三重県のローカルチェーン店が県民に愛されている理由とは?

2021.5.7

旅行大好き ぐーたらライター 宮崎優子

「あじへい」「513BAKERY」「おにぎりの桃太郎」「一升びん」…。三重県では、あちこちで目にするこれらのお店、あなたは知っていますか? 実はすべて三重県発祥のローカルチェーン店。全国的な知名度はそれほどありませんが、県民にとっては昔から当たり前のように存在し、世代を越えて愛されてきた地元グルメ。他県の人にとっては、ご当地限定ものとしてお土産にしたり、話のネタにもなったりとめずらしい存在。そんな三重県の人気ローカルチェーンが、愛され続けている理由を探ります。

Index
・親子3代続くファンも。ファミリー中華チェーン「あじへい」
・焼きたてと手づくりへのこだわり 休憩もできる「513BAKERY」
・まだまだある!三重県発祥のローカルチェーン店

親子3代続くファンも。ファミリー中華チェーン「あじへい」

三重県在住者であればこの看板に見覚えのある人も多いのではないでしょうか?
ラーメン・餃子を中心に、「チンジャオロース」や「回鍋肉(ほいこーろー)」といった本格的の中華料理が楽しめる人気の中華料理チェーン店「あじへい」。7坪半という小さなラーメン店からスタートし、1972年に「あじへい」1号店を松阪市で創業。現在では三重県だけで50店舗を運営するまでに成長しました。「あじへい」人気の秘密を、株式会社ダイム常務取締役の城塚政三(じょうづか まさみ)さんにお聞きしたいと思います。

お子様メニューや、季節限定メニュー、食後のデザートまで豊富な品ぞろえが特徴の「あじへい」。まずは、数あるメニューの中から城塚さんオススメのメニューBEST3を教えて頂きました。

城塚さん「12種類あるラーメンのなかでも一番人気は、店名を冠した『あじへいラーメン』(770円)です。ラーメンの命であるスープは、各店で一から仕込んでいます。鶏と豚骨をベースに様々な食材を弱火でコトコト煮込み、サラッとした口当たりですがコクのあるスープに仕上げました」

さらに、注文ごとに、スープとざく切りの白菜と豚バラ肉を、小鍋で一緒に煮込んでいるそう。そうすることで、具材の旨味がスープに溶け出し、より深い味わいになるんだとか。「一度食べたらクセになる」と言われているスープの秘密は、この手間を惜しまない味へのこだわりにあったんですね。

ラーメンと並ぶあじへいの看板メニューが「焼餃子」(320円・6個)

餃子は時間が経つと味が落ちてしまうので、毎朝、自社工場で練った餡(あん)を皮に包んで、各店舗に配送しています。できたてならではの、パリッとした皮の食感とジューシーな餡がたまりません。

3品目は意外にも「回鍋肉」(660円)

城塚さん「今では中華料理の定番として知られていますが、『あじへい』ではそこまでメジャーになる以前からいち早くお店で提供していました。甘辛味噌と豚肉のコク、野菜の甘みは、ごはんによく合うと思います」

ほかにも職人技でパラパラに仕上げた「炒飯」(570円)や、外はカリっと中は柔らかジューシーに仕上げた「から揚げ」(600円)もオススメだそうです。ちなみに、メニューは全商品テイクアウトOK。お店の味を家庭でも気軽に味わえるのもありがたいですね。

◇「あじへい」のコンセプトは?
城塚さん「中華のファミリーレストランとして、ご家族でおいしい中華料理をリーズナブルに楽しんでいただけるお店をめざしています」

小さな子ども連れでも利用しやすいよう、全店舗に座敷席を完備

◇三重県以外にも店舗を増やす予定はないのですか?
城塚さん「現在、愛知県で3店、岐阜県で1店出店しています。物流や管理の面から、これ以上広げて商品やサービスの質を落としたくないので、基本的に他府県での出店はあまり考えていません」

◇「あじへい」が地元の人に愛されている理由はどこにあると思いますか?
城塚さん「やはり地域のお客様と距離が近い店づくりをしているところでしょうか。中でも1987年に始まった『ちびっこクラブ』は当社ならではのサービスだと思います。小学6年生以下なら、入会金200円で誰でも入会できて、小学校を卒業するまで様々な特典が受けられます。現在約7万人の方が入会された人気のサービスなんですよ」

◇すごい数の会員数ですね。どんな特典が受けられるのですか?
城塚さん「誕生日限定でデザートや、『料理長から自慢の一品』として炒飯などがついた豪華ラーメンセットを無料で食べていただけます。また、年末にアニメキャラクターのカレンダープレゼントや、会員限定のイベントへの参加も充実しています。特に人気なのが5,000坪ある自社農園で行うサツマイモ掘り体験。親子で楽しめるのはもちろん、子どもの食育や地域イベントとしても人気で、多い時には6,000人もの方が参加する一大イベントになっています」

