炊飯車両や消防車も完備した「白山分屯基地」【かざり×自衛隊企画vol.2】

2021.9.7

三重県応援キャラクター 兎の助(うさのすけ)

三重県出身、元自衛官タレント・かざりさんが、地元三重県の自衛隊を取材する企画。いよいよ実際の基地、航空自衛隊の「白山分屯基地(はくさんぶんとんきち)」(津市)へ。最新の防衛システムのほか、災害時の支援活動などに用いられるさまざまな装備を取材。さらに若手自衛官のホンネに迫る座談会も実施しました。ふだんはなかなか見ることができない自衛隊基地の裏側を、かざりさんの取材の様子とともにレポートします。

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三重県内に4カ所ある自衛隊の駐屯地・基地

取材の前に、三重地方協力本部 広報班長の永井智輝(ながい ともき)さんに、三重県の自衛隊の概要を教えていただきました。

「三重県内には航空自衛隊の『白山分屯基地(津市白山町)』『笠取山(かさとりやま)分屯基地(津市榊原町)』、陸上自衛隊の『久居(ひさい)駐屯地(津市久居町)』『明野(あけの)駐屯地(伊勢市小俣町)』と、全部で4つの基地・駐屯地があります。

任務としては、国の防衛のほかに、国内での災害発生時に人命救助や行方不明者の捜索などを行う災害派遣活動があり、三重県内では、2011年2月に鳥インフルエンザ被害が発生した南伊勢町、その年の8月に台風12号で大きな被害を受けた県南部に隊員が派遣され、さまざまな活動を行いました。また最近では、2021年に県内で発生が確認された家畜の伝染病「豚熱」の対応などにも、隊員が派遣されています」

「4つの駐屯地・基地のほかに、私が所属する『自衛隊三重地方協力本部(津市)』があります。こちらでは自衛官募集業務を行うほか、より多くの人に自衛隊を知ってもらうために、体験型イベントや音楽隊の演奏会、基地見学などを実施しているんですよ。2019年、2020年と、感染症拡大防止対策で中止になったイベントも多いですが、毎年恒例の行事として、楽しみにしてくださっている地元の人がとても多くて、開催時にはお子さんから年配の方までたくさん来場されます」と永井さん。イベントなどの実施情報は、各施設のHPで随時案内しているのでチェックしてください。

2019年に三重県松阪港で特別公開された「護衛艦じんつう」。海上自衛隊がない三重県では、艦艇が寄港する際の一般見学にも力を入れていて、このときは1,600人が訪れたそう。

津市の「白山分屯基地」は“空の防衛”や災害派遣に対応

「白山分屯基地」のある津市白山町は、津市のほぼ中央に位置し、面積の7割以上を森林が占める自然が豊かな町です。基地は、青山高原もほど近い、標高約700mの山の中にあります。

「白山分屯基地」で用意していただいた作業服を着るかざりさん。同じ迷彩柄でも、海上自衛隊は青、陸上自衛隊は緑、航空自衛隊はグレーとそれぞれ基調となる色が違います。

航空自衛隊である「白山分屯基地」の主な任務は、空の防衛。ペトリオット器材を運用し、空から侵攻してくる脅威を排除するという役割を担っています。もちろん、地震や台風など災害が起きた際には、現場で被災者の方々への給水や給食支援を行い災害派遣にも対応しています。

災害時に威力を発揮するさまざまな装備に注目

「白山分屯基地」自慢の装備を見せてもらいました。この大きな車両は、「ペトリオット発射機」。手前にいるかざりさんと、説明してくださる自衛官がとっても小さく見えます。その大きさがよくわかりますよね。国内にある「地対空誘導弾(ちたいくうゆうどうだん)」のなかで、最も高性能のミサイル発射装置だといわれ、弾道ミサイルなどが外国から日本に向けて発射された場合の破壊措置(はかいそち)を行います。

「間近で見ると、大きさに圧倒されますね」とペトリオットシステムに興味津々のかざりさん。電力は、搭載している発動発電機を使って自前で供給できるそう。
こちらは災害時に活躍する「5t水タンク車」。一気に5,000リットル、ペットボトルにして約1万本分もの水を運ぶことができます。自衛隊員の飲料水の運搬が主な役目ですが、災害時の給水支援にも使われていて、東日本大震災の際にも出動したとのこと。

