海女さんとおしゃべりしながら食事ができる、志摩の海女小屋を体験しよう!

2019.11.29

旅人ライター 南谷有美

みなさんは、“海女さん”をご存じですか? 海に潜って魚や貝を獲る、伝統的な仕事です。大海原に何分も潜ってウニやアワビを獲る。かっこいいですよね!
そんな海女さんですが、実際にお話ししたり、獲れたものを味わったりする機会はなかなかないもの……しかし、志摩市で「海女小屋」体験ができる施設があるとのこと。わたしも早速行ってみました!

 

■海女さんとおしゃべりしながら食事ができる!人気の施設「海女小屋体験施設 さとうみ庵」

海女で有名な三重県志摩市。そんな志摩市にある「海女小屋体験施設 さとうみ庵」は、海女小屋を模した小屋が連なる施設です。

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そもそも海女小屋とは、海女さんが漁で疲れた体を休めたり、小屋の中央にある囲炉裏 で火を焚いて体を温めたりする小屋です。また、漁へ行くための準備や着替えをしたり、 漁の合間に食事や雑談をして楽しく過ごしたりします。

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写真提供:さとうみ庵

さとうみ庵では、現役や現役を退いた海女さんから海女漁や海の話を聞きながら食事をすることができます!
写真のように、日本人だけでなく、外国人の方にも大好評だそう。今から体験が楽しみです!

 

■いよいよ海女さんが登場!

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さあいよいよ海女さんの登場です。今回担当してくださったのは、林喜美代(はやし きみよ)さん。海女歴50年の大ベテランです。
先祖代々海女をしていたということもあり、中学卒業と同時に海女の世界に入った林さん。最初の2年間は観光海女としていきなりアメリカへ。帰国すると今度は和歌山県南紀白浜へ行き、それから12年間観光海女として活躍、という珍しい経歴をお持ちです。
その後は地元の志摩に戻り、今度はプロの海女として生きるということを決意。今も現役で活躍されている、笑顔が素敵な海女さんです。

海女さんが作ってくれる料理、どんなものが登場するのかわくわくします!

 

海女さんが目の前で作ってくれる新鮮な海鮮料理が最高!

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海女さんとの会話を楽しみながらいただくことができるお食事。私も早速いただきます!
お食事は基本予約制なので、さとうみ庵のホームページもしくはお電話で予約をしましょう。今回は、基本コースを注文しました。3名以上の予約だとお一人様3,850円(税込)。
内容は、桧扇貝(ヒオウギガイ・2個)、サザエ(2個)、スルメイカ(1杯)、漁師町の干物(2種類)、あおさの味噌汁、ひじきの釜飯……と、お腹も大満足のコースです。
時期によっては、アワビ(3月〜9月)伊勢エビ(10月〜4月)をオプションでつけることもできます。その季節に応じた新鮮な海鮮を楽しめることも魅力的ですね。

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伊勢志摩の海で獲れた新鮮な魚介類を、海女さんが目の前で焼いてくれます。炭火で焼くと、香ばしい良い香りが漂ってきました。

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「やっぱりそのまま食べるのが一番!」という林さんのアドバイス通り、味付けは特にせず、素材そのものの味を楽しみます。
ぷりぷりの桧扇貝に、こりこりした食感のサザエを噛むたびに、旨味が口の中いっぱいに広がります。

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次に出てきたのは、スルメイカです。イカというと固いイメージですが、このスルメイカは身がふわふわ! いくらでも食べられそうです。
お好みで、醤油やマヨネーズなどをつけて食べることもできます。このスルメイカを片手に日本酒をクイッと傾けたくなりますね。

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ご飯は、ひじきの釜飯。蓋を開けると、ふんわりと良い香りが漂います。優しい風味が印象的なご飯でした。

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ご飯は、あおさの味噌汁と一緒にいただきます。あおさってこんなに美味しいんだ!と感動するほど深い味わいでした。

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最後に登場したのは、干物。今回は、カマス(右)とマナジ(左)でした。

林さん「マナジはね、タイの一種なんですよ。味が付いているからそのままどうぞ」
海女さんは魚介類のプロですから、やはり魚の知識も豊富。豆知識やおいしい食べ方などをたくさん教えてくださいました。
干物は、染みこんだ味付けが、焼くことによって 一層引き立ち、ご飯が進む美味しさでした。

 

■あなたはどの小屋にする?タイプの違う海女小屋3棟

敷地内には、現在3棟の海女小屋があります。それぞれご紹介しましょう。

(1)本物の海女小屋に最も近い!リアルな雰囲気を楽しむなら「畳タイプ」

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こちらは、全面畳で、本来の海女小屋の雰囲気に最も近いといわれている小屋。
より本格的な海女小屋体験を楽しみたい方におすすめです。

