となって開催された「伊賀流手裏剣打選手権大会」ですが、2019年度からは、「日本忍者協議会」が運営を引き継ぎ、「全日本忍者手裏剣打選手権大会」として、より規模が拡大しています。ルールも九字護身法の難易度で点数に差を付けたり、トーナメント方式の導入、前夜祭のイベントとして行われていた団体戦を正式に競技種目の一つとして採用するなど、より複雑でハイレベルな大会に進化しています。

「全日本忍者手裏剣打選手権大会」のHPでは、模範演技の動画が掲載されています。こちらでは、競技の流れや手裏剣の打ち方の動作もわかりやすく説明されていますよ。
▼【全日本忍者手裏剣打選手権大会】模範演技の巻

最初は伊賀市だけで行われていた予選会でしたが、2009年の第2回大会からは、三重県外でも予選が行われ、2014年第5回大会からは東京都や大阪府、京都府、愛知県、佐賀県など全国7会場で行われました。2019年の第10回大会では海外(タイ・バンコク)予選も開催されています。

タイで行われた海外予選の様子(写真提供:伊賀上野観光協会)

さらに、全国の流派で修行を積み、”現役忍者”として活動している人の参加も増えてきているそう。最近では、関東地方のある流派から約100人もの”現役忍者”が参加しました。大会の規模も競技のレベルも上がり続けています。「日本忍者協議会」では、今後は海外に向けてのPR活動にも力を入れていくとのこと。伊賀市で生まれた手裏剣が、誰でも楽しめるスポーツ競技として、世界の人々に親しまれる日も近いかもしれませんね。

“現役忍者”も多数参戦(写真提供:伊賀上野観光協会)
トーナメント方式を導入し、さらに白熱した戦いに(写真提供:日本忍者協議会)
2020年度大会の入賞者(写真提供:日本忍者協議会)

「全日本忍者手裏剣打選手権大会」の参加方法ですが、中学生以上であれば「日本忍者協議会」のHPから申し込めば参加できます。各地で行われる予選大会に出場し、全国の予選ランキング上位48人に入れば本選出場資格を得ることができて、 予選大会は月1回を上限として何度でも参加することが可能。例年、予選大会は10月から12月までの期間に開催されているので、最新の情報は「日本忍者協議会」のHPでチェックしてください。

三重県で手裏剣打ち体験ができる施設はほかにも

「伊賀流忍者博物館」以外にも、三重県には手軽に本格的な手裏剣打ちが体験できる施設があります。まず「手裏剣打ちを体験してみたい」という人のために、ピックアップして紹介します。

自然豊かな秘境で忍者修行にチャレンジ!「忍者の森」(名張市)
三重県有数の景勝地(けいしょうち)・赤目四十八滝(あかめしじゅうはちたき)。その渓谷内にある「忍者の森」。こちらは伊賀忍者の祖・百地丹波(ももち たんば)が修行した地とされていて、自然の中で、本格的な忍者修行が体験出来るスポットとして人気です。
手裏剣打ち体験は、百地丹波が編み出した20を超える「伊賀流赤目忍術」(いがりゅうあかめにんじゅつ)の修行体験の中の一つ。木の的に向かって打つだけでなく、物陰から素早く飛び出したり、走りながら打ったりという高度な技の体験も出来ます。修行を終えると「免許皆伝(めんきょかいでん)の書」が贈呈(ぞうてい)されるので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

(写真提供:赤目四十八滝渓谷保勝会)

親子で一日楽しめる忍者テーマパーク「伊勢忍者キングダム」(伊勢市)
原寸大の安土城がシンボルの歴史テーマパーク。リアルRPGや「忍者森のアドベンチャー・伊賀忍者妖術屋敷」といった忍者アトラクション、温泉・グルメも楽しめる一大テーマパークです。

高さ43mの巨大な「安土城」がシンボル

こちらの手裏剣体験では、六方手裏剣(ろっぽうしゅりけん)や卍手裏剣(まんじしゅりけん)など5種類の手裏剣を打つことが出来ます。

無料レンタルできる忍者衣装に着替えれば、忍者気分が盛り上がること間違いなし!
的は鬼の顔。手裏剣が命中した数によって、様々な景品がもらえるそうです(写真提供はすべて伊勢忍者キングダム)

最初は「子どもの遊びの延長?」と思っていた手裏剣ですが、実際に体験してみるととても奥が深くて、ハマってしまう大人が多いのも納得しました。新たなスポーツとして、三重県で手裏剣打ちにチャレンジしてみませんか。手裏剣をきっかけに、忍者に興味が出てきたら、各施設で忍者の武器や暮らしぶりや歴史を学んで、知識を深めることもできますよ。(掲載情報は、すべて2021年8月時点のものです)

今回紹介した施設はコチラ
一般社団法人伊賀上野観光協会
住所:伊賀市上野丸之内122-4
電話:0595-26-7788
URL https://www.igaueno.net/

日本忍者協議会
住所:東京都台東区雷門2-17-8 山野浅草ビル6階
電話:0120-0248-22
URL https://ninja-official.com/

伊賀流忍者博物館
住所:伊賀市上野丸之内117 上野公園内
電話:0595-23-0311
開館時間:平日 10:00~16:00
     土日 10:00~16:30
※いずれも最終受付は閉館30分前まで
入館料:大人800円、小人500円
手裏剣打ち体験料金:6枚300円
URL https://www.iganinja.jp/

忍者の森
住所:名張市赤目町長坂671-1
電話:0595-64-2695(赤目四十八滝渓谷保勝会エコツアーデスク)
受付時間:9:00~17:00
入山料:大人500円、小中学生250円
忍者修行代金:大人3,000円、小中学生2,700円、幼児2,200円
URL https://www.akame48taki.com/ninja/

伊勢忍者キングダム
住所:伊勢市二見町三津1201-1
電話番号:0596-43-2300
営業時間:9:00~17:00
※温浴施設は平日 14:00~22:00/土日祝 12:00~22:00(いずれも最終入場21:00まで)
フリーパスポート:大人4,900円、中高生3,500円、小人3,000円
URL https://www.ise-jokamachi.jp/