自然豊かな三重県の漁業と農業の現場に潜入取材!働く方の想いや、働きたい方をサポートする取り組みとは

2020.6.12

海外も国内も!旅行大好き川口めぐみ

自然豊かな三重県では、漁業、農業などの一次産業が盛んに行われています。しかし、一次産業に興味や関心があっても、実際に従事している方と接する機会がほとんどない方もたくさんいますよね。今回は、一次産業でどのような方が、どのように学び、どのような仕事をされているかをお伝えするため、三重県の一次産業で働いている方と、働きたい方をサポートする取り組みについて迫ってみました。

■本気で漁師をめざせる場所!“早田(はいだ)漁師塾”

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初めにやってきたのは、都会と漁村をつなぐ取り組みをされているという、尾鷲市早田町の「早田漁師塾」。早田町は三重県南部の尾鷲市の一地区で、リアス海岸の湾奥にあります。

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現地に到着すると、暖かい日差しや鳥の鳴き声、波の音が心地よくゆったりとした時間が流れているなぁと感じました。

「早田漁師塾」は、都会の若者と地方で担い手が減少している漁業をむすび、漁業の実習・座学に加え、漁村に住み込むことで漁村の雰囲気も学べる塾だそうです。
塾を始めた平成24年当時は、三重県内の漁業において、多様な種類で研修ができ、基礎知識を学べる体制が整っておらず、加えて、漁村生活の実態を肌で感じることができる機会はなく、いざ都会からやってきても抱いていた生活イメージとの間にギャップが生じていたことから、「早田漁師塾」は、漁村に密着し、漁業の現場や知識を体感、学べる場を提供するための育成機関として開校されました。
授業は、実習(早田で体験できる漁業)や座学(ロープワークや漁業をするために知っておくべきこと)など盛りだくさんの内容を、4週間で行われるそうです。

私が訪問した日は、毎年2月に行われる、海上安全や大漁祈願などを祈念する早田町の氏神祭りの日でしたので、一緒に参加させていただくことに。

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湯浅光太さん

まず、早田漁師塾を運営する三重外湾漁業協同組合 紀州支所 尾鷲事業所 早田の湯浅光太(ゆあさ こうた)さんにお話を伺いました。

―湯浅さん、今日の祭礼について教えてください!

湯浅さん「早田町の氏神祭りは、毎年2月の2日間にわたって行われ、船上神楽や早田神社、稲荷神社、恵比須神社への祭礼を行います。今日は、今から稲荷神社へお参りに行きます。普段はみんなスーツではないのですが、今日は祭礼ということでスーツを着ています」

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さっそく、漁協から稲荷神社へ向かい、お参りとお祓いを済ませます。

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続いて、恵比須神社へ移動。道中には漁港がありました。

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この日は祭礼ですが、水揚は休みではありません。早朝に終わらせてから、祭礼を行っているのだとか。

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恵比須神社に到着し、再度お参りとお祓いを行います。

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祭礼終了後に、お供えの鯛を見せていただきました。立派な美しい鯛ですね〜! 「オスかメスどっちでしょうか〜?」と、地元の方が気さくに声をかけてくださいました。素人目には全くわからないですが…メスだそうです!

 

移住された方へインタビュー!

祭礼に参加させていただくという貴重な経験をした後に、早田漁師塾で漁業体験を経て漁師になられた方にインタビューをさせていただきました。皆さん、現在は尾鷲市に移住されています。

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中井恭佑さん

最初は株式会社早田大敷(はいだおおしき)の中井恭佑(なかい きょうすけ)さんです。

―何がきっかけで漁師になられたのですか?

中井さん「元々、子どもの頃からテレビで見た漁師に憧れを持っていました。釣りが好きだったこともあり、どうやったら漁師になれるのか…と調べて漁業体験をしてみたところ、本当に楽しくて。目の前の自然にあるものを獲って、それが仕事になるってすごいですよ!」と嬉しそうに語ってくださいました。

―すごくお若く見えますが…おいくつですか?

