「久居駐屯地」の女性自衛官にインタビュー【かざり×自衛隊企画vol.3】

2021.9.13

三重県応援キャラクター 兎の助(うさのすけ)

三重県出身、元自衛官のタレント・かざりさんが、三重県の自衛隊を取材する企画。基地訪問2回目の今回は、津市にある陸上自衛隊「久居駐屯地(ひさいちゅうとんち)」へ。災害時に威力を発揮するという「人命救助システム」や、基地で働く女性自衛官を、かざりさんが取材する様子をレポートします。国の防衛だけでなく、三重県全域への災害派遣など、幅広い任務に対応する「久居駐屯地」。ふだんは見られない基地の裏側に注目を。

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100年を超える歴史を持つ「久居駐屯地」

久居駐屯地で用意していただいた陸上自衛隊の作業服に身を包むかざりさん。陸上自衛隊の迷彩の基調となるカラーは緑、航空自衛隊はグレーと、自衛隊によって異なります。ご存じでしたか?

近鉄名古屋線の久居駅から徒歩5分。住宅地の中にあり、駐屯地見学などには多くの人が訪れる陸上自衛隊「久居駐屯地」。前身は1908年(明治41年)に開設された旧日本陸軍の駐屯地。100年以上の歴史を持っています。駐屯する第33普通科連隊は、三重県全域の防衛や警備を担当する要となる部隊。災害発生時にはすばやく救助活動などができるよう、自治体の防災訓練にも積極的に参加して連携を深めています。

女性自衛官にインタビュー! 苦労ややりがいは?

自衛隊でも、出産・育児休暇、時短勤務などさまざまな仕組みが整備され、入隊する女性自衛官の人数は年々増えています。「久居駐屯地」では総勢約50名の女性自衛官が活躍中。訓練の厳しさ、苦労や、やりがいについてお話をお聞きしました。

協力していただいたのは、右から吉川(よしかわ)2曹、石原(いしはら)3曹、普天間(ふてんま)士長の3人。元自衛官のかざりさんとともに、ざっくばらんな女子トークを行っていただきました。

かざりさん「自衛隊に入ったきっかけはなんですか?」
吉川2曹「阪神・淡路大震災が高校3年のときに起きました。そのとき、救出活動を行ったり、炊き出しで被災者支援をする自衛隊の活動を見ていて、『私もこういう仕事をしてみたい』と思ったのがきっかけです」
普天間士長「私は、東日本大震災で、自衛隊が懸命に捜索活動をする様子をテレビで見たことがきっかけですね」

かざりさん「女性自衛官ならではの苦労はありますか?」
普天間士長「男性と同じ訓練を受けるので、慣れるまでは体力面で非常に苦労しました。また、女性自衛官共通の悩みだと思いますが、演習先などで女性用トイレがないのは大変ですね」

行進訓練を行う石原3曹(画像提供:第33普通科連隊)

かざりさん「女性自衛官でよかったなと思うことはありますか?」
吉川2曹「最近は女性自衛官の人数も増えていますが、男性に比べると比率は少ないです。男性は、中隊といって所属する部隊ごとに営内生活を送りますが、女性は人数が少ない分、いろんな部隊の融合体で生活するので、駐屯地内で横のつながりを持てます。ほかの部隊の話をいろいろ参考にして、業務の進め方の改善点を考えたり、将来の目標を立てたりと、広い視点を持って働けるのが女性自衛官のいいところですね」

かざりさん「私は、自衛官時代、移動中に子どもたちが手を振ってくれたことが嬉しかったです。みなさんはそういう喜びを感じる瞬間はありますか?」
石原3曹「災害時に、衛生支援として、被災された方々の健康管理などのために、現場に行くことがあります。直接触れあった方にありがとうと言ってもらえると、うれしいですね。また業務では、ほかの隊員とコミュニケーションをとりながら連携しなければいけない場面がありますが、スムーズに進められたときは、連帯感や達成感を感じます」

