食べて・見て・入浴して・泊まることも?三重の廃校が地域の魅力の場に変身!後編

2019.10.4

旅人ライター 南谷有美

人口が減少している中で、“廃校”のニュースが届くことが多くなっています。

しかし、一見マイナスなイメージを持たれる廃校が、食べたり、見たり、泊まったりと様々な体験ができる魅力的な施設に生まれ変わっています。

今回は2回にわたって、県内の廃校を活用した取り組みを取材。前編では、喫茶室と宿泊施設についてご紹介しました。

「食べて・見て・入浴して・泊まることも?三重の廃校が地域の魅力の場に変身!前編」はコチラから
https://www.mie30.pref.mie.lg.jp/play/8656

後編では、手作り弁当や総菜の販売・憩いの場を提供するなど、地域の元気づくりの場となっている取り組み、そして、全国的にも珍しい温泉施設をご紹介します。

 

■地域の元気づくり・絆づくりの場!美味しいものがいっぱいの『野原工房げんき村』とは

元気村入口

木造校舎である大紀町の旧七保(ななほ)第一小学校をリニューアルした『野原工房げんき村』。地元の有志メンバーが集まって、毎週土曜日、10時から13時までの3時間オープンしています。

“野原の食” 地産地消にこだわる青空市

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平成21年から開かれている青空市。用務員室を改装して作られたこの場所には、新鮮な野菜や手づくりの弁当、総菜などを求めて、たくさんの方が訪れます。

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青空市に並ぶ野菜は、地元の方が作られたもの。オクラやナス、ピーマンなど季節の野菜が並んでいました。

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それぞれの札には生産者の名前も記載されています。

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その奥の棚には、弁当や総菜が並んでいます。季節に合わせておかずが変化する『元気弁当』は、一番の人気商品です。

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手づくりにこだわった、げんき村特製の惣菜。弁当や総菜は、前日に集まって仕込みなどを行い、当日は7時から厨房で作られているのだそうです。

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普段は入れない給食室の厨房で、メンバーの皆さんを撮影させていただきました。

季節によっては、鹿カレーや猪丼などのジビエ料理が提供されることも。食を通して地域やその文化に触れることができる、貴重な場所となっています。

“旧七保第一小学校の活用” 教室を喫茶室として開放

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続いては、教室を活用した『喫茶おはつき』です。

喫茶内では、コーヒーやお茶・茶菓子などを頂くことができます。基本はセルフサービスですが、メンバーがおもてなしをしてくれます。青空市で購入した弁当や惣菜を、こちらで食べることもできます。

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喫茶おはつきで会話や食事を楽しまれていた皆さん。この場所が地域の方々の交流の場になっているようで、「週に1度の楽しみ」と嬉しそうに教えてくださいました。

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ふと、机の上に目を向けてみると、“おもいやり”という箱がそれぞれの机に置かれていました。

実は、喫茶内のコーヒーやお茶などは全て無料で提供しています。そのお客様からの“ありがとう”という気持ちは、寸志という形で“おもいやり”の箱に受けとられています。箱に集まったお金は、次回のコーヒー代などの運営資金にあてられています。

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この日もたくさんの方で賑わっていました。遠くは津市や伊勢市からのリピーターもいるそうです。

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取材当日のメンバーの皆さん。他にもたくさんメンバーがいるそうです。

住民たちの結束。地域を、『野原工房げんき村』を支える『野原村元気づくり協議会』とは

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青空市や喫茶おはつき以外にも、図書室を利用して絵本の読み聞かせなどが開催されることもある『野原工房げんき村』とはどのような場所なのか。『野原村元気づくり協議会』会長の鳥田(とりだ)さんにお話を伺いました。

『野原工房げんき村』の活動の根底にある『野原村元気づくり協議会』。それは、住民たちの有志によって、平成20年に結成されたそうです。

現在は5つのグループに分かれて活動されています。

地産地消、地元で採れた食材を使って作る“野原の食”、新たなルートやアクティビティを提案する“白岩奥山川活用”、義務教育費国庫負担に尽力した地域の偉人大瀬東作(おおせ とうさく)さんを讃える“我らが東作さん”、木工教室やしめ縄づくり教室など地元の方が講師となり親交を深める“体験交流”、廃校活用して地域活性化をする“旧七保第一小学校の活用”です。

