食の宝庫!伊勢志摩の恵みが詰まったご当地バゲットサンドの魅力に迫る

2021.12.10

おでかけ情報はおまかせ 内山真紀

漁業が盛んで海の幸に恵まれている三重県。中でも、特に伊勢志摩地方は、漁業も農業もさかん。古くから、食材が豊富という意味の「御食国(みけつくに)」と呼ばれていた歴史があります。そんな、伊勢志摩の食材をたっぷり味わえると話題のご当地バゲットサンドがあると聞き、2020年7月に志摩市にオープンした「Cafe Entrada(カフェ エントラーダ)」を取材しました。※記事中の価格は税込み。

港町にオープンした、バゲットサンド専門店

白を基調としたオシャレな外観

英虞湾(あごわん)に浮かぶ賢島(かしこじま)。近鉄賢島駅から歩いてすぐの場所に「Cafe Entrada」はあります。海上タクシーやクルーズ船を運営する「Entrada賢島」の1階にあり、目の前に穏やかな海が広がる気持ちの良い場所です。

インテリアやディスプレイにもこだわりが感じられる、オシャレでかわいいこちらのお店では、バゲットサンドは定番商品が5種、週替わりと季節商品がそれぞれ2種、フルーツサンドが3種あり、テイクアウトでいただけます。海の幸から山の幸まで、地元産食材にこだわった、見た目も華やかなラインアップです。

店内にはカウンター席があり、ホッとひと息つけます。

2020年のオープン以来、順調に観光客や地元リピーターが増え、中には、朝食は宿泊したホテルで食べて、ランチは「Cafe Entrada」でテイクアウトし、帰りの電車や車で食べるという人も。お店を運営する3人の女性は、実は全員が県外からの移住者。出会いのきっかけ、オープンまでの道のりから、バゲットサンドを通じて届けたい思いなどをうかがいました。

「地元食材の魅力と生産者の情熱を伝えたい」その思いをきっかけに

代表を務める愛知県出身の森 明日香(もり あすか)さん、東京都出身の横山希代子(よこやま きよこ)さん、滋賀県出身の小掠絵美子(おぐら えみこ)さん(右から)。みなさん、ステキな笑顔が印象的です。出身地も経歴もまったく違う3人の女性が志摩で出会い、「伊勢志摩のおいしいものをたくさんの人に届けたい」という思いで結ばれ誕生したのが「Cafe Entrada」なんです。

◇みなさん、県外からの移住なんですよね。どういったきっかけで志摩市へ?
横山さん「夫の転職を機に20年ほど前に移住してきました。サッカーに打ち込む息子をサポートしたくてスポーツ栄養学を学び、今は栄養アドバイザーとして活動しています」

小掠さん「私は滋賀で和食の料理人として働いていたんですが、時間が不規則な職場で体を壊してしまって。ちょっと環境を変えたいなと思い、志摩スペイン村の短期アルバイトに応募したのが三重県に来たきっかけです。自然に囲まれたのんびりとした空気感が自分に合っていたようで、短期のつもりが1年、2年と経つうちに、夫と出会って結婚し、永住になりました」

森さん「両親が伊勢に移住したのがきっかけで、5年前にこちらに来ました。以前は保育士をしながら『地球一周の船旅』に参加したり、アジアを周遊したりしていたんです。その時に、いろんな人たちと出会い、生産者の思いを消費者に届ける仕事がしたいと思ったのが、カフェオープンにつながりました」

◇3人はどのようにして出会ったんですか?
森さん「2019年の春に、志摩市内で開催している『みそかどき』という集まりに参加したのがきっかけです。志摩市内で毎月31日に開催され、やりたいこと、始めたいことなどをテーマに発表し、その実現を応援するコミュニティなんですが、そこで私が語った『カフェを立ち上げたい』という夢に、2人が賛同してくれたのが始まりです」

横山さん「私も小掠さんも“食”に関する仕事をしていて、伊勢志摩の地元の食材に、とても魅力を感じていました。森さんの”生産者さんの思いを発信できるお店を作りたい”というコンセプトに、二人とも強く共感したんです」

栄養アドバイザーの横山さんは、食の大切さを伝える「Food of Life(ふーど おぶ らいふ)」を主宰し、健康にまつわる幅広い講座を開催しています。

「お客さんにはバゲットサンドを食べて元気になってもらいたいので、商品開発では栄養面もしっかり考えているんですよ」という横山さんが監修した栄養情報はポップとして店内に掲示。丁寧に書かれた内容を読みこんで、メニュー選びの参考にする人も多いのだそうです。

