1日1組限定!古民家の宿で三重県の魅力に触れるスロー旅

2019.6.7

グルメからエンタメまで 佐野 興平

さまざまな宿泊施設がある三重県。今回はそのなかでも、のんびりと宿泊できる上に、多彩な体験ができる「1日1組限定」の宿に注目しました。三重県の豊かな自然に囲まれた施設を“ひとり占め”しての宿泊は、自分たちのペースでゆったりと過ごすことができます。さらに、自然と触れ合える体験メニューに挑戦すれば、より特別な時間を手に入れられますよ。三重の暮らしの魅力を体感できるスローな旅を紹介します。

 

築200年を超える古民家宿、大紀町「伊勢路 むかしのくらし体験の宿」

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度会郡大紀町にある「伊勢路 むかしのくらし体験の宿」。築200年を超える古民家を生かした宿です。車では紀勢自動車道勢和多気インターを降りて約20分。聞こえるのは鳥のさえずりくらいという、本当に静かなところです。

 

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この宿の管理をされている市場和典(いちば かずのり)さん、史路(ふみじ)さんご夫妻に、お話を聞きました。

◇こちらの施設はいつごろオープンしたのでしょうか?
和典さん「2017年の春にオープンし、私たちは、2018年5月から管理をしています」

◇何がきっかけで、宿の管理を始められたのですか?
史路さん「2018年2月、ここから歩いて10分ほどのところにある古民家を改築した農家民宿『大紀町日本一のふるさと村』(※)に宿泊したんです。そのとき、こちらに移住された方からお話を聞いて、このエリアの暮らしに興味を持ったのが始まりです。その約2カ月後、シンガポールからお客さまがいらっしゃるというとき、『見に来ないか』とお声掛けいただいて。そのときの交流がとても楽しかったんですよね」

※「大紀町日本一のふるさと村」についてはコチラから
https://www.mie30.pref.mie.lg.jp/feature/6831

◇外国の方との触れ合いが、宿をやる気持ちにさせたんですね
史路さん「心が通じ合うのを感じたんです。日本語はほとんど話せないのに、コミュニケーションをとろうと一生懸命にがんばってくれる。本当に楽しかった。この建物の管理をしておられた「NPO法人日本一のふるさと村」さんから、宿の管理をやってみないかとお声掛けいただいたとき、笑顔で帰っていく人たちを少しでも増やしたいなと思い、お引き受けしました」

◇宿泊のシステムについて教えてください
和典さん「1日1組限定の宿として、2名様以上のご宿泊で6名様までお受けしております。B&B朝食(おむすび又は一汁一菜)付きプラン、二食付きプランのほか、バーベキューや松阪牛の焼肉等もご相談承ります」

◇チェックイン、チェックアウトの時間は?
和典さん「基本はチェックイン17時、チェックアウト10時ですが、体験などを行う場合には、ご相談いただければ対応させていただきます」

◇宿泊する場合、どんな部屋になりますか?
史路さん「母屋の4部屋を使っていただきます。8畳と、6畳が2つの3部屋が畳敷き。残り1つは板の間です」
phot▲テーブルとソファが置かれた8畳のリビングは、冬にはこたつに変更

◇ほかにはどんな設備がありますか?
史路さん「母屋には、かまどでご飯を炊く体験ができる台所や、きなこ作りの体験ができる石臼を置いた部屋、薪でたく五右衛門風呂などがあります。皆さんで食事してもらう『本膳 金輪』という建物でも、煎り玄米や煎り大豆などの体験を行っていますよ。地元で昔に使われていた農機具などを置いている『むかしのくらし博物館』も見てほしいですね」

phot▲別棟になる食事スペース「本膳 金輪」。台所が併設されていて、こちらで行う体験もあり

たくさんの体験、楽しみ方ができる「伊勢路 むかしのくらし体験の宿」。早速、中を見せていただきましょう。

 

昔の生活を知ることのできる貴重品がズラリ「むかしのくらし博物館」

まずは史路さんが「見てほしい」といっていた「むかしのくらし博物館」へ。

母屋とは別棟の2階にあります。見たことのあるものから、初めて見るものまでさまざまな器具がズラリ。川での漁に使っていた魚籠や仕掛け、畑仕事に欠かせない農機具など、実際に使われていた器具を間近に見ることができます。

phot▲「茶」「養蚕」など、何に使われていたのか表示されています

母屋の2階にも、昭和2年に、この土地にやってきた地芝居の貴重な写真が展示されているほか、古い蓄音機なども置かれていて、昔の暮らしを垣間見ることができるようになっています。

phot▲写真の芝居が行われていたのが、地元にある旧七保第一小学校であることなどの解説も展示されています

 

 

「煎り玄米作り」や「きなこ作り」、「ごはん炊き」などさまざまな体験から昔ながらの暮らしに思いをはせる

 

