「松阪木綿」「伊賀くみひも」「伊勢木綿」 糸が織りなす、かわいいグッズや体験を

2017.10.16

フードライター 高田強

かわいい小物がそろう! 三重の手仕事の世界

松阪もめん1

グルメライターの高田です。しかし、今回のテーマは、グルメではなく「三重の伝統工芸品」。歴史があるのに肩ひじ張らない、三重の“手仕事”を紹介します。近頃の旅は、体験型が人気。手仕事体験ができる施設もお届けします。 ※料金はすべて税込み。

◆松阪もめん手織りセンター
外国人も感動する手織りの藍色ストライプ

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染め具合の違う藍染め糸を織ることで生まれる縞(しま)模様が特徴の「松阪もめん」

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この松阪もめんの伝承を目的に設立されたのが「松阪もめん手織りセンター」です。センターには、松阪もめんに関する資料がたくさん展示されているほか、松阪もめんの反物や商品など800アイテムほどが販売されています。

 

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まずは、センターの田中茂子さんに、松阪もめんについてレクチャーしてもらいました。

 

—————「松阪もめん」の魅力はなんでしょうか。
田中さん「それはなんといっても“松坂嶋”と呼ばれる、藍色の縞模様です。糸を1本1本、藍につけて染める回数を変えることで、白から、青、紺と濃くなっていくのですが、この糸の組み合わせで作るストライプが大きな魅力です」

「嶋本(しまほん)」という模様の見本帳も
「嶋本(しまほん)」という模様の見本帳も。

 

—————それを手織りしているんですよね。

田中さん「機械織りもありますが、私たちは、手織りの伝承にこだわっています。センターの隣のフロアに“ゆうづる会”という松阪もめんの手織り伝承グループがあり、そちらに所属する20人の織手が作る反物は、やはり最高です。ただ、織手の多くが70歳代なので、それを伝承していくのが私たちの課題ですね」

 

—————そのためにセンターを開いて松阪もめんの知名度を上げているのですか。

田中さん「そうです。需要が高まれば、新しい織手も出てくると思うので、いろいろとチャレンジしています。ファッション・デザインの専門学校である名古屋モード学園の学生さんに、松阪もめんの生地を使った服をデザインしてもらうのも取り組みの一つです」

 

—————若い方に知ってもらうのは大事なことですね。

田中さん「こちらを訪問してくれる若いお客さまも増えています。また、特に最近は外国の方の反応がいいですね。藍色のストライプのグラデーションにストレートに感動されているようです」

 

11月12日(日)には、中心商店街や旧長谷川邸を会場に「松阪もめんフェスティバル2017」を開催。“松阪もめんを見て、触れて、感じて、話す”をテーマに、松阪もめんにちなんだ作品展示、ファッションショー、マルシェ、音楽演奏などが行われるそう。松阪もめんの魅力を、1日で感じられる機会といえそうです。

 

松阪もめんの手織りにチャレンジ!

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松阪もめんセンターには、6台の体験用の機織り(はたおり)機があり、機織り体験ができます。

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せっかくなので、わたくし高田が体験させていただきました。オッサンですが「プチ織姫体験」(1,300円)に参加します。基本的に要予約です。織機に座って説明を聞いてから始めます。

 

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経糸(たていと)が張られた状態で用意された織機に、緯糸(よこいと)を通していきます。色の異なる経糸によって、縞模様ができるのですね。糸を通した後に、木でトントンと押さえつけて、また糸を通すという作業を続けていきます。
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繰り返していくと、布地になっていきます。
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約1時間で手織りのコースターができあがりました。

 

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センターには、松阪もめんを使った服や小物の販売も。

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スマートフォンと伝統工芸品の融合! iPhone6のケース4,320円(写真左)。

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紳士シャツは人気アイテムの一つで、写真のシャツは手織りで43,200円。買い求めやすい機械織り16,200円もあります。

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このほか、1,000円前後の小物もいっぱい。藍の縞模様は上品な印象のものが多く、おすすめです。

 

 

