ちっちゃくってキュートなヤツ。三重の超ローカル鉄道に乗ってみた。

2017.3.2

「つづきは三重で」市民記者

【取材】nari_bow

桑名市から東員町、いなべ市を結ぶ超ローカル線「三岐鉄道北勢線」。

地元の交通手段として、古くから多くの人に愛されているキュートな電車。

どの辺がキュートかといいますと、とにかくちっちゃいんです。

専門的には「ナローゲージ」。
「ナロー(=狭い)」な「ゲージ(=軌間)」、つまり線路の幅が通常よりもかなり狭い電車で「軽便鉄道」とも呼ばれます。

JRの在来線など、日本で一般的な線路の幅は1067mm。高速運転する新幹線や近鉄線はさらに広い1435mm
一方、このナローゲージは762mm。新幹線や近鉄線の約半分しかないんです。

どれくらい狭いかというと・・・。

近鉄線の線路(1435mm)
▲近鉄線の線路(1435mm)
JR在来線の線路(1067mm)
▲JR在来線の線路(1067mm)
ナローゲージの北勢線の線路(762mm)
▲ナローゲージの北勢線の線路(762mm)

実はこのナローゲージ、現役で走っているのは日本に3線しかないんです。
しかも、3線のうちの2線が三重県で走っています。

一つは、あすなろう四日市駅から内部駅(日永駅-西日野駅を含め)を結ぶ「四日市あすなろう鉄道」。
そしてもう一つが、西桑名駅から阿下喜駅までの13駅を結ぶ「三岐鉄道北勢線」なんです。

ーーー地元の人々に愛される、小さなローカル列車。

西桑名駅前

近鉄桑名駅から200mくらい南にある西桑名駅。
この駅から出発します。

北勢線路線図看板

看板には「NARROW GAUGE 762mm」と。
とにかく「小さい電車」推しですね。

今回は途中下車をしながら、終点の阿下喜駅をめざします。

北勢線

ホームで待っていると黄色とオレンジのツートンカラーがチャーミングな列車が3両編成で入ってきました。
これが三岐鉄道北勢線の列車です。

早速乗り込んでみると、改めてその小ささに驚きます。

北勢線車内2

礼儀正しく座らないと、前の人に足が当たってしまうの位のスペースしかありません。
天井も手を伸ばせば届くほど低い。

車内

走り出すと床下からモーターの音と振動が響く。
小さい割に意外とパワフルな走りっぷり。

途中、江戸時代に作られた用水「六把野井水(ろっぱのいすい)」に架かる橋、通称「ねじり橋」や、3連式のアーチが美しい「めがね橋」を渡ります。

ねじり橋。橋と用水路が斜めに交差するため、アーチ橋下部のブロックはひねりを入れて積まれている。現存するコンクリート製の橋としては、大変貴重な橋。
▲ねじり橋。橋と用水路が斜めに交差するため、アーチ橋下部のブロックはひねりを入れて積まれている。現存するコンクリート製の橋としては、大変貴重な橋。
全国に数多く存在するめがね橋の中でも、とても珍しいコンクリート製の橋。
▲全国に数多く存在するめがね橋の中でも、とても珍しいコンクリート製の橋。

この2つの橋はともに大正5(1916)年に竣工されたもので、現在も使用されているコンクリート製の橋としてはとても珍しく、当時の高い技術が生んだ美しいアーチは、鉄道ファンのみならず、写真ファンにとっても代表的な撮影スポットとなっています。

ーーー地物野菜をジェラートにして召し上がれ。

大泉駅外観

桑名西駅を出発して、およそ30分。大泉駅で途中下車。
この駅に併設されている「ふれあいの駅 うりぼう」に立ち寄りました。

うりぼう看板

地元いなべ市近郊の農家さんが育てた新鮮な野菜やお惣菜などが販売されている、地元で人気の農産物直売所。
新鮮な野菜や果物の他にも、地元名産の蕎麦やお茶が数多く並んでいます。

