サッカーチーム「ヴィアティン三重」とサポーターの”三重魂”が熱い!

2021.10.22

観劇から旅行まで、一人でどこまでも 上田芽依

三重県のサッカーチーム・ヴィアティン三重。ホームタウン(本拠地)は、桑名(くわな)市、いなべ市、東員(とういん)町、桑名郡木曽岬(くわなぐんきそさき)町、三重郡菰野(みえぐんこもの)町・川越(かわごえ)町・朝日(あさひ)町の2市5町。所属するリーグ・JFL(日本フットボールリーグ)で健闘し、ここ数年、三重県内でもJリーグ入りが近いと期待されているチームです。地域に密着した活動もさかんで、熱心なサポーターが多いことも特徴。キャプテンとしてチームをけん引する塩谷 仁(しおや じん)選手、地域貢献に力を入れる後藤大介(ごとう だいすけ)社長にインタビュー。2020年にオープンした公認サポーターズカフェも取材し、”三重魂”の合言葉のもと、チームを中心に熱く盛り上がる様子を紹介します。

“三重魂”で熱く盛り上がる「ヴィアティン三重」って知ってる?

 三重県北部の2市5町をホームタウンに持つサッカーチーム「ヴィアティン三重」。ここ数年で、所属するサッカーリーグJFLで順位をあげ、三重県内でのJリーグ入りが期待されているチームでもあります。
 ”三重魂”を合言葉にしたサポーターの応援が熱いのも特徴の一つ。ホームスタジアムである東員町の「朝日ガスエナジー東員スタジアム」で試合が行われる日は、オレンジのユニフォームに身を包み、フラッグを持った家族連れやグループが続々と訪れ、選手の活躍に熱心な声援を送る姿が見られます。そんな、ヴィアティン三重を、キャプテンとして牽引する塩谷仁選手にインタビューしました。

Jリーグ加盟をめざして一丸となるチーム

◇Jリーグ入りの期待が高まっていますが、意気込みを聞かせてください。
塩谷選手「三重県から初のJリーグ入りということで、常に1戦も落とせないという覚悟はあります。ヴィアティン三重の強みでもあるサポーター、スポンサー、地域のみなさんと共に戦い、ぜひとも昇格したいですね。チームも、シーズン前から『絶対昇格』という気持ちで、全員が一つになっています」

◇サポーターの印象はいかがですか?
塩谷選手「熱い気持ちで応援してくださっていてありがたいですね。負けが続き、チームの調子がよくない時、サポーターと会って挨拶したら『どんな状況でも応援するから』と言ってもらったのが印象的でした。そんな言葉を言わせてしまって悔しいけれど、本当に心強いなと感じました。また一昨年、まだコロナ禍前のこと、アウェーでの試合だったのに、ヴィアティン三重の方がサポーターが多くて、雰囲気がまったくアウェーじゃなかったんです。奈良県など、比較的近い競技場での試合なら、ヴィアティン三重のサポーターの方が多いことはよくありますよ。いつも最高の雰囲気でプレーさせてもらっています」

◇応援には家族で来られる方も多いそうですね
塩谷選手「幅広い世代の方々に応援してもらっています。特に、子どもさんに声をかけてもらえるとうれしいですね。ヴィアティンのサッカースクールで教えていた子が『塩谷コーチ!』なんて呼んでくれることも。僕が小さい時にプロ選手のプレーを見て将来の夢を描いたように、子どもたちに『塩谷選手みたいになりたい』と思われる選手になっていきたいですね」

◇みなさんにメッセージをお願いします
塩谷選手「Jリーグ昇格をめざし、チーム全体の気合も十分です。ヴィアティン三重を今まで知らなかった人もいると思いますが、まずは、一度スタジアムに来ていただいて、一緒に盛り上がる楽しさを味わってもらいたいですね。僕たちも、皆さんに笑顔でスタジアムをあとにしていただけるよう、勝利をめざして試合に挑みたいと思います」

