三重の菓子職人100人の技が集結。巨大工芸菓子の制作現場に潜入取材。

2017.3.21

「つづきは三重で」市民記者

【取材】nari_bow

4月21日から伊勢市のサンアリーナで開催される「第27回全国菓子大博覧会・三重(お伊勢さん菓子博2017)」。

4年に1回開催されるこの全国菓子大博覧会。
1911(明治44)年から始まり、今回で第27回目。 100年以上続く国内最大級のお菓子の祭典です。
東海地区では1977(昭和52)年の静岡以来40年ぶりとなり、三重県で開催されるのは今回が初めて。

そんな菓子大博覧会(以下、菓子博)では「美味しいお菓子が食べられる」「限定のお土産が買えるの他に「博覧会」の名前の通り「美しいお菓子を見て楽しめることを皆さんご存じでしょうか?

菓子博では、菓子職人たちが自らの技術と感性で作り上げる「工芸菓子」が数多く出店されます。
今回は菓子博史上最多の174点の展示を予定しており、お菓子でできた芸術作品を間近で鑑賞することができます。

その最大の見所が「巨大工芸菓子」。 幅10m、奥行き5.5mのダイナミックな工芸菓子が展示されます。
これまでの菓子博でも、開催地ごとにその土地を象徴する巨大工芸菓子が展示されてきました。
広島県で開催された前回の菓子博では「厳島神社」をモチーフにしたものでした。
今回の菓子博では浮世絵師、歌川広重の「伊勢参宮 宮川の渡し」を再現したお菓子が出展されるそう。

巨大さと繊細さが同居する工芸菓子が一体どのように制作されているのか?
制作現場にお邪魔しました。

 

この日伺ったのは、津市内某所の菓子工場。
調理室にはおよそ22人の菓子職人。黙々とお菓子作りに励んでいます。

IMG_5512のコピー

この日は、菓子博のサブアリーナで展示される三重県の花「ハナショウブ」の工芸菓子の制作。
グループに分かれて花びらや葉、茎といったパーツを作り、組み立てていきます。
普段はライバルである職人さんたちが、各自の技術を持ち寄り、一致団結して三重の花を再現していきます。

型取りされた餅がみるみるうちに葉っぱに。
▲型取りされた餅がみるみるうちに葉っぱに。

 

蒸気を当てながら、細かい花びらの動きを再現していきます。
▲蒸気を当てながら、細かい花びらの動きを再現していきます。

 

美しい花びらも1枚1枚丁寧に色付け。グラデーションが美しいです。
▲美しい花びらも1枚1枚丁寧に色付け。グラデーションが美しいです。

繊細な作業を重ね、120輪のお菓子でできた「ハナショウブ」が完成。

ハナショウブ

花びらや葉っぱのシワまで1本1本忠実に再現されて、本物みたい。
職人の技と妥協しない精神が表れています。
果たしてメイン展示の巨大工芸菓子は一体どんなものなのか?

お話を伺ったのは、巨大工芸菓子の責任者である、三重県菓子工業組合青年部部長の早川賢さんと、副部長の岡本伸治さん。

三重県菓子工業組合青年部部長の早川さん
▲三重県菓子工業組合青年部部長の早川さん

 

三重県菓子工業組合青年部副部長の岡本さん
▲三重県菓子工業組合青年部副部長の岡本さん

ー「伊勢参宮 宮川の渡し」をシンボル展示のテーマに選んだ理由は何ですか?

早川さん:三重県といえば伊勢神宮。古くから多くの参拝客が訪れにぎわってきました。その中で必然的に生まれた「おもてなしの精神」は今もなお三重県民の心に宿っていて、いわば三重県の象徴だと思いました。歌川広重の「伊勢参宮 宮川の渡し」には、伊勢神宮で生まれた「おもてなし」の原点が描かれていると思い今回のテーマに選びました。

ー前回の広島は「厳島神社」、前々回の姫路は「姫路城」と実在するモノを工芸菓子で再現されたと伺いました。今回は浮世絵を表現することで、制作にあたり難しかったことは何ですか?