◇志摩あおさ豚、蓮台寺柿など、メニューには地元食材がふんだんに使われていますね?
小掠さん「何と言ってもおいしいものがたくさんあるのが伊勢志摩の魅力。海の幸はもちろんですけど、お肉や果物、野菜など何でもそろいます。素晴らしい食材に囲まれていると、どんどんアイデアが浮かぶんですよ」
森さん「食材を手がける生産者さんもステキな方ばかり。『みそかどき』で出会った人も多く、農産・畜産への熱い思いをお聞きして、ぜひ一緒にやりましょう! と意気投合した生産者さんもいらっしゃいます。食材と一緒に、生産者さんのことを、もっともっとたくさんの人に伝えたい、という思いが『Cafe Entrada』の原動力になっています」

そんな魅力あふれる伊勢志摩の食材を使った、自慢のメニューを詳しく教えてもらいました。

伊勢志摩の豊かな食材をぜいたくにはさんだバゲットサンド

お店で販売する、ほぼすべての商品で使用しているのは、1946年の創業以来、地元で愛される「丸仙(まるせん)製パン」(志摩市阿児町)のバゲット。

「ふんわりとしたソフトバゲットは程よい歯ごたえで、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで食べやすいんです。噛むほどにパンの味わいを感じられますよ」と横山さんが、このパンをセレクトした理由を話してくれました。

こちらは、プリッとした大ぶりのフランクフルトが主役の定番メニュー、「あおさ豚のフランクサンド」(700円)。シャキシャキの手作りキャベツラぺが、ほどよいアクセント。ボリューム満点だけどペロリと食べられると人気の商品なんだそう。

脂に甘みと旨みがあり、コクがあるのにあっさりいただけるフランクフルトは、創業60余年の精肉店「肉の喜多家(きたや)」(志摩市浜島町)が開発した、「志摩あおさ豚」から作られています。

「志摩あおさ豚」は、三重県が全国一の生産量を誇るアオサを飼料に入れて育てた豚。ストレスのない環境で伸び伸びと育てられ、ビタミン、ミネラルが豊富なアオサを食べて育った豚肉は肉に甘味があるだけでなく、豚肉本来のおいしさがギュッと凝縮され、栄養価も高いのだとか。2019年には、志摩市の特産品として「志摩ブランド」にも認定されています。

「志摩あおさ豚」が味わえるメニューはほかにも。こちら、生ハムを使った「あおさ豚の生ハムと胡桃クリームチーズのサンド」(650円)です。

「志摩あおさ豚」の旨みが凝縮した生ハムと、濃厚なクリームチーズがマッチした一品。クリームチーズとのバランスを考え、生ハムは脂分の少ない赤身部分を使用。スライスする厚みにもこだわり、「肉の喜多屋」と何度も調整しながら、完成させたそうです。「クリームチーズに、食感のアクセントとしてクルミを入れて、さらに生ハムのほどよい塩気とマッチするよう、メープルシロップでほんのり甘めに仕上げました。女性人気NO.1のサンドなんですよ」と開発した横山さん。

伊勢市には「蓮台寺柿(れんだいじがき)」という特産品があるのを知っていますか? 果肉がやわらかくて糖度が高く、まろやかな甘さが特徴。伊勢市勢田町(せいたちょう)周辺で栽培されてきた渋柿で、品種改良などもされないまま原種に近い状態で作られてきたそうです。

生産量が少ないので他府県へ出回ることはほとんどない、希少な蓮台寺柿を使った秋冬の季節限定商品がこちら。「蓮台寺柿とスモークサーモンのサンド」(620円)です。
「脂がのって塩味のきいたスモークサーモンをマリネするときに、トロトロに完熟させた甘い蓮台寺柿を入れてみたら、まろやかな甘みが加わってとってもいい味になったんです。3人とも口をそろえて”これだ!”となりました」と森さん。野菜もたっぷり入って大満足のボリューム。季節商品は食材の仕入れによって店頭に並ばないこともあるので、事前の問い合わせがベターです。

柿以外にも旬のフルーツを使ったサンドがあります。「みかんのサンド」(450円)で使用しているのは、柑橘類(かんきつるい)農家の「土実樹(つみき)」(度会郡南伊勢町五ケ所浦)から仕入れる、デコタン(デコポンとも)から作ったミカンソース。

「歯切れの良い柔らかなクロワッサンに、甘さ控えめの生クリームと、デコポンやいよかんなど、その時期にとれる旬の柑橘類をサンド。そこに、皮ごと使ったデコタンと砂糖だけのソースが、やさしい甘さと皮のほろ苦さに加え、オレンジに似た芳醇な香りで、味に深みをプラスしてくれるんです」と話す横山さん。

