ロープウェイを降りたらスグ! 御在所岳で冬の絶景「樹氷」を楽しむ

2022.1.7

フードライター 高田強

雪が花のように美しく木々を飾る樹氷(じゅひょう)。雪山でしか見られないこの絶景を、手軽に見ることができるスポットが、三重県三重郡菰野町(こものちょう)の御在所岳(ございしょだけ)にあります。そこで、御在所ロープウエイに乗って、実際に樹氷が観察できるスポットへ。さらに、樹氷撮影ツアーなどを企画するプロカメラマンと、御在所ロープウエイのスタッフさんに取材し、樹氷の楽しみ方、撮影のコツ、樹氷体験後のおすすめの過ごし方なども教えてもらいました。 

御在所岳の冬の風物詩、「樹氷」を見にいこう

(画像提供:御在所ロープウエイ)

春のツツジや秋の紅葉などの撮影スポットとして人気の御在所岳ですが、話題になっているのが冬の景色。ロープウェイで「山上公園駅」まで行けば、スキー客でなくても一面の銀世界を楽しむことができて、さらに気象条件がそろえば、樹氷を楽しむことができます。本格的な冬山装備をせずに、美しい樹氷写真が撮れるとカメラマンから注目されたことがきっかけで、広く知られるようになりました。

(画像提供:御在所ロープウエイ)

よく聞く「樹氷」という言葉ですが、実は「霧氷(むひょう)」と呼ばれる着氷現象の一種です。過冷却(かれいきゃく)の水滴(0℃以下でも凍ってない水滴)からなる濃霧や雲が、樹木に衝突した際に、凍結付着してできるもので、枝や幹を含め、樹木全体が白くてもろい氷層で覆われています。

東日本には、蔵王など有名なスポットがいくつかあるのですが、中・西日本で「樹氷」の名所として名前があがるのが御在所岳です。毎年12月~3月が樹氷シーズンになりますが、確率がぐっとあがるのが1月~2月。暖冬でなければ、50%くらいの確率で、樹氷を見ることができるそうです。

樹氷は、気温の低さや標高の高さがあれば必ず見られるというものではありません。大事なのは気象条件。以下のような条件が必要だとされています。

1.水蒸気(湿気)があること
2.風があること
3.気温が0℃(氷点下)以下であること

こうした条件のもと、霧などの水蒸気(湿気)が風で飛ばされ樹木などに付着して、樹氷が発生します。凍り付いた樹氷に、さらに新たな樹氷が付着することでだんだん大きくなっていき、時には、まるで芸術作品のような神秘的な形状になることもあります。

ロープウェイを降りればすぐそこに樹氷スポット

御在所岳では、12月頃から雪が降り始め、1月~2月になると、山上付近にある御在所スキー場は一面白銀の世界に。実際に、御在所岳の樹氷を何度も撮影し、撮影ツアーなども開催するカメラマンの栗山主税(くりやま ちから)さんに、おすすめの樹氷スポットを教えてもらいました。

全国で樹氷を撮影し、御在所岳にも何度も訪れているという栗山さん
(画像提供:御在所ロープウエイ公式Web)

山頂のご案内

近鉄「湯の山温泉駅」から10分ほどバスに乗って、MAP下の湯の山温泉・御在所ロープウエイ前」バス停へ。すぐ目の前にある御在所ロープウエイ「湯の山温泉駅」から「山上公園駅」までは、乗車時間約15分ほどです。

最初の樹氷スポットは、「山上公園駅」を出ると右前方に広がる朝陽台(ちょうようだい)広場。

朝陽台広場の樹氷(画像提供:栗山さん)
朝陽台広場から樹氷越しに見える鈴鹿山脈(画像提供:栗山さん)

山上公園内にある富士見岩展望台周辺も、木々が生い茂っていて、樹氷スポットになります。
まずは、雪が降り出す前の12月初旬頃の様子を。

朝陽台広場から東に進んだ富士見岩展望台方面
1・2月にはこんな風景に一変します(画像提供:栗山さん)

さらに、御在所岳頂上付近もおすすめの絶景スポットです。頂上へは「山上公園駅」から、さらに観光リフトに乗り継いで行くことができます。

頂上から見る山上公園方面(画像提供:栗山さん)

午前中、なるべく朝イチを狙うと美しい樹氷を撮影できます!

具体的な撮影のコツも、栗山さんに教えてもらいました。

・できれば朝イチ、最低でも午前中が基本!
「桜でも、紅葉でも同じなのですが、人が少ない午前中の撮影、できれば朝イチが理想です。特に樹氷の敵は気温。お昼になってしまうと気温が上がって、せっかくの樹氷が溶けてしまうことも。溶けてキラキラしている樹氷も美しいのですが、なるべく午前中の早いうちに撮影を開始して、いろいろな樹氷を撮って欲しいです」

・逆光になりがちなので露出補正を!