地域ぐるみでスポーツに親しむ環境づくりを

ヴィアティン三重は、サッカーチーム以外にも、バスケットボールやバレーボールなどのチームを有する総合型スポーツクラブ。クラブ経営者であり、ヴィアティン三重の創業者でもある後藤大介社長にもインタビューし、地域やクラブへの思いをお聞きしました。

エンブレムの前に立つ後藤社長

◇ヴィアティン三重を設立したきっかけを教えてください
後藤社長「20代の頃、中国で起業したことがあり、海外から日本を見たときに、新興国に比べて活気が無いのではという危機感を感じました。そのことから、日本の将来を担う子どもたちへの教育や健全な体作りの必要性を感じ、スポーツ教育に取り組むようになったんです。まず、サッカーチームを作ろうと思ったのは、ヨーロッパに視察に行った時に、3世代が集い地域や暮らしにサッカーが溶け込んでいる様子が素晴らしいと感じたから。またバレーボールやバスケットボールなど、サッカー以外のスポーツチームの運営も行っているのは、子どもがスポーツを始めたいと思ったときに、さまざまな選択肢がある環境を用意しておきたいと考えたからです」

◇Jリーグ入りをめざした理由は?
後藤社長「Jリーグのチームが街に誕生すると、子どもたちに夢を持つ素晴らしさや、感動出来る喜びを伝えらえるし、経済効果も出て“まちづくり”にもつながります。サッカーチームを中心に、地域にスポーツコミュニティができあがり、そこでコミュニケーションやふれあいが生まれる。子どもたちの健全な成長にもつながっていくだろうと考えました」

◇準備も着実に進んでいますね
後藤社長「2020年には、将来的にJリーグ入りをめざす『Jリーグ百年構想クラブ』として、三重県で初めて承認されました。またJリーグ加盟にはさまざまな要件があり、その一つに基準を満たしたホームスタジアムの所有というのがあります。2020年には『朝日ガスエナジー東員スタジアム』の改修を完了し、ホームスタジアムとすることで、加盟の要件を満たしたとして『J3リーグライセンス』も公布されました」

◇改修資金はクラウンドファンディングも活用されたとか
後藤社長「ありがたいことに1000万円ほど集めることができました。スタジアムには出資者のネームプレートが設置されています。見るたびに改めて感謝しますし、その思いを忘れてはいけないと感じます」

「アサスタ」の通称で親しまれている朝日ガスエナジー東員スタジアム。収容人数は約5000人

◇地域貢献にも積極的に取り組んでいますね
後藤社長「スポーツの普及活動の一環として、イベントなどでのサッカー教室をはじめ、小中学校からのオファーに応じて、ボランティアのサッカー教室も行っています。また、サッカー以外でも、地域のために存在する意義として、地域の困りごとや社会問題を解決できるようになりたいと思っています。たとえば学童保育やこども食堂の数が足りないなら、うちが作って経営してもいい。スポーツクラブといっても、試合だけをやっていればいいわけじゃなくて、地域活性化のために、いろいろなことをやっていきたいですね」

◇最後にメッセージをお願いします
後藤社長「ぜひ一度でいいからスタジアムに試合を見に来てほしいですね。スタジアムグルメも有名なので、それを食べに来るだけでも楽しいはず。90分の試合を全部でなくても、前半だけ観戦するなどでも構いません。若い選手が頑張る姿は、誰が見ても応援したくなると思います。また、今、夢をもつ子どもが少ないと言われているけれど、選手たちが頑張っている姿を見せることで、夢を持つきっかけにしてもらえたらいいですね」

公認サポーターズカフェが東員町の文化センターにオープン!