生産者の顔が見える、安全安心な農作物。
▲生産者の顔が見える、安全安心な農作物。

ここの名物は、地元で採れる野菜や果物を使った新鮮ジェラート。

焼き芋と地元いなべ産の緑茶のジェラート。
▲焼き芋と地元いなべ産の緑茶のジェラート。

地元産のイチゴやほうじ茶、カボチャやトマトなど、常に15種類ほどあるラインナップ。
季節ごとにメニューが変わるのもうれしい。
春の行楽シーズンを前に地元のお茶を使った新しいジェラートを開発中だとか。

ーーー日本最西端のナローゲージ駅 阿下喜駅。

阿下喜駅ホーム

終点の阿下喜駅。
軽便鉄道の実車両や貴重な資料が展示されている「軽便鉄道博物館」が併設されています。

赤い旧型の車両が展示されている。
▲赤い旧型の車両が展示されている。

開館は毎月第1、第3日曜日の10時〜16時。
取材当日はあいにく閉館していましたが、開館時にはミニ電車に乗車することができ、家族連れや鉄道ファンでにぎわうそうです。

阿下喜駅から300mほどにある「阿下喜温泉 あじさいの里」。阿下喜温泉あじさいの里
かけ流しの天然温泉で、岩露天風呂・大浴槽・水風呂・サウナなど、地元の人々にも人気の充実した温泉施設。
施設内にはレストランもあり、旅の疲れを取るには最適の施設です。

地元民の移動手段として愛され続ける北勢線。
西桑名駅から住宅地をすり抜け、自然の中をゆっくり力強く走ります。

戸上川の桜並木と並んで走る北勢線
▲戸上川の桜並木と並んで走る北勢線

春になれば桜並木、秋にはコスモス畑の中を走ります。
季節によって変わる景色。車窓から美しい自然を見ながら列車に揺られる。
自然を走る列車旅の醍醐味ですね。

ーーー今なお現役。働く列車、三岐線。

北勢線はここ阿下喜駅が終点。
実は三岐鉄道には、北勢線の他にもう一つ三岐線という路線があります。
近鉄富田駅から西藤原駅を結ぶ三岐線。
この阿下喜駅から徒歩で三岐線の伊勢治田駅に向かうことができるんです。
このまま来た路線を引き返すのももったいないので、三岐線もご紹介します。

員弁川(いなべがわ)

近代化された北勢線の駅と比べ、昭和感がにじみ出ている駅舎。
▲近代化された北勢線の駅と比べ、昭和感がにじみ出ている駅舎。

員弁川(いなべがわ)を渡り、歩くこと20分程度。伊勢治田駅に到着。
伊勢治田駅は、終点の西藤原駅まであと3駅の地点にある。

まずはここから三岐線の終点、西藤原駅に向かいます。

三岐線車両

北勢線とは違い、普通サイズの電車です。
でも黄色とオレンジのツートンカラーは一緒で、北勢線の兄貴分的な出で立ちです。

 

西藤原駅ホーム。ホームを挟んで蒸気機関車がお出迎え。
▲西藤原駅ホーム。ホームを挟んで蒸気機関車がお出迎え。

西藤原駅には、蒸気機関車やディーゼル機関車が展示されており、珍しい車両を間近で見ることができます。
駅前公園では月に1回、ミニ列車が走り子どもに大人気のイベントが開催されています。
家族でのお出かけにオススメです。

機関車をモチーフにした駅舎
▲機関車をモチーフにした駅舎

ここ西藤原駅は藤原岳(標高1140m)の登山口に近く、多くの登山者にも利用されています。
春になると、藤原岳の名物でもある「フクジュソウ」が見頃を迎えます。
その黄色く小さな花は、三岐鉄道の可愛い車両のようです。
可愛い列車に乗って、可愛い花を見に藤原岳登山。そんな旅もいいかもしれません。

 