◇どうして「ちびっこクラブ」を作ったのですか?
城塚さん「もともとは、社員の子どもを対象にクリスマス会やBBQ会などを開いていたのですが、せっかくなら地域の子どもたちにも楽しんでもらおうと考えたのがきっかけです。『ちびっこクラブ』ができて30年以上経ちますが、今では会員を卒業された方が家族を持ち、自分の子どもも入会させたいという声をいただくことが増えました。お子さん、さらにお孫さんと、世代を越えて『あじへい』ファンの輪が広がっているのはとてもうれしいですし、今後もそうしたご期待を裏切らないよう精進していきたいと思っています」

焼きたてと手づくりへのこだわり 休憩もできる「513BAKERY」

三重県内を車で走っているとしばしば目にする大きな「513」の文字。こちらも三重県民にはおなじみのベーカリー「513(こいさん) BAKERY」です。

2010年松阪市高町に1号店が誕生。現在、三重県と愛知県に11店舗を展開しています。全店舗に広々とした駐車スペースとイートインスペースを完備していて、一見するとファミリーレストランのよう。また無料で飲めるコーヒーやキッズルーム併設(鈴鹿店、ららぽーと名古屋みなとアクルス店を除く)など、独自のサービスを展開する「513BAKERY」について、ベーカリー事業部部長の佐野友弘(さの ともひろ)さんにお話を伺いました。

まずは、佐野さんオススメのパンBEST3をご紹介します。

「自家製牛肉ゴロゴロカレーパン」(205円)

佐野さん「外側はカリカリの生地。中にはお肉がゴロゴロ入った自家製カレーをたっぷり入れていて、揚げたては絶品ですよ。200店ほどのお店が参加して、全国規模で実施されている『カレーパンⓇグランプリ』では、過去2回金賞を受賞したこともある、513不動の人気ナンバーワン商品です」

「台湾ドーナツ(ミルク)」 (216円)

佐野さん「こちらは、日本では513が初めて販売したと自負している台湾のスイーツです。外はカリカリで中はふわふわの食感。昔の給食の揚げパンのような、どこか懐かしい不思議な味わいがクセになると評判をいただいています」

「特製松阪牛サンド」 (464円)

佐野さん「津市の老舗精肉店『朝日屋』の松阪牛を贅沢に使用した、土・日限定販売のプレミアムサンドです。特製ダレで味付けした旨味たっぷりの松阪牛が歯切れのよいパンでサンドされています。松阪牛をこの価格で食べられるのはかなりお得。松阪・伊勢の店舗にて数量限定で販売しています」

◇「513BAKERY」のパンの特徴を教えてください。
佐野さん「1号店のオープン当初から焼きたてと手作りにこだわっています。生地は各店ごとに粉から仕込んでいて、一度にたくさん焼くのではなく少量ずつ焼き上げることで、常に店頭に焼きたてのパンが並ぶように調整しているんです」

◇すごく手間がかかるのでは?
佐野さん「確かに手間はかかりますが、やはりパンは焼きたてが一番おいしいので、こちらに関しては譲れないですね」

焼きたてパンがズラリと並ぶ店内。常に良い香りが広がっています。

◇パンの種類はどのくらいありますか?
佐野さん「子どもからお年寄りまで幅広く食べていただけるよう、ハード系のパンよりもソフトな食感のパンがメイン。おかずパンや菓子パン・サンドイッチなど常時80種類のパンを揃えています。また、定番商品のほか、新商品も毎月10品ほど登場。季節やイベントにあわせてパンの内容も色々変わりますので、今日はどれにしようかと選ぶワクワク感も味わっていただけたらと思います」

◇なぜ、イートインスペース完備やコーヒー無料など独自サービスを始められたのでしょうか?
佐野さん「パンは焼きたてが一番おいしいのですが、買って帰るとどうしても冷めてしまいますよね。当店のコンセプトでもある『焼きたて熱々のパン』をどうしても皆さんに味わっていただきたかったので、買ったその場で食べていただけるよう、イートインスペースを設置しました。さらに、ゆったりとくつろいで味わってほしいという思いから、コーヒー(またはスープ)も無料でサービスするようになったんです」

広々として開放的なイートインスペース

◇パンをよりおいしく食べて頂くためのサービスとして始められたんですね。
佐野さん「当初はそのためのサービスでしたが、今では散歩がてらに気軽に立ち寄っていただける、地域のちょっとしたふれあいや憩いの場として、たくさんの方が利用してくださっています。また店舗によっては、イートインスペースのほかにも、キッズルームやこども図書館もあり、小さな子どもと一緒に来店されても気兼ねなくお買い物を楽しんでいただけるようにしています。おいしいパンとともに、ほっと一息ついていただける癒しのひと時を提供していけたら嬉しいですね」

