世界初!! エスカルゴの完全養殖に成功。松阪牛や伊勢えびだけじゃない。三重のおいしいを食べに行こう!

2017.2.23

「つづきは三重で」市民記者

【取材】福田ミキ

世界有数の食材の宝庫である三重県。

誰もが知る伊勢えびやアワビなどの海の幸や、和牛トップクラスの松阪牛。

三重県において、 あまり知られてはいないが、
世界に誇れる「メイド・イン・三重」が他にも存在する。

それは、フランス料理の高級食材エスカルゴ

世界で初めて、ブルゴーニュ種エスカルゴの完全養殖に成功した方が松阪市にいる。

 

ーーー普段私たちが食べているエスカルゴは「エスカルゴ」ではないということ。

日本ではあまりなじみのないエスカルゴだが、
西洋では古代ローマ時代から食べられている食材。

左がカタツムリで、右がエスカルゴの殻。

どちらも基本は右巻き。約10万個に1個の突然変異で左巻きが生まれるとか。
▲どちらも基本は右巻き。約10万個に1個の突然変異で左巻きが生まれるとか。

形状的にカタツムリのようだが、エスカルゴは魚介類の貝に近い陸生貝

陸にあがった巻貝なのだ。
生態は牡蠣と似ているのだそう。

食用エスカルゴは主に以下の4種が知られている。

1.ブルゴーニュ種。2.トルコ種。3.プティ・グリ種。4.グロ・グリ種。

もともと、フランス人が食べ始めたエスカルゴは「ブルゴーニュ種(ポマティア)」。
ところがこれがおいしすぎて、多くの人に食べられてしまい、絶滅の危機に。

以降、ブルゴーニュ種の代替品として出回ったのが他の種なのだそう。

ブルゴーニュ種は繁殖力が低く保護育成種として保護されており、
今や本場フランスでも食すことはできない。

ーーー世界初!! エスカルゴの完全養殖を成功させたエスカルゴ牧場。

幻となったブルゴーニュ種エスカルゴの完全養殖を、
世界で唯一成功させたのはここ、松阪市にあるエスカルゴ牧場
※2017年2月現在の情報。また、ブルゴーニュ種エスカルゴは、以降エスカルゴと表記する。
建物にはエスカルゴのイラストが。

約40年間、たった一人で研究し続けている高瀬俊英社長
エスカルゴについて教えていただいた。

高瀬社長。建築業や鉄工業等4つの会社を経営もされており、「不死身の超人」の異名を持つ。
▲高瀬社長。建築業や鉄工業等4つの会社を経営もされており、「不死身の超人」の異名を持つ。

高瀬社長は、当時、お土産にもらったエスカルゴの缶詰に興味を持ち、
調べていくうちにエスカルゴの美しい殻に惚れ込んでいったのだそう。

その後、約7年を要して輸出入の正規承認を得て、
フランスからエスカルゴを日本に持ち帰り、研究を始めた。

8年後には農林水産省から養殖の許可を取得。
苦心の末、完全養殖に成功。

膨大な私財を投じ、
独学で研究を重ね、
ついに成功させたのだ。

※完全養殖とは、生殖から親になるまでの一連を人工的に養殖すること

 

ーーーはじめましてエスカルゴ!!

「森の真珠」ともいわれるエスカルゴは、
その名の通り、透き通るような美白だった。
キュートなちびエスカルゴは子どもたちに大人気。

清潔を好むエスカルゴは、匂いもない。

 

ーーーエスカルゴは想像以上のおいしさだった。

牧場を見学すると、
エスカルゴの定番料理「ブルギニョン」の試食がいただける(見学コース1名900円~)。

ブルギニョン

食欲をそそるエスカルゴバターの香り。

専用トングで殻をつかみ、
をパンの上へ取り出す。
DSC_0174

口に含むと、じゅわぁ~っと広がる芳醇なエスカルゴバター。

身はコリッとした食感を持ちながらも柔らかく、うま味がある。

惜しみながら噛んでいると、
パセリがスーっとガーリックの余韻を消す。

おいしい・・・。

 

ーーーエスカルゴバターへのこだわりも半端ない。

レシピは、文献を基に徹底研究。

使用するパセリ・エシャロット・ニンニクも、再現土を使い自家栽培

ちなみに、エスカルゴを育てる土にもこだわっており、
深くきれいな森を再現すべく、土づくりには3年かける。

自家栽培に要した年月は15年。
▲自家栽培に要した年月は15年。

 

ーーー世界の一流どころから熱烈アプローチを受ける

現在に至るまで、高瀬社長のもとには
世界中の一流シェフや大手商社、メーカー、名だたる研究者がこぞって訪れる。
それほど、エスカルゴの完全養殖はすごいことなのだ。

そして、三重県内にも、
エスカルゴ牧場のエスカルゴに惚れた一流どころがあった。

 