西藤原駅を後にして、近鉄富田駅方面へ向かいます。その途中にある丹生川駅(にゅうがわえき)で、再び下車。

丹生川ホーム

この駅前には「貨物鉄道博物館」があります。
三重県全域で500館ほど開館しているまちかど博物館の一つでもあります。

丹生川鉄道博物館(提供)

全国から集められた貴重な貨物列車や資料が多く保存されており、間近で見学することができる、世界初の貨物専用博物館。
貨物列車として活躍する三岐線の歴史や車両の特徴なども知ることができます。
ボランティアスタッフを中心に運営されているため、毎月第1日曜日(10時〜16時)のみの開館ですが、多くの鉄道ファンの支えによって運営されています。
中には県外からボランティアスタッフとして参加される方もいらっしゃるとか。

開館時の館内の様子
▲開館時の館内の様子

 

展示されている蒸気機関車や貨車。
▲展示されている蒸気機関車や貨車。

 

北勢線とは違い貨物列車としての側面を持つ三岐線。
今でも16両編成の貨物列車が最大で5往復しています。
主にセメントを積み、四日市港へ輸送しています。
また、近年では愛知県碧南火力発電所と太平洋セメント(株)をJR貨物・衣浦臨海鉄道とともに結び、発電所からは発電の際に発生する「石炭灰」(セメントの原料)を太平洋セメントへ、太平洋セメントからは「炭酸カルシウム」(硫黄分脱硫剤)を発電所へ輸送しています。

JR富田駅を行き交う貨物列車
▲JR富田駅を行き交う貨物列車

コンテナ車

 

小さく可愛い鉄道「北勢線」とパワフルに働く鉄道「三岐線」。
同じ三岐鉄道でも異なる列車に乗ることができます。
歴史を感じる建造物や地元でとれた新鮮野菜。
美しい自然風景、間近で見られる貴重な列車など、魅力満載のこの2線をぜひ乗り比べてみてください。

北勢線車両


関連情報

つづきは桑名市で

つづきはいなべ市で

つづきは東員町で

つづきは四日市市で
 
■アンパンマンやポケモンのバスも!? 三重県内のおでかけは「路線バス」が楽しい&便利!
https://www.mie30.pref.mie.lg.jp/play/9733
路線バス
 
三岐鉄道ホームページ

まちかど博物館ホームページ

MieMu 交流展示 三重のまちかど博物館『想』
三重県総合博物館(MieMu)では、三重県内に約500館あるまちかど博物館を紹介する交流展示「三重のまちかど博物館」を開催します。

三重のまちかど博物館
【交流展示の概要】
○期間:平成29年3月14日(火)から4月2日(日)まで ※期間中の休館日は3月21日(火)、27日(月)
○開催時間:午前9時から午後5時まで
○会場:三重県総合博物館(MieMu)2階交流展示室(津市一身田上津部田3060)
○展示内容:まちかど博物館とは、伝統の技、手仕事、コレクションなどを仕事場の一角や住まいなどで、館長さんの語りとともに観覧することができる「博物館」です。今回は、「想(おもひ)」をテーマに県内12地域のまちかど博物館が三重県総合博物館に勢ぞろいし、それぞれの地域の活動内容を紹介します。なお、開催期間中の毎週土・日・祝日には各地域のまちかど博物館の館長さんがワークショップ等を行いながら特色ある活動を紹介します。
○観覧料:無料
○主催:「三重のまちかど博物館」実行委員会、三重県総合博物館(桑名まちかど博物館、東員まちかど博物館、いなべまちかど博物館、四日市地域まちかど博物館、鈴鹿・亀山まちかど博物館、三重のまんなか・まちかど博物館、松阪・紀勢界隈まちかど博物館、玉城まちかど博物館、伊勢まちかど博物館、伊賀まちかど博物館、東紀州まちかど博物館(尾鷲・紀北)、東紀州まちかど博物館(紀南))
○後援 三重県博物館協会