 

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毎年10月には、このグラウンドを使って、小学生からご高齢の方まで、この地域に住んでいる様々な年代の方が参加する運動会も行われるそうです。

ほんの少しの気持ちが、また次の活動へと繋がっていくという素敵な取り組みです。心温まる地域活動に触れてみてはいかがでしょうか。

 

■学校が温泉に?心安らぐ『阿曽温泉』とは

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校舎を活用した入浴施設『阿曽温泉』。旧阿曽小学校を利用した、食堂や産地直売所、交流施設などを含むふれあい総合施設『阿曽湯の里』の中にあります。

ご近所や遠方から、癒しの時間を求めて様々な人が足を運ぶ、大紀町が誇る癒しの温泉スポット『阿曽温泉』を訪れてみました。

住民の願いが現実に。驚きの廃校活用

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ふれあい総合施設『阿曽湯の里』。左の棟は『阿曽温泉』と『あすなろ食堂』、中央の棟は『四季の店旬彩』と『交流体験室』、右の棟は『宮川流域交流館たいき』が入っています。

江戸時代より良質な源泉がわく場所として知られていた、阿曽地区。古くから温泉旅館を営んでいた近所の施設が休業したことで、平成15年に廃校となった阿曽小学校に温泉をひこうという壮大な計画が浮上しました。多くの方の力添えを得て、平成17年7月、廃校を活用した温泉施設『阿曽温泉』がオープンしました。

まろやかな泉質が魅力。効能も抜群な、上質な温泉

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玄関を入ると、すぐ正面に受付があります。スタッフがが笑顔で迎えてくださいました。

入浴料は、大人 500円、高齢者 400円、小人 300円とお財布にも優しい価格です。3歳以下のお子様は、無料で利用することができます。

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当時の面影を残した広い廊下の先に温泉があります。

脱衣所
写真提供:大紀町

『阿曽湯の里』の中で、阿曽温泉がある建物は当時、1年生〜6年生の教室として使われていたそうです。

湯船
写真提供:大紀町

中に入ると、そこには大きな浴槽が。洗い場は6ヶ所設けられており、ゆったりとした時間を楽しむことができます。

効能が素晴らしいことでも有名な『阿曽温泉』。

腰を痛めた方が温泉に毎日通ったら、1週間後には元気になったということがあったそうです。他にも、「肩こりが改善した」、「身体がポカポカして睡眠の質が向上する」など、利用者さんから嬉しい変化をお聞きすることができました。

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温泉内には卓球台もあり、自由に使うことができます。

上質な温泉で、心や身体を癒してみてはいかがでしょうか。

手づくり料理が自慢。ゆったりした時間を提供する『お食事処あすなろ』

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玄関から見て温泉の反対側には、お食事処があります。

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この部屋は、当時6年生の教室として使われていたそうで、当時の面影が今でも残っています。

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地元のボランティアグループ『あすなろ会』が運営している食堂で、地元食材を使った手づくりの料理を提供しています。愛情がたくさん詰まった“味ご飯”は絶品でした。

“味ご飯”関連の記事「えっ?「味ご飯」って言うのは三重県人だけやったん?」はコチラから
https://www.mie30.pref.mie.lg.jp/eat/4938

地域の方々が力を合わせて運営している『阿曽温泉』。温泉は、地域の交流の場としての役割も担っているようです。上質な温泉に、美味しい手料理。ゆったりとした時間をお過ごしください。

いかがでしたでしょうか?

“小学校の校舎を、後世にも残したい”との住民の想いから、廃校が、地域の特色を生かした魅力を発信する施設に生まれ変わっています。懐かしさを感じながら、地域の人との交流や、地域の魅力の体験などを楽しんでくださいね。

 

(掲載情報は、すべて令和元年8月時点のものです)

<今回の取材先はこちら>

★野原工房げんき村

住所:度会郡大紀町野原543

電話:0598-89-4038

営業日:土曜日

営業時間:10:00~13:00

HP:https://taiki-bm.wixsite.com/noharagenki

★阿曽温泉

住所:度会郡大紀町阿曽429

電話:0598-84-8080

営業時間:10:00~21:00(20:00までに入場)

定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月31日、1月1日)

HP:http://www.town.taiki.mie.jp/culture/midokoroguide/osusumespot/asoyu