かざりさん「水は基地から運んでいくんですか?」
担当隊員「基本は空っぽで出動し、現地の浄水場などで水を入れて給水を行います」

こちらは「野外炊具(やがいすいぐ)1号」。屋外で大量の調理を行うことができる車両で、演習時や災害派遣時に、隊員や被災者の方に食事を供給するために使用されます。かまどが6基搭載されていて、約600人分のご飯を45分ほどで炊くことが可能。さらに、生野菜を放り込むだけで、細かく刻んでくれる大型カッターやみじん切りができる機械も搭載されていて、まさに「走るキッチン」です。

スイッチを押してみるかざりさん。火力制御装置やタイマーもついています。

火があがるかまど。ここに鍋などを設置して炊飯や煮物、炒め物などさまざまな料理が作られます。隊員に人気が高いのはカレーライスだそう。
かざりさん「大きなかまどで一度に炊いたごはんがおいしそう!被災現場で温かい食事がいただけるのはうれしいでしょうね」

こちらは「給食運搬車2号」。走る大型冷蔵庫です。

運転席よりも後ろのスペースに冷蔵機能を搭載。冬場は0度、夏場はマイナス5度で、約400キロ分の食材を積むことができるのだそう。
かざりさん「これなら食材を安全に運べそうですね。」

災害支援を行う現場では火災が発生していることも。「白山分屯基地」には建物火災用の消防車も配備されています。

「もしよければ運転席に」と隊員に促され笑顔で乗り込んだかざりさん

放水体験もさせてもらいました。搭載した約2,000リットルの水を、ターレットという放水銃のようなものを使い、高圧で遠くまで飛ばします。「放水始め!」と隊員が号令をかけると、勢いよく水が噴射。「おお~! けっこう腕に圧が来ますね!」とその勢いを体感していました。
約1,000度の温度まで耐えられる特殊な防火衣(ぼうかい)を着ての作業に「めちゃくちゃ暑い~!」と悲鳴も。

若手自衛官に聞きました。仕事のやりがい、目標は?

20代の若手隊員もたくさん勤務している「白山分屯基地」。かざりさんとは同世代。ざっくばらんな雰囲気でインタビューをさせてもらいました。

今回参加してくれたのは、左から大川(おおかわ)1士、新井(あらい)3曹、瀨川(せがわ)士長、かざりさんを挟んで、石坂(いしざか)士長、増原(ますはら)士長、蓮池(はすいけ)3曹の6人です。

かざりさん「自衛隊に入ろうと思ったきっかけはなんですか?」
新井3曹「陸上自衛官の兄の影響で入隊を決めました。友達は”入るの!?”って感じで驚いていましたが、家族は大賛成でした。入る前には鬼のような怖い上官がいて、しごかれるというイメージを勝手に持っていましたが(笑)。実際に入ってみると、そんなことはなくて。むしろ丁寧に育ててくれる環境だということをすごく感じました」

かざりさん「陸海空とある中で、なぜ航空自衛隊を?」
蓮池3曹「航空自衛隊が一番かっこいいなと思って(笑)。兄が航空関係で働いているので、小さな頃から航空機などを目にする機会が多く、興味があったということもあります」

かざりさん「働いていてやりがいを感じることは?」
石坂士長「私は車両整備を担当しています。車両は人の命を乗せるものなので、ささいな不具合でも、見逃すと大きな事故につながることも。ひとつずつ丁寧に手を抜かない、地道な作業の積み重ねに、整備員としてのやりがいを感じますね」

かざりさん「ほかの航空自衛隊の基地に、ここは負けない!というポイントはありますか?」
増原士長「白山はとにかく食事がおいしいです。3食ともすべておいしくて、本当にここで勤務できてよかったなって思います。一番好きなのはカレーです!」と食事が、何より日々の活力になっていることを明かしてくれました。

かざりさん「三重県に配属されて、三重県に対する印象は変わりましたか?」
大川1士「自分は静岡県出身で、三重県に特別な印象は持っていなかったのですが、配属されてみて感じたのは、とにかく食べ物がおいしいということ。まだ来て半年くらいしか経ってないんですが、気候も良く、街の人の雰囲気も温かいので、すごく好きになりました。今は、ここにずっと住みたいなと感じています」
かざりさん「地元なので、そういってもらえるとうれしい! 食べ物のおいしさもそうですし、自然が多いのも三重県の魅力ですよね」