かざりさん「みなさん一度は災害派遣を経験されていると聞きました」
石原3曹「新型コロナウイルス感染症の流行当初、隔離施設(かくりしせつ)になったホテルに衛生支援に行ったことがあります。ホテルスタッフとして勤務されている方も、正しく防護服を着脱しないと、その方々が感染してしまう恐れがある。正しい知識をしっかり伝えることの大変さを感じました」
普天間士長「2019年、三重県内の養豚場で豚熱が発生した際の現場に派遣されました。現場では、殺処分する豚を追い立てる、殺処分の支援、殺処分した豚の小移動という3つの役割分担で動いていたんですが、精神的にも、肉体的にも過酷な現場でした。今思い出してもかなり辛かったです」

吉川2曹「ライフラインが満足に整っていない現場へ行ったときのこと。被災されてから間もない時期で、ショックのため心を閉ざしていて、支援を受け入れられない人がいました。しかし、毎日挨拶を交わすなど地道に言葉を交わしていくなかで、少しずつ気持ちが通じ合えるようになっていったのが、うれしかったです」
みなさん、それぞれの現場での貴重な経験を披露してくれました。

かざりさん「今後やってみたいこと、チャレンジしたいことはありますか?」
普天間士長「もともと海外での活動が気になっていたので、PKOに行ってみたいですね。ただ英語はまだまだなので、これから勉強します」
石原3曹「私は、現在、放射線技師の試験を受けています。合格すれば、自衛隊の病院など、資格を活かせる現場で勤務したいと考えています」
吉川2曹「若い人たちをサポートする広報官になりたいです」

かざりさん「自衛隊に興味を持っている人たちへメッセージを」
石原3曹「体力はそれほどいらないので、心配しなくていいと思います。ちなみに、髪の毛が伸ばせないと思っている女性の方がいるかもしれませんが、それも最初の基礎的な教育が行われるうちだけ。それが終われば、自由なヘアスタイルにしてもいいですし、オシャレもできますよ」

吉川2曹「いろんな職種、分野の業務があって、それにチャレンジできるのが自衛隊のいいところかなと思います。もちろん入ってから決めても大丈夫です。また公務員で安定しているというのも、大事な要素でもあります。まずは興味があればチャレンジしてほしいですね」

取材の最後に、石原3曹にらっぱの吹き方を教えてもらうかざりさん。石原3曹は後輩の指導も行っていて、師団大会での優勝経験もあるという腕前の持ち主でもあります。
実際に「起床」「消灯」の2曲を演奏してもらいました。

取材後も、三重県の美味しいものや、行ってみたいところなど女子トークが止まらないかざりさんと自衛隊員のみなさん。

かざりさんにインタビューの感想を聞きました
「久居駐屯地の女性隊員のみなさんは、とても明るくてはつらつとしていらっしゃって、お話して、私自身もパワーをいただきました! 災害派遣の経験についても伺いましたが、厳しい状況下でも、挫けることなくきっちりと業務をこなす姿は、本当に素晴らしい。私も、そんなカッコいい女性自衛官になりたかったな…とうらやましく思いました」

人命救助のための様々な装備を体験

久居駐屯地は、三重県内での災害時に、被害者救出活動などの役割を担うこともあります。災害時に用いられる装備の一つが「人命救助システム」。救助のためのさまざまな資材や機材をひとつのコンテナにユニット式でまとめたもので、「ピストン式破壊工具」「油圧式カッター」などから、「音響探知機」「画像探査機」などまでがスムーズに使えるよう一つにまとめられています。その中から、いくつかの機材を実際に体験させてもらいました。

音を頼りに被災者を救助するための「音響探知機」。

「小さな音が、めちゃくちゃよく聞こえます!」と驚くかざりさん

隊員がセンサーの近くで足踏みすると「すいません、ちょっとうるさいかも(笑)」とつぶやき、隊員たちから笑いがこぼれる一幕も。

続いては「画像探査機」です。これは手元の機械についたダイヤルを回すと、チューブが自由に動き、先端についたカメラで狭い場所の中を見ることができるというもの。こちらも、がれきの中の被災者救出の際などに使われます。

操作方法を聞き、用意された箱の中に入れられたものを確認します。自分でダイヤルを回し、チューブ先端のカメラが動くと「すごい!はっきり見えます」と歓声を上げていました。

ほかにもブロックを割るための「ピック付バール」や「ピストン式破壊工具」、鉄筋コンクリートの芯に使われる棒鋼を切断する「油圧式カッター」など、各機材についての詳細な説明を受けました。「あらゆる災害状況を想定した機材が準備されているんですね」とかざりさんも感心しきりです。