中井さん「今31歳ですが、21歳からなので10年やってますね」

なんと、今時の若者っぽい見た目とは裏腹に、大ベテランではないですか…!
中井さん「元々大阪出身ですが、尾鷲市は思っていたほど田舎ではなく生活も不便ではないです。漁自体は、毎日天候も、獲れる魚の種類も量も違うので変化があって同じ日はないんですよね。そこがまた魅力です」

なるほど〜。確かに自然の中での漁は、単調な毎日とは真逆な気がします。

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左から、中井恭佑さん、小池満さん、浦和弘さん、吉田元治さん

若手漁師を育成する早田漁師塾を卒業された第1期生吉田元治(よしだ もとはる)さん、第3期生浦和弘(うら かずひろ)さん、第7期生小池満(こいけ みつる)さんにもお話を伺いました。みなさんに共通していたのは、釣りや魚が本気で好きで、どうしたら漁師になれるのだろう?と考え、そのような場を探していたこと。その中でも、1か月間の実習や座学がある早田漁師塾は魅力的だったそう。

「早田漁師塾で、短期間の体験ではわからない漁業や漁村での生活が体験できたのが良かった」と、吉田さん。
「大型定置だけでなく、小型定置や刺し網などいろいろな漁を学べたこと、とにかく魚が好きなのでさまざまな種類の魚を見たり食べたりできるのが嬉しい。今までの仕事は忙しすぎて、夜中まで働いていましたが、今は人間らしい生活を送っています」と、浦さん。
「家族の事情があり、単身赴任で漁師をやっています」という小池さん。

単身赴任で漁師とは、新しすぎませんか…! 小池さんの漁師になりたいという夢を応援できる奥様もすごいと感じました。

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インタビュー中に「これ食べてみて」と、漁で獲れたブリと鯖の刺身をいただきました!

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特に鯖の刺身を食べるのは初めて! ブリも鯖もコリコリとした食感で新鮮で美味しかったです。ありがとうございました!

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お魚が美味しくて温かな人がいらっしゃる早田町。思っていた以上に若い方が漁師として働いておられ、「魚がたくさん獲れると、面白いよね!」と少年のような表情で話されていたことが印象的でした。釣りや魚が好きで本気で漁師になりたい、そんな熱い志を持った方が早田町の漁業を体験し、学ぶことができる場所が早田漁師塾なんですね!

プログラム内容や塾生募集については、早田漁師塾のホームページからご覧くださいね。

 

 

■一年中かんきつ類を収穫できる環境!“三重南紀元気なみかんの里創生プロジェクト協議会”

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続いて、三重県南牟婁郡御浜町にあるJA伊勢三重南紀地区本部統一柑橘選果場へ、「三重南紀元気なみかんの里創生プロジェクト協議会」のお話を伺いに行ってきました。

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瀬古勝信さん

御浜町役場の瀬古勝信(せこ かつのぶ)さんです。

―瀬古さん、「三重南紀元気なみかんの里創生プロジェクト協議会」について教えてください!

瀬古さん「『三重南紀元気なみかんの里創生プロジェクト協議会』は、熊野市・御浜町・紀宝町の3自治体で構成されています。基幹作物であるかんきつ類をはじめ、その他農産物の生産振興や農業資源等を活用した産業観光の推進によって、活力に満ちた地域づくりを目的として活動しています」

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―御浜町単体ではなく、熊野市、紀宝町とも連携して行っているのですね!ここで働きたい方をサポートする取り組みはどのようなことをされていますか?