◆伊賀伝統伝承館 伊賀くみひも 組匠(くみ)の里
映画「君の名は。」の世界に浸って組紐体験

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帯締めなどの和装小物として親しまれてきた「伊賀くみひも」

 

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この組紐の資料展示や販売のほか、キーホルダーやブレスレットが作れる“くみひも体験”ができるのが「伊賀伝統伝承館 伊賀くみひも 組匠の里」です。

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江戸から伝わり、伊賀で発展した“伊賀くみひも”の作品や道具、資料が展示されています。

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館内では、さまざまな組紐製品も販売。

 

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もちろん、伝統的な帯締めの展示・販売(1,000円~)もあります。ネクタイやループタイといった洋装のアイテムも。

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組紐で作られた、がま口を発見(2,590円~)。組紐で布地というのがユニークです。

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伊賀らしく、忍者のストラップも! こちらは1個760円。

 

くみひも体験!

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館内の用意された和室では、くみひも体験ができます。体験は1人1,100円。

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使用するのは伝統的な「丸台」。絹100%の糸と金糸を使って、組紐を作ります。

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インストラクターに教えてもらいながら、個人差はありますが30分ほどでストラップやブレスレットが完成。

 

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三重県組紐協同組合の平岡正博さんに「組匠の里」についてうかがいました。

 

—————今年、移転されたそうですね。

平岡さん「1978年の開館から伊賀市四十九町(しじゅくちょう)で、くみひもセンターとして運営していたのですが、今年4月から上野民俗資料館跡へ移転してきました」

 

—————お客さまも増えているとか。

平岡さん「観光の中心である伊賀上野城の近くになり、たくさん来場いただくようになりました」

 

—————“くみひも体験”も人気のようですね。

平岡さん「映画『君の名は。』に登場した丸台を使って組紐を組むことができることから、クチコミなどで広がってたくさんの方に体験をしていただいています。これまではカップルや女性グループが多かったのですが、映画ファンの男性もお見えになります。組み終わった組紐は、世界に一つですから、みなさんよろこんでくださいます」

 

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フロアは変わりますが、50人までの団体でのくみひも体験もできるそうです。伊賀鉄道上野市駅から徒歩約4分というアクセスの良さや、伊賀流忍者博物館にも近いので、観光ルートに組み入れるのにおすすめです。

 

 

◆伊勢木綿をオシャレな小物で楽しむ!
ポップなチェック柄は日常遣いにぴったり

最後は「伊勢木綿」。現在唯一、伊勢木綿を生産されている臼井織布(うすいしょくふ)株式会社の社長・臼井成生さんに、伊勢木綿についてうかがいました。

 

—————伊勢木綿の歴史はどのくらいあるのでしょうか。
臼井さん「約400年前に、日本各地で綿の栽培法が確立。織物の技術自体はそれ以前にあったことから、伊勢でも始まったようです」

 

—————伊勢木綿を生産されているのは現在、臼井織布株式会社だけなんですよね。

臼井さん「明治期には100軒以上ありましたが、化学繊維や時代の流れで生産は縮小、1980年頃には伊勢織物業組合も解散し、ウチ1軒だけになってしまいました」

 

この建物の奥に工場があります。ちなみにこちらは、夏と冬に行う大掃除ですす払いをしている様子。
この建物の奥に工場があります。ちなみに写真は、大掃除ですす払いをしている様子。

 

—————それを工芸品として残してきたんですね。
臼井さん「それは違います。ウチの伊勢木綿は、工芸品ではなく産業品。いろんな方に使っていただくものです。なのでウチの商品は、京都や東京での販売が主。ガラスケースに入って置かれるようなもんじゃないんです(笑)」

 

—————でも、作るのは大変と聞いています。
臼井さん「糸メーカーに、単糸(たんし)という糸をオーダーしています。これは江戸時代から変わらないのですが、非常に柔らかく、最新の織機では切れてしまう。なので、明治時代の織機40台を使って今でも織っています。明治時代のものだから、スピードも遅く、1台で1日に1反(約13m)しか織れない。こんな面倒なこと、みんなしたがりませんよね(笑)」

 