逆光の樹氷(画像提供:栗山さん)

「太陽を背にして撮る、順光での撮影が基本的におすすめ。でも、樹氷を撮ろうとすると、撮りたい部分が暗くなりがちなので、そういう場合は露出補正で画面全体を明るくすれば、いい雰囲気の写真になります。最近はスマホでも明るくできるようになっていますので、試してみてください」

ちなみに、スマホではなく、一眼レフなどデジタルカメラで撮影する場合はバッテリーにも注意を。「寒冷地ではカメラのバッテリーがかなり早く減ります。予備のバッテリーを持ってくるのはもちろん、バッテリーをカイロなどで温かい状態にして持っておくことも大事」とのこと。

・事前に御在所岳の気候をチェック
「樹氷撮影を狙っている時は、常に山の状態をチェックしています」と栗山さん。
「ほかの樹氷スポットでも同様なのですが、湿度と風速、気温などをネットで確認。御在所岳であれば、気温が低くて湿度が70%、風速10mほどが目安でしょうか。湿度が50%を切っているとあきらめることも」
ちなみに、樹氷の情報はホームページでもチェックができます。御在所岳ロープウエイの公式サイトでは、「今日の山頂付近」として、その日の樹氷の状況を、朝8時頃に、○×△でわかりやすく発表。 さらに、もっと詳しく知りたいという場合は、ライブカメラをチェックするという手も。木々が白くなっていたら、樹氷が見られる可能性が高いそうです。

(御在所ロープウエイ公式HPより)

希少な風景ながら、ちゃんと準備すれば手軽に楽しめる

「湯の山温泉駅」から、ロープウェイに15分ほど揺られるだけで、白銀の世界に手軽にいけるのが御在所岳の魅力ですが、あまりにも軽装で訪れると「樹氷」どころではなくなります。撮影の際の準備についても、教えてもらいました。

(画像提供:栗山さん)

「しっかりとした防寒スタイルで訪問してください。特に注意したいのが靴。スニーカーでもソール部分に凸凹が少ないものは滑る可能性があるので、トレッキングシューズがおすすめ」と栗山さん。「カメラを手にしていると滑ったときの対応に遅れてしまうことがあるので、まずは滑らないことが重要です。特に注意して欲しいのが、階段。樹氷ができるような日の階段は凍り付き、かなり滑りやすくなっています。広場でも圧雪されている場所は大丈夫なのですが、朝イチのパウダースノーだと、雪で穴などに気付きにくくなっていたりします。どちらにしても、足元には注意してください。また、時折、木から雪のかたまりが落ちてくることがあります。足元に気を付けながら、頭の上にも注意をはらうことが必要です」

カメラマンの栗山さんのように、防寒対策バッチリのスタイルがおすすめ
栗山さんは靴のソールにつけると滑り止めになるアイゼンを愛用

装備を忘れてもショップがあるので安心。食事や温泉なども充実!

撮影の準備や、具体的なコツがわかったところで、知っていると便利なポイントや、樹氷撮影後のおすすめの過ごし方について、御在所ロープウエイ広報担当の佐藤優華(さとうゆうか)さんに聞いてみました。

「好評なのが、ロープウェイ乗り場近くのショップです。お土産の購入なら『ベルフォレ』がおすすめですが、『思ったより寒かった!』や『手袋を忘れた!』といったお客様に好評なのが『アウトドアショップ モンベルルーム御在所店』です。アウトドア総合メーカー『モンベル』のショップで、四季を問わず山歩きに適した衣類やグッズを置いているので、だいたいのものならそろいます」

湯の山温泉駅乗り場のすぐ横
帽子やトレッキングシューズのほか本格的な防寒着も豊富

「山上公園内には、『ナチュール』と『アルペン・ホール』という2つのレストランがあります。レストランスタイルの『ナチュール』は定食が充実していて、しっかり食事されたい方にピッタリ。また、窓からの眺望も好評です。軽食中心の『アルペン・ホール』は五平餅やソフトクリームなどが味わえます。寒い冬に人気なのが甘酒。暖房も効いていますので、樹氷撮影で冷えた体を温めてください」

「ナチュール」と「アルペン・ホール」の両方で味わえる「御在所カレーうどん」(950円)も人気。

「また、カメラマンなど機材の多い方から好評なのが、コインロッカーです。必要な機材以外を預けることで、身軽に撮影できるので、ぜひ活用してください」

コインロッカーは山上公園駅の改札口付近にあります

「ロープウェイ乗り場の周辺には旅館・ホテルが10数件あります。日帰り利用ができる温泉旅館もありますので、樹氷撮影からのお帰りの際に寄っていただければ、帰る前に心身共にリフレッシュできると人気なんですよ」

湯の山温泉街

もしかしたら日本一樹氷を気軽にみることができるスポットかも

取材時は雪が降り出す前だったので、特に感じたのかもしれませんが、とにかく駐車場に車を止めて30分以内で樹氷スポットに行けるお手軽さには驚きました。長野や北海道に樹氷撮影に行くこともある栗山さんは「ほかの場所では、車を降りてから山道をたっぷり歩いて樹氷スポットをめざすことも多いので、御在所岳は、たぶん日本で一番気軽に樹氷を楽しめる場所だと思いますよ」とのこと。「初心者におすすめ!」と太鼓判も。ぜひ、タイミングを見計らって、冬にしか楽しめない自然が生み出す芸術作品を楽しんでみてください。

<今回の取材先はコチラ>
御在所ロープウエイ
住所:三重県三重郡菰野町湯の山温泉
URL:https://www.gozaisho.co.jp/

営業時間&料金:
【ロープウェイ】
大人(中学生以上) 往復2,450円、片道1,320円
小人(4歳以上小学生以下) 往復1,220円、片道660円
4月~11月/9:00~17:00(下り最終17:20)
12月~3月/9:00~16:00(下り最終16:20)

【観光リフト】
ロープウェイ駅~頂上駅 往復650円、片道350円
ロープウェイ駅~カモシカ駅 300円
カモシカ駅~頂上駅 300円
4月~11月/9:30~16:40(下り最終17:00)
12月~3月/9:30~15:40(下り最終16:00)

三重県の取り組み紹介
三重県では、三重県が誇る海・山・川などの豊かな自然を「体験」という形で活かして、国内外から人を呼び込み、交流の拡大を図るとともに、地域の自然体験活動団体等における新たな雇用創出に取り組んでいます。
https://www.taiken.pref.mie.lg.jp/