津市にはなぜ、安くておいしいうなぎ屋さんが多いのか?を調査&実食

2018.5.25

おでかけ情報はおまかせ 内山真紀

養鰻業から始まった津市のうなぎ文化
安くておいしい専門店を目当てに観光客も増加中

三重県の県庁所在地、津市の人はとにかく「うなぎ」をよく食べるのだそうです。少し前のデータですが、平成17年度の総務省家計調査(※)では、うなぎの消費量が日本一だったんですって。良質なうなぎをリーズナブルに食べられるということで、全国からその味を求めて訪れる人もいるほど。津市を代表するグルメのひとつにもなっています。でも、どうしてそんなに、津市でうなぎが食べられているのか…。その理由を調査するべく、ライター・内山真紀が津市へ行ってきました。もちろん、おいしいうなぎ屋さんも取材しましたので、そちらもチェックしてくださいね。記事中の価格はすべて税込み。

※県庁所在地別うなぎの蒲焼きに対する支出金額(一人当たり換算)

まずは、津市のうなぎグルメガイド「うまっぷ」を作成する、津市観光協会の川村暁洋(かわむらあきひろ)さんを訪ねました。

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―――なぜ、津市の人はうなぎをよく食べるのでしょうか。
川村さん「津市は海に面していて、志登茂(しとも)川、安濃(あのう)川、岩田川、雲出(くもず)川という河口の大きな1級・2級河川があり、栄養豊富な水に恵まれていたことから、うなぎの養殖「養鰻(ようまん)」が始まりました。戦前から戦後にかけてが最盛期で、その頃に市民の日常食としても身近なものになり、今でもうなぎをよく食べますね」

―――今はどうなのでしょうか?
川村さん「残念ながら、津の養鰻業は衰退してしまいました。戦後、九州などが養鰻業に力を入れ始め、津の養鰻は競争に勝てなくなっていったようです。また、うなぎのエサが天然から人工へと移行し、病気に悩まされるケースが増え、対策のための設備など、養殖に多額の費用が必要に。1959年に起こった伊勢湾台風が決定打となり、衰退が加速したようです」

―――その後も、うなぎは日常的に食べられてきたんですね。
川村さん「そうですね。私たち津市民は、みんな子どもの頃から通っている、なじみのうなぎ屋さんがあるんですよ。法事やお祝い事、運動会の後のご褒美といった、ちょっと特別な日はもちろん、普段のランチや夕飯にもよく食べます。養鰻業者はなくなりましたが、専門店は市内に約20軒もあり、どこもにぎわっています。他の地域に比べて、安く食べられるのも特徴ですね。うな丼の並みなら、1,000円代で食べられるところがほとんどです」

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―――それは安い! しかも、おいしいんですよね。
川村さん「お客さんの舌が肥えていますからね。津のうなぎは、腹開きで蒸さずにそのまま焼く関西風がほとんど。タレや焼き方などは、どのお店もこだわりがあります。うなぎ屋さん巡りをするのも楽しいですよ。また、津市ではうなぎ屋さんで宴会をすることもしばしば。忘年会や歓送迎会など、うなぎのコースをいただきながら楽しみます」

―――うなぎ屋で宴会というのは、初めて聞きました!
川村さん「そうですか。うなぎ屋さんでの宴会は津市では当たり前なんですよ。おいしくて安いうなぎは、周辺地域や県外の方からも評判で、うなぎ目当ての観光客も増えています。これからも、たくさんの人に自慢のうなぎを食べに来てもらいたいですね」

川村さんのお話しを聞いて、ますます、うなぎが食べたくなりました。今回は、「うまっぷ」の中から、津市で長くうなぎ屋さんを営む3店を取材させてもらいました。

 

明治23年創業、宴会もできる老舗の代表格
うなぎの新玉亭(しんたまてい)

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ビル1棟がまるまる店舗の「うなぎの新玉亭」。宴会場も完備する超大型店ですが、休日のお昼時ともなれば、あっという間に満席になるほどの人気ぶり。うなぎへのこだわりはもちろん、お米は三重県の伊賀米や一志米(いちしまい)を使用するなど、地産地消にも力を入れています。

仕入れたうなぎは、すぐに天然の井戸水で満たされた水槽へ入れられます。運ばれてきたうなぎはストレスのため、身が硬くなっているそうで、1日井戸水の中で泳がせることで元気になり、焼き上がりが格段に変わるのだそう。

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創業から継ぎ足されている秘伝のタレは、職人さんの手によって仕込まれます。しょうゆ、みりん、氷砂糖などを煮詰め、一週間以上寝かせることでコクがありまろやかなタレに。

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こちらが中丼(3切れ)1,944円(お吸い物・漬物付)。

うなぎが3切れのった、ボリューム満点のうな丼。外は炭火でパリッと焼かれ、ひと口食べればジューシーな脂とうま味が広がります。タレは辛めですが、まろやかさがあり、硬めに炊かれたご飯によく絡んでお箸が止まりません。添えられた甘めの奈良漬けとの相性も抜群でした。プラス108円でお吸い物を肝吸いにすることができますよ。

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「うな丼(864円~)以外にも、うな重(3,240円)やうなぎ定食(3,024円)など、バラエティー豊かなメニューをご用意しています」と代表の杉本浩也(すぎもとひろや)さん。