岡本さん:そうですね。平面の浮世絵を立体に表現するのは難しかったですね。とにかく、いろんな博物館へ行き、立体物の見せ方や浮世絵の舞台になっている箇所を実際に巡りましたね。絵と照らし合わせて、一つ一つどうやってお菓子で立体的に表現していくか? 早川さんと二人で試行錯誤しましたね。

一切の妥協を許さない。サザエの写真を見ながらのお菓子作り。
▲一切の妥協を許さない。サザエの写真を見ながらのお菓子作り。

早川さん:それと、とにかくサイズの大きさに悩みました。10m×5.5mのお菓子なんて作ったこともないですし、想像もつかないですよ。まずは図面を描き、1/10サイズでジオラマを作りました。そしてどんなお菓子で表現していくかをイメージしていきました。

1/10スケールで作られたジオラマ。驚くことに、早川さんご自身で作られた。
▲1/10スケールで作られたジオラマ。驚くことに、早川さんご自身で作られた。

3年以上も前から巨大工芸菓子の構想を練っていたお二人。
壮大なスケールの工芸菓子を作るにあたり、三重県内の和洋菓子職人に参加を呼びかけた。
その人数は100人を超える。

ー100人の職人さんと連携をとるのは大変ですよね? 何か秘策はあったのですか?

早川さん:制作にあたり5つのグループに分け、制作担当箇所を決めました。そして、いきなり制作に入るのではなく、1年間は勉強会を行いました。改めてお菓子作りと向き合い、県内の和洋菓子職人全員が一丸となり、更なる技術向上をめざしました。1年間定期的に顔を合わせ、共に学び、意見交換を重ねることでみんなが1つの目標に向かい意識を共有することができました。その甲斐あって、巨大工芸菓子作りは大きなトラブルもなく、順調に進めることができていますよ。

活気に満ちた制作現場
▲活気に満ちた制作現場

「構想1年、勉強1年、制作1年」と3年もの年月をかけて100人を超える職人の手で作り上げられる巨大工芸菓子とは一体どんなものなのか?

ー巨大工芸菓子って見せてもらえませんか・・・?

早川さん:・・・・・・・・・。それはできないですね。いや、まだ完成してないんですよ。グループに分かれて作ってますし、とても大きなお菓子なので当日会場で組み合わせての完成です。開催当日まで乞うご期待ですよ(笑)。この巨大工芸菓子の全貌は、4月21日~5月14日の開催期間中だけしか見ることができません。閉会後、どこかに展示される予定もないので、ぜひ会場まで見に来てください(笑)。

今回は特別に、完成前の一部分を見せていただきました!

宮川を優雅に泳ぐ錦鯉。すべて飴で作られています。
▲宮川を優雅に泳ぐ錦鯉。すべて飴で作られています。

直径50〜60cmはある飴細工。中には綺麗な錦鯉が泳いでいます。
透明度にこだわり、割れを防止するために、制作時の気温や湿度を何度も分析し完成した作品の一つ。

 

かわいらしい桜の花びら。開催中は6万輪の桜並木となって来場者を出迎える。
▲かわいらしい桜の花びら。開催中は6万輪の桜並木となって来場者を出迎える。

 

餅、餡、砂糖で作られた松の木。
▲餅、餡、砂糖で作られた松の木。

松葉は総数でなんと10万本!
松の幹の質感は本物そっくり。

洋菓子職人が手がける、江戸時代の人々。
▲洋菓子職人が手がける、江戸時代の人々。

 

砂糖菓子でできた伊勢の山々。緑のコントラストが山の風合いを表現している。
▲砂糖菓子でできた伊勢の山々。緑のコントラストが山の風合いを表現している。

 

三重県の和洋菓子職人100人の技と努力が作り出す巨大工芸菓子。
これらのお菓子が組み合わさり、完成するとき、どんな感動が生まれるのか? とても楽しみです。

「今回の菓子博覧会を通じて、1人でも多くの人にお菓子を好きになってもらいたい。また、将来お菓子職人をめざす子どもたちが増えてほしい」と早川さんは語る。
繊細でダイナミックな三重を象徴する巨大工芸菓子を、ぜひ会場に確かめに来てください。


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三重県広報紙「県政だより みえ」の人気コーナー「知事が行く!突撃取材!パート2」でも、今回取材にご協力いただいた岡本伸治さんにお話を伺いました! ぜひご覧ください。