まだまだある!三重県発祥のローカルチェーン店

地元の人なら誰でも一度は訪れたことがあるという飲食チェーン店はほかにも。そんなローカルチェーンを、おすすめメニューと共にご紹介。

A5ランクの松阪牛をリーズナブルにいただける「一升びん」

(写真提供:「一升びん」)

創業50年を超える「一升びん(いっしょうびん)」は三重県に11店、愛知県に1店出店している焼肉店。牛肉の最高峰ともいわれる松阪牛を一頭買い。貴重な松阪牛ホルモンやシャトーブリアンのほか、通常はすき焼きやしゃぶしゃぶとして食べられるA5ランクの牛肉を焼肉として提供し、しかもリーズナブルに味わうことができます。ちなみに「一升びん宮町店」は全国的にも珍しい「回転焼肉」を始めたお店としても有名。そんなちょっとした遊び心も三重県人のハートをがっちりつかんでいます。

「松阪牛A5セット」(6,000円)(写真提供:「一升びん」)

松阪牛の特撰ロース、松阪牛上カルビ、松阪牛上ホルモン盛り合わせ、キムチが一度に味わえるお値打ちなセットです。

(写真提供:「一升びん」)

「一升びん」の人気の秘密は高級牛をお得な価格で食べられるだけではありません。この秘伝の味噌ダレ。 1962年の創業以来、脈々と受け継がれてきた門外不出のタレだそうです。コクがありながらも、あくまでも肉の味わいを最大限引き立たせる脇役として絶妙な味わいです。

おにぎりメインのファミリーレストラン?!「おにぎりの桃太郎」

(写真提供:「おにぎりの桃太郎」)

四日市市を中心に16店舗を展開するおにぎり専門店「おにぎりの桃太郎」。おいしいおにぎりにするため、三重県産のコシヒカリなどさまざまな種類のお米をブレンド。その比率は、研究しながら常に変えているそうです。また強い火力で炊き上げるほど、中で対流が生まれ、おいしいごはんになることから、本社工場では「プロパンガス」を採用し、大量のお米を一気に炊き上げています。そうしたさまざまなこだわりから生まれたのが、お米の甘みが特徴的な桃太郎のおにぎりです。

また本社にあるシンボルタワーの頂上にある桃(写真上部)からは、1日5回、軽快なメロディーとともに、おにぎりをほおばる桃太郎の人形が登場。地元ではちょっとした名物スポットとして親しまれているそうです。

身長4m強の巨大な桃太郎登場の様子(写真提供:「おにぎりの桃太郎」)
(写真提供:「おにぎりの桃太郎」)

人気の商品「味」(165円・写真左)は、いわゆるかやくごはんのおにぎり。ほかにも定番の「さけ」(165円)などのおにぎりや、「とりカラ」(185円)「だし巻玉子」(120円)などが人気だそう。さらに、「うどん」(写真右)「どんぶりもの」「カレーライス」のほか「朝食セット」「夕食セット」「ぜんざい」まで、もはやファミリーレストランともいえる幅広いラインアップが特徴です。 

ここまで、三重県民には圧倒的知名度を誇るさまざまなローカルチェーンをご紹介してきました。どのお店も味や飲食店としてのホスピタリティーがすばらしいのはもちろん、地域に根差したサービスや活動をされているからこそ、長年地元民からも愛されているのが伝わってきます。三重県を訪れた際は、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

<今回の取材先はコチラ>
あじへい上地店
住所:伊勢市上地町下起2587-2
電車:JR宮川駅から徒歩約16分
電話:0596-23-6240
時間:11:00~24:00
休日:無休
URL: https://dime-group.jp/
513BAKERY 三重松阪川井町店
住所:伊勢市本町13-6
住所:松阪市川井町749-1
電車:JR・近鉄松阪駅から車で約10分
電話:0598-22-0513
時間:平日9:00~19:30、土日祝 7:30~19:30
休日:火曜日(祝日の場合は水曜日)
URL: http://www.513bakery.jp/
一升びん本店
住所:松阪市南町232-3
電車:JR・近鉄松阪駅から15分
電話:0598-26-4457
時間:11:00~21:30(21:00LO)
休日:無休
URL: https://www.isshobin.com/
おにぎりの桃太郎 久保田本店
住所:四日市市久保田1-6-54
電車:近鉄中川原駅から徒歩約10分
電話:059-352-2195
時間:7:00~20:00
休日:無休※元日、2日は除く
URL:https://onigiri-momotaro.jp/
※営業時間は取材時のものであり、新型コロナウイルス感染症にかかる時短要請等により変更の可能性があります。