こちらの車両は隊員の間では「オート」と呼ばれている「偵察用オートバイ」。小回りがきくことから、災害派遣の現場でも活躍します。

隊員が訓練のときなどに背負う個人装具を装着させてもらったかざりさん。テッパチと呼ばれる鉄のヘルメット「88式鉄帽」、防弾チョッキ、さらに着替えや水分などが入った背嚢(はいのう)と呼ばれるリュックを背負います。兎の助も一緒に背負われているのはご愛嬌。

担当隊員「背嚢は、今回は約10㎏ですが、通常は15〜20㎏。特別な訓練を受けたレンジャーは40㎏以上を背負って訓練に参加することもあります」
かざりさん「現役のころは、あまり装備品を装着したことがなかったんですが、かなりずっしりとした重さですね。これだけの重さを背負って訓練をしている隊員さんたちはやっぱりすごい!」

工夫をこらした食堂メニューで隊員の活動をサポート

日々、過酷な訓練を受けている隊員たちを支えるのは、なんといっても食事。続いては、隊員の3食をサポートする食堂を取材しました。久居駐屯地の食堂にはオリジナルメニュー「久居めし」があるそうです。

5年ほど前から提供を始めたオリジナルメニュー。転勤した隊員が別の駐屯地に行っても、「久居の食事はおいしかったな」と思い出してもらえるものを作りたいと、管理栄養士らが考案しました。「久居勝利の勝つカレー」「久居からあげ丼」「鷹の油麺」など、ネーミングもインパクト抜群。三重県産の食材を使うなど、地産地消も考えられています。基地内に隊員がたくさん出勤している日を選んで毎月1日だけ提供。かなりの人気で品切れになることもあるそうです。


ちなみに取材日は、残念ながら「久居めし」の日ではありませんでした。でも、「全国ご当地メニューの日」ということで、名古屋の「あんかけスパゲティー」を実食しました。かざりさんも「ボリュームたっぷりで、めちゃくちゃおいしかったです!」と大満足です。「帯広豚丼」や「青森味噌カレー牛乳ラーメン」、また「四日市とんてき」や「津ギョーザ」などの三重県ご当地メニューが登場することもあるそう。

これほどまでに自衛隊の食堂メニューが充実しているとは驚きです。一般の人が参加できるイベントが実施されたときや、基地見学の参加者などは、タイミングがあえば、食堂でごはんを食べられることもあるそう。
「久居駐屯地」では、「久居駐屯地さくら祭り」や「サマーフェスタin久居」など、年間を通して、一般の人が参加できるイベントをたくさん開催し、地元の人たちとのふれあいも大切にしています。興味がある人は、「久居駐屯地」のHPで確認を。

久居駐屯地には、グッズや食品などを販売する「TOMO SHOP」「BOEKOS」の2つの売店があります。こちらはイベントや基地見学の際には一般の人も利用できるそうです。

人気が高いのは、旧久居市の市の鳥オオタカがデザインされた「ワッペン」(770円)。かざりさんもお買い上げ! 
この、久居駐屯地の隊員のレンジャー帰還式の様子が写真で入っている「紙袋」(250円)もよく売れるのだそう
取材の最後はみんなで記念撮影

~取材を終えて<かざりレポート>~
「久居駐屯地のみなさんは、明るくてパワフルな方が多く、お話ししていて元気を貰えました。近鉄久居駅から徒歩5分と、駅からとても近い場所にある駐屯地。その便利さにも驚きました。普段、近鉄名古屋線を利用する方は、電車の窓から駐屯地を見たことがあるかもしれませんね。コロナ禍がおさまり、駐屯地のイベントが開催できるようになったら、ぜひたくさんの方に訪れてほしいなと思いました」


次回は、陸上自衛隊「明野駐屯地」取材の様子をお届けします。
(取材は、緊急事態宣言発令前に、感染拡大防止に配慮して実施しました)

<今回取材した施設>
自衛隊三重地方協力本部
津市桜橋1-91
℡ 059-225-0531
URLhttps://www.mod.go.jp/pco/mie/

陸上自衛隊 久居駐屯地
津市久居新町975
℡ 059-255-3133
URL https://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/sta/hisai/