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テーブル席のほか、一人でも気軽に利用できるカウンター席や、ファミリーで利用しやすい座敷席も用意されています。


おいしさを追求した、添加物を使わないタレが自慢
大観亭支店 津駅西口店

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次に訪れたのは、JR・近鉄津駅西口を出てすぐのところにある「大観亭支店 津駅西口店」。親子2代で切り盛りしています。駅から近いということもあり、地元客はもちろん、観光客や出張で訪れるビジネスマンも多く利用するそうです。

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炭火で焼かれるうなぎは、火加減が一番大事とのこと。こちらでは中火で表面は香ばしく、中はふんわりジューシーに、熟練のテクニックを駆使して焼き上げます。

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肉厚で大きなうなぎが焼かれる様子は迫力がありますね。

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一番人気の、うな重(特上)2,800円(肝吸い・漬物付)。

ほぼ一匹分のうなぎが使われ、お重を持ったときの重量感に驚かされます。炭の香ばしい香りを感じるジューシーなうなぎは、50年以上継ぎ足されてる、上品な甘さのタレであっさりといただけます。三重県産のたまりを使用する添加物を使わないタレは、おいしさを追求し続けて今の味にたどり着いたそう。甘めなのにすっきりとした後味で、ボリューム満点のうな重もペロリといけちゃいます。

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ちょっと珍しい、鰻の燻製(1,500円/100グラム)を発見! 桜とウイスキー樽(だる)のチップでいぶされ、スモークの香りとジュワっと広がる脂がクセになる一品。お酒のつまみに注文する人も多い、人気メニューです。

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うな丼(1,300円~)やうな重(2,800円~)のほか、うなぎを使用した一品料理も豊富に揃っています。三重の地酒「田光」などの日本酒と一緒に楽しむ人も多いそうですよ。

 

 

問屋直営  その時期一番のうなぎを厳選
三谷(みたに)うなぎ屋 高茶屋店

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創業77年という老舗うなぎ問屋直営の「三谷うなぎ屋 高茶屋店」。かつては養鰻業を行っていたという、歴史あるお店です。以前は、一般向けには持ち帰りのみの対応でしたが、その味が評判になり食堂を始めたのだとか。

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うなぎは国内外を問わず、その時期に一番いいものを厳選しているそう。問屋直営だからこその魅力ですね。うま味を逃がさないように、遠赤外線で外はパリッと、中はふっくら焼き上げます。

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うな丼 上(4切れ)2,100円(肝吸い・漬物付)。

こちらのお店も大きなうなぎがドーンとのってボリューム満点! たまりしょうゆ、みりん、ざらめのみで作られた、シンプルな甘さのタレが、ご飯にもしっかりと絡んでいます。うなぎは脂がのっていますが、くどさは全くなく、タレがうなぎのうま味を引き立てます。

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こちらは、観光客に大人気のうな牛丼2,250円(肝吸い・漬物付)。

松阪牛とうなぎが一緒に味わえる、なんともぜいたくな丼です! 松阪牛はうなぎのタレをベースに、ブラックペッパーなどを加えてアレンジ。どちらも上質な脂のうま味にタレがいい具合にマッチしています。このお値段で三重の名物を一度に味わえるなんて、お得過ぎです!

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「うなぎと松阪牛のコラボメニューは、三谷のオリジナルです。お米は三重県産のミルキークイーンを使用。できる限り地元産の食材を使うことにこだわっています。うな丼は1,600円からご用意しています」とは、店長・高岡玲士(たかおかれいじ)さん。

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広々とした店内には座敷席もあるので、グループでもゆっくりと食事を楽しめます。

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養鰻業から始まったという、津市のうなぎ文化。養鰻業者がいなくなった現在でも、ちょっと特別な日にはもちろん、普段からうなぎを食べるなど、地元の人にとってうなぎがとても身近なものであることが分かりました。また機会があれば、うなぎ屋さんで宴会をしてみたいものです。川村さんのお話通り、取材した3軒のうなぎ屋さんでも、「こんなに味わいに違いがあるんだ」という驚きがあり、どのお店もとてもおいしくいただけました。

 

津市観光協会の公式サイト「レッ津ゴー旅ガイド」では、市内のうなぎ屋さんを紹介している「うまっぷ」をダウンロードすることができます。
http://www.tsukanko.jp/db_img/cl_img/266/document.pdf?20180302175453284

津市を訪れたら、「うまっぷ」を持っての“うなぎ行脚”、おすすめですよ。

(掲載内容はすべて平成30年5月現在のものです)

 

今回紹介した店舗はコチラ。

★うなぎの新玉亭

住所:津市丸之内養正町5-1

電話:059-224-0008

営業時間:11:00~14:30(L.O.14:00)、16:00~20:30(L.O.20:00)、土・日曜・祝日11:00~20:30(L.O.20:00)

休日:月曜

席数:250席

http://shintamatei.co.jp/

 

★大観亭支店 津駅西口店

住所:津市大谷町117

電話:059-228-2598

営業時間:11:00~21:00(L.O.20:30)。※売切れ次第終了

休日:無休(月曜は昼のみ営業)

席数:34席

 

★三谷うなぎ屋 高茶屋店

住所:津市高茶屋小森町1814

電話:059-234-2482

営業時間:10:00~21:00(L.O.20:30)、持ち帰り9:30~21:00

休日:無休

席数:48席

 

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