■煎り玄米作り
この宿の大きな魅力の一つ、体験メニューにも挑戦しました。まずは煎り玄米作りから。「栄養満点の玄米は煎ることで保存食にもなるんです」と史路さん。フライパンにさっと水で洗った玄米と、自然塩をひとつまみ入れ、弱めの中火にかけます。15分ほどすると、パチパチという音がし、香ばしい香りが漂ってきます。

photこうなれば完成。「透明のお米はまだ煎り足りません。音と香りに五感を研ぎ澄ませてくださいね」と史路さん。このまま食べてもポリポリとした食感でおいしいのですが、もうひとつの楽しみ方があるんです。

phot煎り玄米に水を加えてひと煮立ちさせて、火を止め、蓋をして3時間ほど放置すると…。

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煎った玄米が水を吸って、おかゆになりました。香ばしさを残しつつ、やわらかな食感で食べやすい栄養満点のおかゆ。「朝に食べたいなら夜に、夜に食べたいなら昼間にやっておくんです。火を使うのは最初だけなので省エネ料理ですよ」と史路さん。
■きなこ作り
phot続いては石臼をひいてのきなこ作り体験。大豆を煎るところからスタートです。玄米より少し長めの25分くらい煎ると出来上がり。史路さんは「電子レンジでもできるんですが、お話をしながらゆっくりやるのがいいんですよ」とニッコリ。アミノ酸がたっぷりで、このままでも行動食(携帯食)におすすめとのこと。

phot煎り大豆ができたら、昔から使われている石臼にパラパラと入れ、木の持ち手を握って石臼を回します。これがかなり力のいる仕事。全身を使って回しても最初は何も出てきません。時々、煎り大豆を追加しつつ、しばらくぐるぐると回し続けていると…。

phot少しずつきなこが出てきました。大豆のいい香りも漂ってきます。
石臼の周りに出てきたきなこを集めて、ふるいにかけると、きめ細かなきなこの出来上がり。
このまま食べても、お餅などにつけてもおいしくいただけますよ。
■ごはん炊き
photごはん炊き体験は、台所に設置されたかまどで行います。
最初は細かな薪を入れて点火。でもこのまま放っておいては、火の勢いは強まりません。竹筒で息を吹き込んだり、うちわであおいだりして、強火にして20分。そのあと、20分蒸らすとおいしいごはんが炊き上がります。

photこちらはB&Bプランの一例。炊きたてのごはんはおいしいのひと言! 卵は地元の平飼有精卵、おみそ汁は地元の干し椎茸と昆布で出汁をとるなど、シンプルながらもぜいたくな内容です。
■綿繰り
photそして、次は綿繰り体験です。この写真は綿の実。綿は春に種をまくと、秋にはこんな姿に! まずは枝から取り外して、ガクも取って、綿の部分だけにするところから始めます。

photもうこれで、きれいな綿のように見えますが、実はそうではありません。この中に種が入っているんです。それを取り除くのが綿繰りの作業。

phot綿繰りは、綿繰り機を使用します。手前から綿を入れ、右側についたハンドルを回すと、棒の隙間を通って綿が反対側に出てきます。綿を入れた手前側を見ると…。

photこういう感じで種が残るんです。この綿繰り機を使わずに種をとるのは本当に大変なのだとか。綿が繰られ、種だけが残る様子は見ていておもしろかったです。

photほかにも五右衛門風呂に使う薪割り体験、里山ウオーキング、時期によっては梅の実の収穫体験なども行われています。

ゆっくりとした時間が流れる土地で、昔の暮らしを身近に感じられるさまざまな体験を行っていると、心から、のんびりと癒やされた気持ちになれるはず。観光だけではわからない三重県の魅力がきっと見えてくるはずです!

 

 

アウトドアや魚捌(さば)き体験も可能!そのほか注目の1日1組限定の民家宿

三重県内には、ほかにも多彩な1日1組限定の宿がオープンしています。今回はそのなかから2つをご紹介。どちらもぜいたくな時間が過ごせること間違いなしです。
■宿屋まてまて(多気郡大台町)
ユネスコエコパークの認定地域である大台町にあるゲストハウス。こちらでは、美しい川で楽しむSUP(スタンドアップパドルボード)のほか、サイクリングやトレイルランニング、登山など、さまざまなアウトドア体験が用意されています。宿では食材を持ち込んでの自炊はもちろん、ケータリングやバーベキューを楽しむことも可能です。

phot ▲SUP(スタンドアップパドルボード)など、アウトドア体験が豊富にそろう

phot▲ウッドデッキでのんびりと昼寝するのもおすすめ
■三木浦ゲストハウス(尾鷲市三木浦町)
漁村として栄えた三木浦町の古民家宿。美しい海が目の前という最高のロケーションで、のんびりと宿泊できます。薪割りやかまどを使ってごはんを炊く体験のほか、魚の三枚おろしにもチャレンジ可能。吉野熊野国立公園の特別地域に指定された三木崎のトレッキングや、椿の実の取れる時季には椿油の採取体験もできるなど、バラエティー豊かな体験メニューが用意されていて、楽しみ方はいろいろです。※体験については事前に要確認

phot▲山と海に囲まれた自然豊かな土地で、ゆったりとした時間が過ごせる

phot▲薪とかまどを使って、ごはんを炊く体験も実施

(掲載情報は、すべて平成31年3月時点のものです)

今回取材した施設はこちら
★伊勢路 むかしのくらし体験の宿
住所:三重県度会郡大紀町金輪404
電話:070-5333-8783
https://taiki-bm.wixsite.com/mukasinokurasi
★宿屋まてまて
住所:三重県多気郡大台町下真手1198-2
電話:080-4840-7315(Verde大台ツーリズム)
https://www.matemate.net/
★三木浦ゲストハウス
住所:三重県尾鷲市三木浦町509-44
電話:080-9119-3765
https://www.mikiura.com/
※体験については事前に要確認

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