かざりさん「将来の夢はありますか?」
瀨川士長「将来は副官付(ふくかんづき)っていう仕事をしてみたいですね。副官付とは司令官をマネージャー的に補佐したり、業務を手伝う職務のこと。副官付を通して、知識や技術の向上をめざし、自衛隊に貢献していけたらと思います」
蓮池3曹「二年後に幹部候補生の試験を受けられるようになるので、その試験に合格して、幹部自衛官になりたいと思っています。そのためにこれから勉強して、しっかり一回で合格したいですね」
石坂士長「車両整備員としてのステップアップはもちろんですが、将来的には広報官をやってみたいと思っています。出身地の熊本県で広報活動ができればうれしいです」

取材後に、かざりさんにインタビューの感想を聞きました。
「みなさんの取材を終えて、”仲がいいなぁ”というのがとても印象に残りました。また『将来はこういう自衛官になりたい』というビジョンをしっかり持って、仕事に取り組んでいる姿も印象的。私が自衛官だったときは『広報の仕事がしたい』という目標を持っていましたが、同じく広報官をめざす人がいらっしゃったことも、うれしく感じました」

名物「ギョーザ空上げ(からあげ)」って?お土産の日本酒にも注目

日々訓練にいそしむ隊員にとって、美味しい食事は何よりの元気のもと。基地で暮らす隊員に3食を提供する食堂にもお邪魔しました。(基地見学やイベントなど特別の日以外は、一般の人は利用することができません)

全国の航空自衛隊では、「より上をめざす」という思いを込め、食堂メニューの唐揚げを「空上げ(からあげ)」と呼び、地元食材を使ったり、オリジナルなレシピを考案したりして、ご当地感を出しているそうです。白山分屯基地の「空上げ」は「ギョーザ空上げ」。津市のご当地メニューである「津餃子」をヒントにしていて、大葉で包んだ合い挽きミンチを、さらに鶏もも肉で包んで揚げた、手間のかかった一品です。

からっと揚げられた「空上げ」は、下味もしっかり。「おいしい! ご飯にもよく合う!」と大感激のかざりさん。1カ月に1回はメニューに登場するそう。「空上げ」としては、この「ギョーザ空上げ」以外にも、赤味噌を使ったものや、京都の七味を使ったものなどが提供されているとのこと。また、「白山分屯基地」では、伊勢うどんや手こね寿司といった、三重県ならではのご当地メニューも登場するそうです。

売店もあり、こちらは基地見学の際には、一般の人も利用することができます。担当の方に伺ったところ、オススメは三重県の酒蔵、若戎酒造(わかえびすしゅぞう)とタッグを組んで作られた「白山分屯基地オリジナルラベル 義左衛門(ぎざえもん)」(720ml ・1,270円)。2021年7月に完成したばかりだそうです。

~取材を終えて<かざりレポート>~
白山分屯基地で、まず驚いたのが、伊勢湾を見渡せるような山の上に位置していること。航空自衛隊の基地で、山の上にあるところは初めて訪れたので、とっても新鮮でした。白山分屯基地には、第4高射群第14高射隊が所在していて、間近で地対空誘導弾システム「ペトリオット」を見ることができたのも貴重な体験。かなり、テンションが上がりました! また、災害派遣でも活躍している、5,000リットル水タンク車や、大人数のご飯を一度に作ることができる野外炊具1号も、装備として知ってはいましたが、今回間近で見学することができてうれしかったですね。
(取材は、緊急事態宣言発令前に、感染拡大防止に配慮して実施しました)

かざり×自衛隊取材の第一弾は「白山分屯基地」を紹介しました。「白山分屯基地」では、一般の人を対象にした基地見学や、イベント開催を行っています。「航空自衛隊の基地を見てみたい!」という人は最新の情報をHPで確認してください。

次回は、陸上自衛隊の「久居駐屯地」の取材の様子をお届けします。

◇今回取材した施設
自衛隊三重地方協力本部
津市桜橋1-91
℡ 059-225-0531
URL https://www.mod.go.jp/pco/mie/

航空自衛隊 白山分屯基地
津市白山町大原297
℡ 059-269-3111
URL https://www.mod.go.jp/asdf/hakusan/