—————ズバリ伊勢木綿の魅力は?
臼井さん「歴史ある織機が単糸から生み出す、独特の柔らかい素材感と色合い、デザインですね」

 

—————それは、江戸時代から変わらないんですね。
臼井さん「それがずっと受け入れられているということがうれしいですね。今も、海外の超有名ブランドや国内の大手セレクトショップからオファーをいただいていますし、これからも続けていきたいですね」

 

そんな伊勢木綿を使った、おしゃれな小物を三重土産に。伊勢市で商品を扱うショップを見つけました。

■ichishina(イチシナ)
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「一生一品」をコンセプトに、いつの時代でも変わらず、大切に使えるものを扱うセレクトショップ「ichishina(イチシナ)」。

伊勢神宮(内宮)のそばにあるこちらでは、オリジナル商品として伊勢木綿を使った小物を販売しています。

どんな商品があるかを見てみると…。

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色鮮やかな柄は伊勢木綿の特徴のひとつ。「ichiガマ 福」各4,200円。

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こちらは、がま口のバッグ。しなやかで柔らかく織られた伊勢木綿は、使っているうちになじんでくるとか。「ichi ガマ鞄」各6,200円。
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生地の風合いも魅力のひとつ。スマホケース(iPhone7)4,860円

 

 

■衣(ころも) 伊勢木綿
衣店内
伊勢神宮外宮参道で雑貨を販売するショップ「衣 伊勢木綿」。店内には伊勢木綿を使ったトートバッグやポーチなど、ナチュラルな風合いの小物がそろいます。

 

こちらの人気商品は伊勢木綿を使ったバッグです。
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着物生地とは思えない、現代的なカラーリングのこちらも伝統柄。トートバッグ(S)8,424円。

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明治時代の機械で織られた生地でバッグだなんて、物語があります。バルーン トートバッグ10,260円。
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織機1台から1日に1反(13m)しか織ることができない伊勢木綿。13mはこのバッグ13個分なのだそう。ドラムトートバッグ11,880円。

 

今回、取材させていただいたどれにも、素材や作品としての魅力をビンビン感じました。しかも、それぞれ違ったアプローチで、ファッションに敏感な人たちのハートをつかんでいる。
時代によっては、不遇な時期があったと聞きましたが、“本物”の力強さを、ぜひみなさんも現地で手にとって体感してください。

 

今回紹介したイベント、施設・店舗はコチラ。
★松阪もめん手織りセンター
住所:松阪市本町2176、松阪市産業振興センター1階
電話:0598-26-6355
営業時間:9:00~17:00。※体験コースは9:00~15:00
休日:火曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
駐車場:約20台(無料)
http://matsusakamomen.com/
★松阪もめんフェスティバル2017
日時:2017年11月12日(日)10:00~16:00。※毎年10月下旬~11月中旬に開催
会場:カリヨンビル(三重県松阪市日野町788)、および松阪市中心市街地一帯
問い合わせ:0598-51-7811(松阪もめんフェスティバル実行委員会 平日8:30~17:15)
料金:無料(一部イベントは有料)
https://www.kankomie.or.jp/event/detail_37431.html
★伊賀伝統伝承館 伊賀くみひも 組匠の里
住所:伊賀市上野丸之内116-2
電話:0595-23-8038
営業時間:9:00~17:00
休日:月曜(祝日の場合は開館)
駐車場:約10台(無料)
http://www.kumihimo.or.jp/
★臼井織布株式会社
住所:津市一身田大古曽67
電話:059-232-2022
http://isemomen.com/
★ichishina内宮前店
住所:伊勢市宇治今在家町18
電話:0596-27-1447
営業時間:11:00~15:30。※日によって前後する場合あり
休日:なし(臨時休業あり)
駐車場:なし
http://ichishina.com/naiku/
★衣 伊勢木綿
住所:伊勢市本町6-4、シャレオサエキ1階
電話:0596-22-1128
営業時間:10:00〜17:00
休日:なし(臨時休業あり)
駐車場:なし
http://www.kholomo.com/
※掲載の情報は2017年10月13日現在。

関連情報

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