(2)足を降ろしてのんびりくつろげる「掘りごたつタイプ」

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海女小屋の雰囲気は残しつつ、足を降ろして食事ができるのが、掘りごたつの小屋。
中央の囲炉裏を囲んで、ゆったりとしたひとときを過ごせますよ。

(3)椅子テーブルタイプ

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車いすの方や高齢の方も安心して楽しめる、バリアフリーに対応した椅子テーブルタイプの小屋。
幅広い年代の方が楽しめるよう工夫されています。

 

■林さんがこっそり教えてくれた!海女さんの「4つの秘密」とは

さとうみ庵では、おいしい食事はもちろんですが、なんといっても“海女さんとの会話”を楽しめるのが魅力。私も、食事をしながら、林さんとさまざまなお話ができました。
林さんのお話の中で、私が特に驚いたエピソードを4つご紹介します。

(1)「あまさん」には、男性もいる!?

「あまさん」には、なんと男性もいるそうです。近年男性の「あまさん」が増 えており、林さんの地区での男女比はちょうど同じくらいなのだそう。男性の場合も 「あまさん」と呼ばれていますが、漢字では海に武士の士で「海士」と書くそうです。

(2)82歳の海女さんも!? 超ベテランの海女さんが多数活躍

林さんの地区の平均年齢は66歳なのだそう。ベテランの海女さんがたくさんいらっしゃるんですね。現在現役で活躍している方の最高年齢は、何と82歳!

(3)海女さんは独学

海女さんの技術は、学校や研修があって学ぶものではないのだとか。先輩海女さんの背中を見て学ぶという、 古来の教育法がそこにはありました。自分自身で学び得たものは、何にも変えられない自分だけの財産になりますね。

(4)工夫が凝らされた仕事道具の数々

海女さんの仕事道具には、使いやすいよう数々の工夫が凝らされています。その一部をご紹介しましょう。

・おもり

 

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海に入る際に腰に巻くものです。海女さんは1分の間に10mほど潜る必要があります。それを手助けしているのがこちらのおもり。
人によって異なりますが林さんは約4kgの重さのものを使っているそう!

・メガネ

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海女さんは、水中に潜って獲物を探します。水の中でもよく見えるように、このようなメガネをしています。

・ノミ

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先の尖った方はウニやサザエに、先の丸い方はアワビに使われるそうです。せっかくなので、林さんに実践していただきました。

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アワビを発見したら、底にノミを潜ませます。

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そのままノミを持ち上げるとひっくり返り、アワビをスムーズに取ることができます。
林さん「ノミの長さは海女によって異なるんです。他の人の道具を持って海に行くと違和感を感じるんですよ」
道具一つ一つにもこだわりと愛着を持って仕事をしているのが伝わってきますね! 皆さんは、“海女さんの秘密”、知っていましたか?

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小屋から見える、目の前に広がる海を眺めながら、海女さんのお話を聞き、伊勢志摩の海で獲れた新鮮な魚介をいただけるという、何とも贅沢なひとときでした。海に入らずとも海女さん気分を味わうことができる、海女小屋だからこその体験ですね。

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写真提供:志摩オートキャンプ場

今回はお昼に利用しましたが、夕食プランもあり、昼間とはまた違った雰囲気の時間で、天気のよい日は満点の星空も楽しむことができるそうですよ。

 

■併設している「海女資料館」もおすすめ!

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さとうみ庵には「海女資料館」が併設されており、海女にまつわる情報についての展示がされています。

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海女さんが実際の漁で着ていたとされる伝統的な“海女着”の試着体験もできますよ! 服の上からでも簡単に着用できます。旅の思い出として着用し、海女さんと一緒に記念撮影していかれる方も多いそうです。皆さんもぜひ試してみてくださいね。

 

普段なかなかお会いすることがない海女さんとの貴重な時間を過ごすことができる「さとうみ庵」。
海女さんの生活の一部を体験する中で、新たな発見がたくさんあり、楽しいひとときを過ごすことができました。
皆さんも是非体験してみてください。

 

(掲載情報は、すべて令和元年9月時点のものです)

<今回の取材先はこちら>

★海女小屋体験施設 さとうみ庵

住所:志摩市志摩町越賀2279

電話:0599-85-1212

営業時間:11:00~20:00(最終19:00スタート)

※基本予約制。2日前までにご予約ください。

※電話のお問い合わせ時間は、9:00~17:00です。

定休日:1月1日~3日

※臨時休業はHPでお知らせします。

HP: https://satoumian.com/

 

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