東員町の中心部にある「東員町総合文化センター」に、2020年6月にオープンした「THE BOWL cafe(ザ ボウル カフェ)」。あちこちにサッカーグッズが飾られ、販売も。モニターからは試合映像が流れています。さらに、サッカーのユニフォームを着ている人もちらほら。ここは、「ヴィアティン三重」公認のサポーターズカフェなんです。スタジアムから徒歩10分と近く、試合のある日にはサポーターで埋め尽くされるそう。

センターを利用する誰もが気軽に立ち寄れる開放的な雰囲気
店内では応援グッズのタオルやTシャツが販売されているほか、選手ゆかりのアイテムも飾られています。
全選手の背番号とサイン入りの椅子

野菜から肉まで、地元食材たっぷりのメニューが自慢

チームの応援だけではなく、地産地消もテーマにしている同店。お米は東員町産のコシヒカリを使った雑穀米、野菜は東員町や周辺地域で農薬を使わずに育てられたもの、鶏肉は桑名市内でその日の朝に処理した新鮮なものを使うなど、すべて近隣で購入した食材を使用することにこだわっています。

そんな同店の一番人気は、店名にもなっているボウルメニュー。雑穀米の上に、たっぷりの野菜とお肉をのせ、そこにオリジナルドレッシングをかけていただきます。

ジューシーで弾力ある鶏肉のグリルをのっけた「ザ・チキンボウル」(980円)
柔らかく、あっさりとした脂身の三重のブランド豚「さくらポーク」を使用した「ザ・バラボウル」(1,180円)。写真右下の自家製ドレッシングは、野菜にも肉にも相性がよく、ドレッシング単体で販売してほしいという声も多いとか。

通常メニューのほか、選手とコラボした「プロデュース飯」や、桑名市の名産品ハマグリや東員町でとれた海苔を使った、期間限定ご当地メニューなども多彩に登場します。

チームだけでなく地域も盛り上げたい

カフェをプロデュースするのは、近藤 均(こんどう ひとし)さん。生まれも育ちも東員町の地元民

◇カフェのオープン前からヴィアティン三重に携わっていたのですか?
近藤さん「もともと、チームの映像制作に携わっていました。今も、撮影や編集をやっていて、店内のモニターで流れているのは、ほとんど僕たちが作った映像です」

◇オープンのきっかけを教えてください
近藤さん「僕は東員町の文化センター運営審議委員・社会教育委員もさせて頂いているのですが、文化センター周辺に飲食店がなくて、イベントのときなどに困るという声があることが、気になっていました。そんな中、ヴィアティン三重が東員町のスタジアムを改修して、ホームグラウンドにすることに。近くにチームグッズが買えたり、試合映像を見ることが出来たり、日常的にチームを身近に感じてもらえる場所があったらいいなと思い、ヴィアティン三重の後藤社長に相談しました。僕としては、生まれ故郷にサッカーチームのホームスタジアムが誕生するのは、とても喜ばしいこと。ここにグッズも販売するカフェができたら、地域とチームを繋ぐ場にもなりますし、センター利用者も便利になる。そんな思いから、カフェをオープンすることを決意したんです」

◇なぜ地産地消もテーマとして掲げるように?
近藤さん「今はネットで購入すれば、食材も安く簡単に手に入ります。でも、せっかくカフェがオープンするなら、東員町でお金が回る仕組みにしたいなと思っていたんです。JFLの中でも、特に後援会や協賛企業の数が多いヴィアティン三重。後援や出資してくれている農家さんや食材メーカーからすると、出資した金額に値する宣伝効果が得られないと、長く続けられないですよね。チーム、サポートしてくれる企業や団体、どちらにもメリットがある関係になって欲しいという思いから、手に入る食材は、できるかぎり地元で購入することにしました」

◇東員町で野菜やお米の収穫が多いのは意外でした
近藤さん「東員町は、農家や兼業農家として昔から住んでいる人たちが多い地区と、新たに移り住んで来た人たちが多い新興住宅地と、エリアが分かれているんです。この二者を融合して、地元の人が作ったものを地元の人が消費する仕組みにしたいと昔から思っていて。そんな思いもあり、カフェでは不定期ですが、地元野菜の販売もしています」

驚くほど安い野菜は利用者さんだけでなく職員さんたちにも好評だとか

◇サポーター以外の人もカフェを利用しますか?
近藤さん「文化センター内なので、カルチャー講座などに参加した人も来店されます。『サッカーチームの応援なんやね』ってそこからチームを知ってもらえることもあるんですよ。あとはヴィアティン三重の選手もよく利用してくれますね。平日の昼間は、選手の食堂みたいです(笑)」