ーーー伊勢志摩サミットの会場にもなった志摩観光ホテルへ

2016年5月に開催された伊勢志摩サミットで、
世界中から大きな注目を集めた伊勢志摩の賢島。

その会場となった志摩観光ホテル

賢島の高台に建つ志摩観光ホテル。「ザ ベイスイート」は全室スイートルーム。
▲賢島の高台に建つ志摩観光ホテル。「ザ ベイスイート」は全室スイートルーム。

エスカルゴ牧場のエスカルゴがいただけるのは、
ザ ベイスイート最上階のフレンチレストラン「ラ・メール」。

美しい英虞湾(あごわん)を眺望できるレストラン「ラ・メール」
▲美しい英虞湾(あごわん)を眺望できるレストラン「ラ・メール」

 

ーーーサミットの料理を担当したシェフに、エスカルゴ料理を作っていただいた。

志摩観光ホテルの総料理長で、
サミットの料理を担当した樋口宏江シェフ

樋口シェフもエスカルゴ牧場へ見学に行き、高瀬社長の取り組みに感銘を受けたそう。
▲樋口シェフもエスカルゴ牧場へ見学に行き、高瀬社長の取り組みに感銘を受けたそう。

三重の食材をふんだんに使ったコース料理の一例。

エスカルゴが一品を飾っている。

三重の素晴らしい食材であるエスカルゴを堪能してほしいという想いから、メニューにエスカルゴ料理を組み込んでいる。
▲三重の素晴らしい食材であるエスカルゴを堪能してほしいという想いから、メニューにエスカルゴ料理を組み込んでいる。

志摩観光ホテルといえば、アワビ料理のイメージをくつがえした
鮑(アワビ)ステーキ」が有名。

網焼きや刺身で食べることが多いアワビをあるがままの素材を生かし、
ソースとともにステーキで食べるスタイル。

「森の真珠」エスカルゴも、一部では「陸のアワビ」ともいわれている。
どのようなお料理になるのか、期待に胸が踊る。

作っていただいた一皿がこちら。

マスタードソースの上にガラムマサラやハーブとパン粉で焼き上げたものと、マッシュルームのピューレが乗った3種。
▲マスタードソースの上にガラムマサラやハーブとパン粉で焼き上げたものと、マッシュルームのピューレが乗った3種。

お洒落だ・・・。

淡白なエスカルゴに、ふんわり香るスパイシーなパン粉がとても合う。
トマトソースの酸味と甘みも絶妙。

添えられているのは、
栽培が難しく幻といわれる三重県産の大黒本シメジ。

三重の食材が彩る一皿。

エスカルゴといえば、パセリとガーリックのエスカルゴバターが一般的だが、
少し変わった新感覚の料理をと考えられたのだそう。

エスカルゴ牧場のエスカルゴは独特の土臭さや癖もないため、
どんなソースにも合わせやすく、どんな形でも提供できるという。

2皿目は、
エスカルゴのビジュアルをほうふつとさせるかわいらしい一皿。
2皿目

衣の内側には、
まろやかでコクのある伊勢いも。

エスカルゴ料理の定番であるエスカルゴバターと共にふんわりと包まれている。

繊細な衣の食感と、コリコリとしたエスカルゴの歯ごたえ。
▲繊細な衣の食感と、コリコリとしたエスカルゴの歯ごたえ。

おいしい。

 

ーエスカルゴが苦手というお客様は多いですか?

樋口シェフ:少なからずいらっしゃいますね。

 

ー見た目や缶詰の味で敬遠してしまっている人もいるでしょうね。

樋口シェフ:はい。ぜひ一度このエスカルゴを食べてみてほしいと思いますね。まだ、三重県にはあまり知られていない食材がたくさんあります。これからも探し続け、ここでしか食べられないものを提供することに、徹底してこだわっていこうと思っています。

 

ーーー三重県の食のポテンシャルすごい!!

三重県には、
四季折々、その季節にしか食べられない食材が豊富。

海の幸はもちろんのこと、 きのこや野菜、柑橘類もおいしい。

松阪牛や伊勢えびがすごいことは知っていたけれど、
世界唯一のエスカルゴまであったとは驚き。

三重県の豊かな風土が育む食材。

そして最高のおいしさを引き出すべく、新たな魅力を創造している人たち。

三重県は、ここでしか食べられない「おいしい」に出合える場所。


取材協力

■エスカルゴ牧場
住所:三重県松阪市曲町78番地
電話:0598-21-6417
時間:9:00~17:00(見学は要予約)
URL:http://www.mie-escargots.com/index.htm


■レストラン「ラ・メール」(志摩観光ホテル)
住所:三重県志摩市阿児町神明731
電話:0599-43-1211
URL:http://www.miyakohotels.ne.jp/baysuites/restaurant/list/lamer/index.html/


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