瀬古さん「東京、大阪、津の就農フェアが年3回あるので、出展して説明会を行っています。熊野市・御浜町・紀宝町のある紀南地域は、紀伊半島の東南部、三重県の最南端に位置し、熊野灘に面した七里御浜の海岸線に沿った、年平均気温16.4℃、年間降水量2,800mmの温暖多雨地帯です。温暖な気候に恵まれていて一年中かんきつ類を収穫できるので、年間の農作業を学ぶことができる充実した研修制度も特徴です」

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瀬古さん「みかんは、苗から植えて収穫できるまで5年はかかります。しかし、ご高齢などの事情でみかん農家を廃業される方と、新規就農されたい方のマッチングを行うことで、農家が持っている畑を借り、スムーズに就農しやすくするシステムもあるんですよ。他の農作物のような大きな機械を入れる必要もないので、新たに農業を始めたい方の資金面のハードルが低いことも魅力の一つなのです」

確かに、農業を始めてみて、実際に収穫できるまで数年間育てるのみ、というのは厳しそうです…。初期投資がそこまで高くないのも新規で取り組みやすいですよね。

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仲井照清さん

瀬古さんにご案内いただき、実際に就農された方にお話を伺うことになりました。
みかん農家の仲井照清(なかい てるきよ)さんです。

―仲井さん、移住を考えられたきっかけや御浜町を選ばれた理由があれば教えてください!

仲井さん「もともと、奈良県出身で大阪で働いていたのですが、釣りが趣味でよく御浜町に来ていました。その帰りにみかんを買ったりして美味しいなぁと思っていたのです。ちょうど長年勤めていた会社を早期退職したタイミングで、今までとは全く違うことをやってみたいと考えていて、一次産業がいいかなぁと。御浜町を気に入っていたのでこちらに決めました。農家になってから丸6年で7種類のみかんを育てています。朝一番に起きて1時間ほど釣りに行ってから、農作業をしています」

なんと…趣味の釣りを楽しみつつ、農業をされているのですね!

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―先ほどまでは、どんな作業をされていたのですか?

仲井さん「みかんの木の周りにマルチシートというのが張ってあるのですが、このシートの交換です。この地域は温暖ですが、雨も多いので、みかんに水分が入りすぎないようにこのシートで調整しています。みかんの甘さをコントロールする上で大切な作業なのですよ。あとは、日光が当たりやすく手入れもしやすいよう剪定したり、間引いたりもしています」

なるほど、水分の調節や日当たりでみかんの甘さをコントロールしているんですね!

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仲井さんの畑から帰る途中、袋に入ったみかんを発見。「あれはなんだろう?」と気になり瀬古さんに尋ねてみました!

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「この地域では、冬季は寒さ避けのため、みかんを一つ一つ袋に入れて育てているんです。ここまで手間をかけてみかんを育てている地域は、なかなかないと思いますね」と、瀬古さん。

確かに、みかんがこのように一つ一つ袋に入っているのは初めて見ました。

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大切に育てられたみかんだからこそ、甘くてジューシーに育っているのですね!

 

いかがですか?

三重県内の一次産業の取り組みについて、漁業と農業をピックアップしてご紹介しました。一次産業で働く方の思いも印象的でしたし、一次産業に従事したい方をサポートするような取り組みがあることも初めて知りました。

また、今回の取材先以外の他にも、三重県内での「はたらく」をサポートする取り組みがあるようです。気になる方は、三重暮らしを応援する移住・交流ポータルサイト『ええとこやんか三重』をご覧ください。

 

(掲載情報は、すべて令和2年2月時点のものです)

<今回の取材先はこちら>
★早田漁師塾 (事業主体:三重外湾漁業協同組合 紀州支所 尾鷲事業所 早田)
住所:尾鷲市早田町6-3
電話:0597-29-2039
HP:http://www.owase.com/haida-ryoshi-juku/
★三重南紀元気なみかんの里創生プロジェクト協議会
住所:南牟婁郡御浜町大字下市木2281-2 第3集荷場内 プレハブ2階
電話:05979-3-1707
HP:http://web.kumadoco.net/syuunou/

〔参考〕
★ええとこやんか三重 おしごと
HP:https://www.ijyu.pref.mie.lg.jp/html/list.php?cate=work

 
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