練習後に食事をする選手のみなさん。ヘルシーでボリュームたっぷりのメニューが人気(2021年撮影、写真提供:THE BOWL cafe)

◇選手のグッズが入ったガチャガチャもありますね
近藤さん「海外ではサッカー選手は、町のヒーローです。ヴィアティン三重の選手も、ぜひそんな存在になってほしいと思い、ボウルカフェとチームとのコラボで、選手グッズを作りました。試合に出ている選手も出ていない選手も同じ努力をしているので、不平等にならないよう、全選手同じ数をそろえて入れています。コンプリートをめざしてくれるサポーターさんや、好きな選手のグッズをゲットして喜んでくれるのが、うれしいですね」

◇地元にとってヴィアティン三重はどんな存在ですか?
近藤さん「東員町って住むにはいいところだけど、有名な観光スポットなどはありません。そこに週末に2,000人や3,000人の観客が集まれば、お店や事業所も潤う。そんなコンテンツは現在、ヴィアティン三重以外にないと思います。また、子どもたちにとって、地元にプロスポーツチームがあるっていうのは、素晴らしいこと。チームを作り上げるプロセスも大事にしつつ、子どもたちが将来の夢として描けるような存在になってほしいですね」

ヴィアティン三重のサポーター代表として、近藤さんとは中学校の同級生で、勤務先の病院を挙げてヴィアティン三重を応援しているという、水野智史(みずの さとし)さんも駆けつけてくれました。

◇ヴァイアテイン三重の魅力は?
水野さん「チームのコンセプト『地域と共に』というフレーズがいいですね。選手が試合後に、サポーターに挨拶に来てくれるような、選手との距離の近さも魅力です」

◇独自のサポーター活動をしているそうですね
水野さん「ヴィアティン三重の試合は、オフィシャルサポーターズクラブ『14MIE』が、試合会場を盛り上げてくれています。ゴール裏での応援や、試合を見に来た人への声掛けなどを見て、僕の地元でもある東員町としても、ヴィアティン三重を盛り上げたいと思っていました。公式サポーターズ団体とは別で、地元有志で作った『東員オレンジプロジェクト』を立ち上げて活動しています。試合の応援はもちろん、東員町のお店にポスターを貼ってもらったり、旗を置いてもらうなどの宣伝活動を独自に行っています。もっともっと地域ぐるみで応援できる環境を作っていけば、ヴィアティン三重も盛り上がるし、東員町自体も元気になれるはず。チームには頑張ってもらって、ぜひJリーグに昇格してほしいですね。注目度が上れば、ファンも増えるだろうし、選手もさらによいプレーができるのではないでしょうか」

チーム関係者もサポーターからも、まさに熱い”三重魂”が伝わってくるヴィアティン三重。三重県初のJリーグ入りをめざす選手たちを、ぜひスタジアムで応援してください。

11月3日(祝・水)、7日(日)には、子どもから大人まで楽しめる「ヴィアティンフェスティバル」が開催されます。トークショーやヴィアティン三重の選手と遊べるサッカーゲームも登場予定。詳細はヴィアティン三重のHPからチェックを。

<今回の取材先はコチラ>
ヴィアティン三重
住所:員弁郡東員町北大社323(朝日ガスエナジー東員スタジアム)
URL:https://www.veertien.jp/fc/

店名:THE BOWL cafe(ザ ボウル カフェ)
住所:員弁郡東員町山田170
電話:0594-28-8550
時間:9:00~17:00(LO16:30、モーニング9:00~11:00、ランチ11:30~14:00)
休日:火曜
URL:https://twitter.com/the_bowl_cafe

三重県の取り組み紹介

三重県では、県民の皆さんがスポーツに親しむ機会の充実やスポーツを「みる」、「する」、「支える」ための機運の醸成等に取り組んでいます。

https://www.pref.mie.lg.jp/D1SPORTS/index.htm