
人口減少している中で避けられない廃校問題。もしかすると皆さんの中にも「子どもの頃に通っていた学校が廃校になった」という方もいるかもしれません。
しかし近年その廃校が、食べたり、見たり、泊まったりと様々な体験ができる魅力的な施設に生まれ変わっています。
今回から2回にわたり、そんな三重県内の廃校を活用した取り組みについてご紹介します。前編でご紹介するのはカフェと宿泊施設です。
■スイーツも大人気!いなべ市『桐林館 喫茶室』とは
国登録有形文化財である桐林館(旧阿下喜(あげき)小学校)が、『桐林館(とうりんかん) 喫茶室』として生まれ変わりました。老若男女が訪れる、憩いの場所にお邪魔しました。
見た目も味も抜群!リピーターも多い、こだわりのスイーツ
現役の地域おこし協力隊としても活躍されている、オーナーの帖佐(ちょうさ)さん。様々なご縁が重なり、2017年7月7日『桐林館 阿下喜美術室』をオープンし、現在は『桐林館 喫茶室』と店名を変えて活動をしています。廃校をアート&カフェで活用して地域活性化に繋げるというユニークな取り組みは、各方面から注目を集めています。月に1回は、地域の子どもたちと一緒にけん玉交流会をしているそうです。
美味しそうな匂いに誘われて歩を進めると、そこはレトロなカフェでした。
1階の入口近くに位置するこちらの部屋は、昔は職員室として使われていたそうです。配置されている机や椅子からも、当時の面影が感じられます。
こちらのカフェでは、日替わりで楽しめる手作りカレーと、こだわりの絶品スイーツを頂くことができます。
こちらが人気メニューの一つ『カタラーナセット』900円(税込)。カタラーナはラム酒、チーズ、いなべのお茶の3種類の味から選択することができます。口に運ぶと自然と笑みがこぼれてしまう美味しさ。作られた方の愛情が感じられる、濃厚な味わいでした。
セットの飲み物は、一番人気だという『職員室ブレンドコーヒー』にしました。
ルワンダ、ドミニカ、ミャンマーの豆をブレンドして作られたオリジナルコーヒー。さっぱりとした中にも深さがあり、リピーターが多いのも納得の味でした。コーヒーや紅茶は、フェアトレード(※)の商品となっています。美味しいコーヒーを飲むことが途上国の支援に繋がるという、素敵な循環です。
※フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」のこと。フェアトレード認証製品を購入することは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で購入することであり、開発途上国の生産者や労働者をサポートすることに繋がります。
昔懐かしい館内を巡る
カフェの他にも見学できる部屋があります。長い廊下の先にある、当時の雰囲気が感じられる部屋2つをご紹介します。
1つ目の部屋は、昔は校長室として使われていた所で、アンティークな雰囲気で構成されています。
部屋の中には、展示品が飾られています。時代の変化とともに消えていった物たち。ここは、忘れかけていた古き良きものに再び会える場所となっています。
2つ目の部屋は、教室です。昔の面影が色濃く残る教室。窓が大きく、開放感のある空間です。
教壇の上に展示されている小道具を見ると「先生がこの鐘を鳴らしていたのかな」「この本で勉強していたのかな」と当時の様子が頭の中に浮かんできました。
毎月1日には、一日一(ついたちいち)というマルシェをしていて、ハンドメイドの雑貨や食べ物などの販売、ワークショップなどが開催されており、地域の皆さんの憩いの場にもなっているそうです。
昔懐かしい場所で、癒しのひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
■懐かしさとドキドキ感。泊まれる学校『海ぼうず』に行ってみた
南伊勢町の旧相賀(あいが)小学校の校舎を利用した施設『海ぼうず』。教室や食堂など、当時の様子を残したまま改装され、現在は宿泊施設として、家族や友人同士、またサークルや学生のゼミ合宿などで、多くの方に利用されています。
施設をまわってみよう
海ぼうず管理人の松波(まつなみ)さんです。
まずは、1階からみていきましょう。玄関を入ってすぐ左手には、待合室があります。レトロな内観が素敵です。
1階突き当たりには食堂があります。この食堂、当時は職員室として使われていたそうです。
食べ物は、基本的にセルフサービスで持ち込みになります。食堂に隣接する調理室も、事前申請をすることで厨房などを使用することができます。
屋外ですが、バーベキューができる設備もあります。こちらも事前の申請が必要ですので、気になる方は予約の際に確認してみることをおすすめします。
浴室はもともと保健室があった場所だそうです。
トイレは大人でも使えるように改装されています。
次は、2階をみてみましょう。建物の2階のほとんどはもともと教室で、現在は宿泊部屋として使われています。こちらは10〜15名が宿泊できる大部屋です。
こちらは1〜7名が宿泊できる中部屋です。2階には、大部屋が2部屋、その半分のサイズの中部屋が6部屋あります。
黒板や窓など当時のものが多く残されており、学生時代にタイムスリップしたような不思議な感覚になります。
宿泊部屋が続く2階で、一つだけ違う部屋がありました。それは、図書室です。
本もたくさん並んでいました。子どもの頃好きだった本を探してみるのも、面白いかもしれませんね。
そのまま歩を進めて、3階へ。『講堂』と呼ばれる、大きなホールがみえてきました。
日の光が差し込む、のびのびとした空間。ここで生徒達が運動や集会などをしていたという光景が目に浮かびます。
校歌も、当時のまま掲げられています。
ピアノや卓球台、ボールなども常備されており、自由に使って遊ぶことができます。懐かしい当時を思い出しながら、ご家族や友達と遊んでみてはいかがでしょうか。
さらに階段を登ります。大きな窓から漁村の風景が見えます。
屋上です。この地域は星も綺麗にみえるので、天体観測を楽しんでいる方も多いそうです。
屋上では寝転がって星をみることもできます。なんだかドラマみたいですよね。学生の頃にはできなかったという方は、ここで試してみてはいかがですか。学生時代の気の合った友人同士で、大人の合宿をしてみませんか。
廃校という懐かしさを残したおしゃれなカフェや宿泊施設。学生時代では考えられなかった校舎に泊まるということもできます。三重県にお越しの際はぜひ利用してみてくださいね。
次回、後編でご紹介するのは、手づくり弁当やお惣菜の販売や喫茶など幅広く取り組む施設、そして温泉施設です。どちらも魅力あふれる施設ですので、お楽しみに!
(掲載情報は、すべて令和元年8月時点のものです)
- <今回の取材先はこちら>
★桐林館 喫茶室
住所:いなべ市北勢町阿下喜1980
電話:0594-72-6096
営業時間:10:00~17:00
定休日:なし
※旧店名「桐林館 阿下喜美術室」
- ★海ぼうず
住所:度会郡南伊勢町相賀浦371-1
電話:0599-64-0010
営業時間:チェックイン15:00~、チェックアウト~10:00
定休日:不定休