こちらは、志摩市で栽培したサトウキビを使った「情熱のキビ糖ジンジャーエール(ホット)」(500円)。サトウキビのやさしい甘さに、ショウガがピリッときいたホットジンジャーエールは、体を芯から温めてくれます。

農薬・化学肥料を一切使わず、手づくりの有機肥料でサトウキビを育てる「よこやま」(志摩市阿児町)が製造している「情熱のさとうきびシロップ」を使っています。本州で栽培されているのはめずらしいサトウキビ。温暖な気候の志摩市では、昔、農作業の合間に、自家用としてサトウキビを栽培していたそうです。温かい気候を生かしたサトウキビ栽培の復活で、休耕地の有効活用も目指して2017年に、農家・企業が集まり「南勢志摩さとうきび振興企業組合」が発足しました。
「新たな地域資源として、サトウキビの活用に取り組んでいる生産者さんの思いに共感し、使わせて頂くことにしました」と森さん。

見た目のインパクト大!こんなメニューも

見た目のインパクトが抜群で、SNSでも話題になったメニューが多いのも「Cafe Entrada」の自慢の一つです。

●平飼い有精卵とあおさのだし巻きサンド 580円

とにかくだし巻き卵の分厚さがすごい一品。多気郡多気町の養鶏場「コケコッコー共和国」の新鮮な卵を贅沢に使用した、やさしい味のだし巻き卵が、幅広い年齢層のお客さんから人気です。アオサをふんだんに使っただし巻きに、少し酸味のあるキャベツのラペ、フレンチ風味のマヨネーズがよく合います。

伊勢志摩の食材ではありませんが、キュートな見た目で女性のお客さんに大人気の「あんこのフラワーサンド」も見逃せません。
●あんこのフラワーサンド 500円

手にした瞬間に「わぁ、かわいい」と思わず声が出てしまうこちら。あんこで作られた繊細なバラの花が見事です。定番のバラと季節の花をモチーフにした2種類がスタンバイし、選べるのもうれしいポイント。食べるのがもったいないくらいの美しさで、SNSでも話題になっています。
あんこのフラワーサンドを手がける小掠さんは、2022年2月よりフラワーケーキ専門店「Suger lemon(しゅがーれもん)」をオープンし、“食べられるお花のケーキ”の販売をするそう。

生産者さんの顔が見えるバゲットサンドを届けていきたい

「これからも新しい食材に挑戦したいので、リサーチが欠かせません。先日は昔ながらの製法でかつお節を作る、『かつおの天ぱく』さんの燻小屋(いぶしごや)見学に皆で行ってきました。ここのかつお節を使ったサンドやスープができないか開発中です」と横山さん。新しい商品がどんどん登場するのも、「Cafe Entrada」の魅力。どんな商品が登場するのか、楽しみです。

森さんに、今後の展開をお聞きしました。
「まだまだ、生産者の方たちの顔と思いを消費者に伝えるという部分が、思うようにできていません。コロナ禍の影響で生産の現場へもなかなか行けていないので、落ち着いたら改めて訪ねて行って、Webなどで、食材と生産者のこだわりについて発信していきたいです。また、賢島は観光の方もたくさんいらっしゃるので、私たちのサンドをきっかけに、伊勢志摩に深く興味を持ってもらえるようになったらうれしいですね」

「地元食材を使ったスープや、手づくりドリンクもたくさんそろっています。英虞湾の美しい景色を眺めながら飲む一杯は最高ですよ」と主にドリンクを担当する森さん

生産者の思いと、地元食材を贅沢にはさんだバゲットサンド。メニューを見ていると「伊勢志摩にはこんな食材があるんだ」という新鮮な発見もあり、ワクワクしてきます。「食」と伊勢志摩が大好きな3人が手がけるサンドはどれも手が込んでいて、味も抜群。地元の人からの評判が高いのも納得です。賢島を訪れた際には、観光のお供にご当地バゲットサンドはいかがですか?
定番や、季節商品もふくめてメニューは毎週Facebookで告知されていて、取り置きもできます。ぜひチェックを。

<今回の取材先はコチラ>
Cafe Entrada(カフェ エントラーダ)
住所:三重県志摩市阿児町神明752-21
電話:080-4217-1237
時間:11:00~16:00
定休:月曜、火曜、水曜
URL https://cafeentrada.com/
Facebook
URL https://www.facebook.com/Cafe-Entrada-114706563621597

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